1073.夜なべ作品の、お披露目。

 『クラン本館』から外に出る。

 朝の清々しい空気が、気持ち良い。


 子供たちはみんな起きて、朝食の準備を手伝っている。


 子供たちやバーバラさん達大人のスタッフにも「おはよう」と声をかけ、俺も手伝いに参加する。


 朝食も……バーベキューだ。


 でも、今日は目先を変えることにした。


 パンに挟んで、サンドイッチにして食べてもらうつもりだ。


 そう……大量のパンがあるのである。


 昨日『アメイジングシルキー』のサーヤに頼んで、持ってきてもらったのだ。

 オカリナさんを転移で連れて来てくれた時に、『フェアリー商会』のパンを大量に持ってきてくれたのだ。


 美味しいパンを食べさせてあげたいと思って、事前に連絡して、大量に用意してもらっていたのだ。


 昨日好評だったマヨネーズも使えるし、きっと子供たちは喜んでくれるだろう。


 リリイとチャッピーも子供たちと準備を手伝っていたが、一段落して俺のところに来た。

 ちょうどニアも飛んできた。


 朝食の準備はほぼ終わったので、食べ始める前に、少しだけイベントをやろう。


 昨夜作った育成冒険者専用装備をお披露目しようと思う。


 俺は子供たちを集めて、『ツリーハウスクラン』の新人冒険者の専用装備を見せて、簡単に説明した。


 育成冒険者第一号パーティー『希望の枝ブランチオブホープ』のみんなは、すごい食いつきで、目を爛々と輝かせていた。


 そしてこれから冒険者になりたいと意気込んでいる他の子供たちも、憧れるような眼差しで装備を見ていた。


 せっかくだから、『希望の枝ブランチオブホープ』のみんなに、実際に装着してもらった。


 俺のイメージ通り、バッチリ決まってる!

