1091.アイラブユーの、女神……?
クエストとして倒した以外の魔物についても、査定してもらった。
鶏魔物、カエル魔物、イモリ魔物、メダカ魔物、ドジョウ魔物、タニシ魔物を、適当に混ぜて三十体だけ取り出した。
昨日迷宮から戻った時に、受付でナナヨさんに報告した数はもっと多いのだが、一気に持ち込まれては大変だろうと思い、少なめにしたのだ。
三十体でも、だいぶ気を使ったつもりだったのだが……
ドンベンさんは、またもあんぐり開口した。
よだれが垂れている……残念。
周りにいるギャラリーからは、大歓声が上がった。
買取センターの職員総出で、査定に取り掛かっている。
ドンベンさんの子分みたいな感じの冒険者たち……皆ニアさんの『残念親衛隊』のメンバーだが、彼らも一時的に手伝ってくれている。
少しして、三十体の買取金額が出た。
三百万ゴルとのことだ。
もちろん『魔芯核』も含めての金額だ。
平均十万ゴルになるから、結構いい査定ではないだろうか。
魔物の大きさに、ばらつきがあるからね。
サイズは小さいが、綺麗なパステルカラーのタニシ魔物を多めに入れたのも、良かったかもしれない。
ドンベンさんの話では……タニシ魔物の貝殻は、綺麗でかつ加工がしやすいので、人気があるそうなのだ。
お手頃価格の装飾品を作る材料として使われることが多く、需要があるとのことだ。
だが、狩れるのが水辺のエリアに限られるので、冒険者に人気のないエリアで、持ち込まれる数は多くないのだそうだ。
ただ、水辺のエリアが多い迷宮の『南エリア』の序盤でも狩ることができるので、駆け出しの冒険者にはお勧めの魔物だとも教えてくれた。
クランの新人冒険者にも、お勧め魔物として紹介しよう。
改めて思うけど……情報って大事だよね。
クランの冒険者たちが、命の危険にさらされないように、せめて迷宮各エリアの序盤だけでも、詳細な情報の載った地図を作ろうかな。
というか……あの迷宮の『センターサークル』で地図売りをしていたチャラ男氏……彼の地図は結構使えた。
見かけによらず、ちゃんとした地図売りだったようだ。
今度会ったら、他のエリアの地図も買ってあげようかな。
今回の売却金額を全て足すと、四百三十六万ゴルとなった。
『迷宮人参』『貝殻提灯アンコウ』の宝石以外、魔物いろいろ三十体の合計だ。
半日の迷宮探索での成果としては、かなりいいんじゃないだろうか?
というか……多分すごいことなんだと思う。
そして、そもそも倒した魔物全部ではないしね。
もちろん『
昨日の『
数が多すぎて、『冒険者ギルド』が大変なので、すぐに売却することはできないけどね。
それでも……金額を想像すると気分がいい!
ドンベンさんに礼を言って、買取センターを出た。
その時になぜか、ギャラリーから『キング殺し』コールが巻き起こっていた。
正直……すごく微妙だ。
『キング殺し』が完全に定着している。
そして、すぐコールが起きるのは、本当にいたたまれない……トホホ。
もちろん、笑顔で手を振ったりして、リアクションはしてるけどさ。
ニアに対しては、『妖精女神様』とか『癒しの女神様』とか『愛と武勇の女神様』とが入り混じっていたが、最終的にはみんなが『愛と武勇』と連呼していた。
『アイラブユー』って聞こえてしまって……これも微妙だ。
買取センターを出た俺は、そのままギルド会館三階のギルド長室を訪ねた。
「ギルド長、昨日は大丈夫でしたか?」
かなり深酒して、べろんべろんになって寝ていたからね。
「うむ、なんともない。酔っ払ってなどおらぬぞ、全部覚えとるからの!」
ギルド長は、何事もなかったかのように宣言した。
確かに二日酔いになっている感じではないが……途中から寝てたでしょうよ!
覚えてるも何もないわ!
そんな俺の心の中のツッコミを察したのか、ギルド長は誤魔化すように大声で笑った。
「それと、ギルド長、リホリンちゃんとナナヨさんを手伝いに派遣していただいて、ありがとうございます。助かっています。お陰で、私がこうやって動けます」
ギルド長の気遣いに対して、礼を言った。
「いいのじゃ。ところでどうじゃ? 来とるじゃろ?」
「はい、おかげさまで。私が思ったよりも、はるかに集まっています」
「そうじゃろ、そうじゃろ。だから応援にやったのじゃ」
「本当にありがとうございます」
「うむ。ところでどうした? 何かあったか?」
「昨日迷宮で倒した魔物の買取を、お願いしてきたところです。それが終わって、寄らせてもらいました」
「そうか。そう言えば、昨日の『
すまんが今回も、その分の買取を遅らせてもらいたい。『魔芯核』だけ買わせて欲しいのじゃ」
「ええ、わかっています。ナナヨさんにも伝えましたが、大丈夫です。
それで実は……昨日の『
「なに!? なんじゃと! あの数の魔物の『魔芯核』を全て取った!?」
ギルド長が、俺の言葉に被せ気味に、声を張り上げた。
かなり驚いている。
「はい。仲間たちとほぼ徹夜で、何とか『魔芯核』だけ取り出しました」
俺は、そんな適当なことを言った。
本当は『波動収納』の新しい機能で、『魔芯核』だけ選別できるので、一瞬だったんだけどね。
当初の予定では、不自然じゃないように、もう少し時間を置いてから持ち込むつもりだった。
だが、面倒くさくなってしまったのだ。
また『
ギルド長には、「特別ですよ」と言って、俺が転移の魔法道具を持っていることを話し、それを使って『フェアリー商会』に一時的に戻ったと伝えたのだ。
そして、商会スタッフに手伝ってもらったと説明した。
転移の魔法道具を持っているという情報は、ある程度は公開してもいいと思っている。
ギルド長は、信用できるから尚更だ。
ギルド長も転移の魔法道具については、それほど驚かなかった。
少しは驚いていたが、稀にだが冒険者でも持っていると言って、納得していた。
もちろん、そのほとんどは、俺が持っているような高性能なものではないだろうけどね。
迷宮から脱出する為のものが、ほとんどだろう。
転移というよりは、特定の場所に戻る『
後天的覚醒転生者で、元怪盗イルジメのオカリナさんが持っている魔法道具と同じようなものだろう。
そういえば……その魔法道具は、十四年前『コウリュウド王国』の迷宮都市で攻略者パーティーを組んでいた時に、『コボルト』のブルールさんに貰ったと言っていた。
ブルールさんの里では、同じ魔法道具を作れるのだろうか?
『ドワーフ』のミネちゃんほどの物は作れないとしても、一定の場所に帰還する魔法道具は作れるのかもしれない。
もし作れるなら、売ってもらえないかなぁ。
ブルールさんに訊いてみよう。
クラン所属の冒険者パーティーが命を落とすことがないように、万が一お供え、迷宮から緊急離脱できる魔法道具は欲しいところだ。
まぁ……また過保護って言われちゃうけどね。
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