1055.魔術の詠唱も、やってみよう!

 今現在は、魔術は完全に廃れた状態なわけだが、それでも魔法の巻物や魔法道具を作る技術は、全くなくなっているわけではない。

 技術者、職人が少ないので高価な物にはなるが、ある程度は製造されていて、手に入れることも可能なのだ。


 今の時代では、『魔術師』と呼ばれるような詠唱を駆使した魔術を行う者はほとんどいないわけが、魔術の技術で作られている魔法道具を駆使して戦う者は、かなりいるわけだ。


 今ふと思ったが……冒険者を目指すクランの子供たちを指導するときに、魔術の訓練を取り入れてもいいかもしれない。

 詠唱するのは大変だが、そういう訓練をしていく中で、もしかしたら魔法スキルが発現するかもしれない。

 魔術の訓練をすることで、魔法スキルが発現する可能性が高まるということも、あると思うんだよね。

 なんとなくの勘だが……。


 魔術の詠唱に関しては、ニアが『麗しき魔術の世界』という古代の魔導書を持っている。

 ある程度の魔術が載っているので、それを教えることはできるだろう。


 ちなみに、この魔導書は、ただの本ではない。

 『マシマグナ第四帝国』のテスト用二号迷宮の『イビラー迷宮』の宝物庫で手に入れたもので、『魔法の道具マジックアイテム』にもなっているのだ。


 詠唱を短縮することができ、『魔術』の発動をサポートする魔法道具なのである。


 前に、『ミノタウロスの小迷宮』のミノショウさんが言っていたが、今ではかなり貴重な、大昔に作られた魔導書ということだった。


 『階級』は、『上級ハイ』だった。


 ここに載っている魔術のうち、前にニアが使っていた『 火球ファイアボール』だけでも、詠唱を子供たちに教えて、訓練してみたらいいかもしれない。


 将来的に……詠唱を使いこなす『魔術師』と呼べるような人材が育ったら、すごいことになりそうだ。

 なんかめっちゃワクワクしてきた!


 魔法スキルの場合は、スキルが発現するかしないか、運頼み的なところがあるが、魔術なら訓練すれば理論上はいくらでも習得可能だ。

 極めれば……あらゆる属性の魔法を魔術として使うことができるし、威力の高い上位の魔法も魔術として発動できるわけだ。


 そう考えると……偉大な『魔法使い』よりも、最高の『魔術師』の方が、すごいかもしれない。



 思考がだいぶ脱線してしまったが……元に戻そう。


 魔法の巻物は、多少使いづらい面もあるが、訓練次第で行けると思う。


 それに、魔法の巻物を使いこなせたら、意外に魔法の杖より戦闘で役立つかもしれない。


 リンちゃんやシチミが使っている魔法の杖は、一つの属性の魔法でしか攻撃できない。

 杖の頭頂部の魔法石を変えることによって、魔法の属性を変えることはできるが、戦闘中にやるのは、なかなか大変なのだ。

 だが巻物なら……いくつも持っていて、状況に合わせて火を出す巻物とか、水を出す巻物を使えば、かなり臨機応変な戦いができる。


 もっとも巻物の場合は、短いとは言え発動真言コマンドワードを唱えないといけない。

 一発出すだけならいいが、連射するときには早口言葉のように繰り返さないといけない。

 それが問題点とは言える。


 それでも、使いこなせたらやはり面白いと思う。

 努力して、早口に言えるようになればいいわけだしね。


 今思い出したが、俺の愛する魔力調整の天才児、リリイちゃんを先生にしたらいいかもしれない。

 リリイは、以前大森林で魔法の巻物のテストをしたときに、すごい使い方を見せてくれていたんだよね。

 発動真言コマンドワードを分けて唱えて、火の玉を出して停止させておいて、最高のタイミングで発射するという使い方をしたのだ。

 そして発射した火の玉の軌道を、念の力で曲げるという凄技も見せていたんだよね。


 誰でもできるとは思えないが、リリイが指導すれば、できるようになる人がかなりいるんじゃないだろうか!

 特に固定観念の少ない子供たちなら、なおさらだ。


 そして、何よりも期待するのは、魔術の詠唱の訓練と同じで、魔法の巻物の訓練を通じて、魔法スキルが発現することだ。

 魔法スキルが発現してしまえば、立派な『魔法使い』と言える。

 というか……本来の『魔法使い』ポジションとして、名実ともに機能するわけだ。

 同時に魔法の巻物も使いこなせていれば、取得した魔法スキルとは違う属性の攻撃も出せる。

 普通の『魔法使い』ポジションよりも、かなり強力だと思う。



 今後、希望する子供たちには、魔法系の訓練もしてあげよう!


 リリイが魔法の巻物の使い方を教え、ニアが魔術の詠唱を教えるというかたちにしよう。


 俺はそんな話を、ニアとリリイにした。

 二人とも、二つ返事で賛同してくれた。


 そしてニャンムスンさん達は、画期的だと言って何か感動している風だった。


 そしてパーティーのポジションの発表を聞いていた『希望の枝ブランチオブホープ』のメンバーたちも、魔法系の訓練もできると聞いて、さらに目を輝かせていた。


 そういえば、俺の思考がだいぶ脱線してしまい、それに伴ってみんなとの話も脱線してしまったが……まだパーティーのポジションの発表の途中だったのだ。


 まだポジションを発表されていない子が、待ちわびたような顔をしている。

 話を進めてあげないと……。


 ちなみに、『魔法使い』ポジションを担当する狸亜人の女の子ポルセちゃんは、俺が簡単に説明をした魔法の杖や魔法の巻物の話を聞いて、「私がんばります! 魔法の巻物を何種類も使いこなせるように……絶対にがんばります!」とハイテンションで、宣言してくれた。


 今後の彼女の成長に、大いに期待することにしよう。


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