 かっこよく、そして女性メンバーは可愛いさも出ている。


 ツリッシュちゃんは、今までずっと男装していて、スカートを履いていなかったので、何かすごく恥ずかしがっている感じだ。

 スースーするのか、しきりにスカートを手で押さえている。


 他のみんなも、照れくさそうではあるが、喜びが溢れ出している感じだ。


 狼亜人のエクセちゃん、セレンちゃん姉妹の父親であるベオさんは、なぜか泣いている。


 “娘の晴れ姿を見て感動した”的な感じの涙だろう。


 狸亜人のポルセちゃんや、ツリッシュちゃんの相棒のハウジーちゃんも、よく似合っている。

 とてもチャーミングだ。


 そして男子メンバー四人は、盾を持ってポーズを決めるとかなりかっこいい。

 だが、普段歩く時は盾を背負うので、やってみてもらったら、盾がデカくて、盾に着られている感が半端ない。

 特に大盾を持った二人は、デカい甲羅を持った小さな亀みたいで、ちょっとユーモラスですらある。


 まぁそのうち馴染んで、しっくりくるだろう。


 みんな嬉しそうに、子供たちの声に応えて、色んなポーズをとっていた。



 俺は少し言いづらかったが、ニャンムスンたち『美火美びびび』のメンバーに、意図せず、ほとんどの装備が『上級ハイ』になってしまったことを告げた。


 ニャンムスンさん達は、あからさまに呆れた顔はしなかったが、苦笑いして、しばし固まっていた。


 そして……「むしろ私たち中堅冒険者でも欲しい装備ですけど」と言われてしまった。


 多分……内心呆れられていると思うが。

 まぁしょうがないね。



 次に子供たちに披露したのは、人形だ。

 俺が作った『竹取じいさん一号』と『パンダさん一号』を見せた。


 普通に人形として紹介したのだが、みんな可愛いと言ってくれた。


 俺が魔法スキルでゴーレムとして動かすという話をしたら、わーっと歓声が湧いた。


 すごい期待に満ちた目をしている。


 なんとなく手品師の気分だ……。


植物由来の人形ボタニカルゴーレム起動!」


 俺は発動真言コマンドワードを唱え、それぞれの人形に触れ魔力を流した。


 すると、『竹取じいさん一号』も『パンダさん一号』も、一瞬光を発し、起動した。


 俺の指示を待っている状態だ。


 『竹取じいさん一号』に、この屋敷の塀の内側を巡回ように指示を出すと、すぐに動き始め、子供たちから歓声が上がった。


 何人かの子供たちは、後をついて行っている。


 『パンダさん一号』には、ゆっくり歩けという指示を出し、小さな子供を優先して背中に乗せてあげた。


 子供たちは、キャッキャ言いながら大喜びだ。


 このボタニカルゴーレムたちを街中で動かしたら、悪目立ちしてしまうが、この『ツリーハウス屋敷』の敷地内だったら、部外者の目に触れることはないから、稼働させ続けてもいいだろう。

 俺は、そのまま稼働状態にした。



「グリムさん、おはようございます!」

「おはようございます」


 そんなタイミングで、声がかかった。

 こんな朝からお客さんとは……。


 声の主は、『冒険者ギルド』の俺担当の受付嬢、狐亜人のリホリンちゃんと、昨日お世話になったナナヨだった。


「おはようございます。昨日はありがとうございました。どうかしましたか?」


 俺の言葉に、二人はニコッと微笑んで近づいて来た。


「こちらこそ、昨日はありがとうございました」

「帰っちゃうから、ちょっと寂しかったですけど!」


 リホリンちゃんが可愛く、そしてナナヨさんが色っぽく言った。

 そしてなぜか二人で、両脇から俺の腕をホールドした。


 そんなことをされたら……朝から『頭ポカポカ攻撃』が発動しちゃうじゃないか!


 俺が心で思ったのとほぼ同時に、発動していた……トホホ。


「……あ、あの……ギルド長は大丈夫でしたか?」


 酔いつぶれて寝ていたからね。


「ええ、大丈夫です。時々深酒して、ああなっちゃうんです」

「朝にはスッキリしてました。それでギルド長の指示で、私たちは来たんです」


「そうですか、よかったです。ギルド長の指示というと?」


「今日は、『ツリーハウスクラン』が大変だから、応援に行けって、送り出してくれたんです」

「ギルド長は、相当グリムさんが気に入っているみたいです」


「え、大変? 応援というと……?」


「それはもちろん、押し寄せる冒険者の対応ですよ」

「もう少ししたら、クランに入りたいっていう冒険者が押し寄せるでしょう」


「……ほんとに来ますかね?」


「なに言ってるんですか、いっぱい来ちゃいますよ!」

「だからその対応のお手伝いに来たんです」


 リホリンちゃんとナナヨさんはそう言って、指をポキポキ鳴らして準備体操のようなことを始めた。


 俺は、予想だにしない申し出に少し驚いた。


 一冒険者というか一クランのために、『冒険者ギルド』のスタッフが手伝いに来るなんて……そんなのありなの?


「あの……ギルドスタッフのお二人が、一クランの面接を手伝っても大丈夫なんですか?」


「大丈夫です! 担当冒険者のフォローは、大事なお仕事です!」

「それに、昨日の迷宮内での『連鎖暴走スタンピード』の件の聞き取り調査という建前もあります。ですから、全く問題ありません!」


 リホリンちゃんとナナヨさんはそう言って、親指を突き出した。

 なんか二人とも、めっちゃやる気なんですけど。

 そしてナナヨさんに至っては、建前とかはっきり言っちゃってるし。


 もうクランメンバーみたいな感じなんですけど。


 まぁありがたいことだね。

 ギルド長も、気にかけてくれているし。


「分りました。ご好意に甘えます。よろしくお願いします」


 二人にそう答えると、なぜか二人は再度俺の両腕に抱きついた。


「張り切っていきましょう!」

「面白いことになりそうです」


 二人の声が弾んでいる。


 そして俺の頭には……ポカポカ攻撃が……トホホ。



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