1053.守り主体の、パーティー。

 育成冒険者第一号パーティーである『希望の枝ブランチオブホープ』のリーダーは、ツリッシュちゃんに決まった。


 これから、暫定的ではあるがポジションについても決めることにした。


 これについては、俺に案があるので、一旦はそれに沿ってやってもらおうと思っている。

 今後の訓練の中で、他に適性が見出された場合は、随時変更しようと思っているけどね。


 俺は、今後の新規に作る冒険者パーティーの人数を十人前後にしたいと考えている。

 これを標準仕様にしたいのだ。

 その最大の目的は、守りの要である『タンク』ポジションを増やすことにある。


 魔物の動きを一時的に止める『タンク』がうまく機能しないと、浮き足立ってしまって、安定した戦いができないと思うんだよね。


 通常、パーティーには、『タンク』は一人というのが一般的だ。

 だが、大きな魔物は一人では抑えにくいし、複数の魔物が現れる可能性もある。


 生存率を考えると、やはり守りを厚くするのが一番だと思う。


 そんな案を話してみたら、ニャンムスンさんたちも賛同してくれた。


 そこで俺は、男子メンバーの中で、比較的体ががっちりしているアマダくんとウラキくんの二人を、『タンク』ポジションに指名した。


 タンクは、魔物に立ちふさがる壁として、恐れずに立ち向かわなければならない。

 非常に勇気が必要なポジションである。

 二人は、力強く「がんばります」と言ってくれた。

 律儀で、真面目な感じの二人だ。

 冒険者でなくても、衛兵とかが似合いそうな雰囲気の子たちだ。


 それから俺は『サブタンク』と言えるポジションを考えた。


 壁役が多くいた方が守りが硬くなり、戦いの安定度も増すと思うからだ。


 それ故に、メインの『タンク』二人を補佐する『サブタンク』を布陣することにしたのだ。

 なぜ『タンク』ではなく『サブタンク』かと言うと、このポジションは、状況によっては攻撃を行うアタッカーとしての役割も担うのだ。

 そういう意味では、『サブタンク』と言うよりは『アタックタンク』という名前がいいだろう。

 攻撃の際は、剣を使って攻撃するかたちになるので、イメージ的には大きな盾を構えている騎士といった感じなのだ。


 このポジションには、レイくんとビダンくんを指名した。


 二人は、俺の説明をしっかり理解してくれて、納得してくれたようだ。

 非常に勘のいい二人である。

 俺が作り出した新しいポジションだけに……何か新感覚で戦ってくれそうな予感もある。

 新しいタイプの冒険者になってくれるのではないだろうか。



 この四人が鉄壁の守備で、守りを固める。

 それによって他のメンバーが機能して、パーティーが安定した実力を出せるという状態を作り出すのだ。


 生存率を高めるためのメンバー構成は、守りに重点をおくべきだと思う。

 それが俺の狙いなのである。



 次に『斥候』ポジションだが、これは最年少八歳の狼亜人の少女セレンちゃんに担当してもらうことにした。


 『斥候』は、魔物の気配を察知したり、罠を察知したり、魔物を釣り出してきたりするポジションだ。


 セレンちゃんは最年少だが、レベルが一番高い。

 『コウリュウド王国』のコバルト直轄領でのレベル上げを兼ねた魔物の討伐に参加し、レベル20になっているのだ。


 しかも狼亜人だけに、身体能力も高く、気配を察知する能力も高いので、『斥候』にはうってつけなのだ。


 彼女が持っている『通常スキル』は、『聴覚強化』『格闘』『剣術』となっていて、スキル的にも向いている。


 『斥候』の役割が終わった後は、直接攻撃に参加する、アタッカー的な役割も担ってもらう。

 また全体の状況を把握したり、戦闘しながら他の魔物が来ないか周囲の索敵も行う役割も担ってもらう。

 臨機応変に活動してもらう予定だ。

 おそらく最年少ながら、彼女がこのパーティーの肝になると思う。


 『斥候』ポジションは、かなり重要だと思っている。

 迷宮探索の中で、一番怖いのは不意打ちを食うことだし、魔物と戦闘中に、他の魔物に襲われて挟撃されたら命取りだ。


 これを防ぐのが『斥候』だから、守りの要である『タンク』ポジション同様、生存率を高めるために非常に重要なのだ。


 セレンちゃんは、まだ八歳ながらも俺の意図をしっかり理解し、「一生懸命がんばります」と返事をしてくれた。

 普通に考えるとかなりの重責なんだけど……。

 前にサーヤも言っていたけど、この子は将来大物になりそうだ。

 化けるかもしれない。



 次に『アタッカー』は、ツリッシュちゃんに担当してもらうことにした。


 彼女はレベル14だが、『剣術』スキルを持っているのだ。

 剣術を習った事は無いが、我流で棒を振っていたらスキルが発現したとのことだ。

 なんか……滅茶苦茶だが。

 家系的なものというか……遺伝的なものもあるのだろうか?

 代々将軍を排出する家系だったようだし、おそらくセンスもあるだろう。


 ツリッシュちゃん自身も、剣術を磨いていきたいと思っていたようで、『アタッカー』ポジションを大喜びしていた。


 早くも笑顔が見れてしまったのだ。



 『ロングアタッカー』ポジションは、狼亜人のエクセちゃんにした。

 彼女は、『弓術』スキルを持っているわけではないが、父親のベオさんに習って弓が使えるということだったので、弓での攻撃を担当してもらうことにしたのだ。


 狼亜人特有の身体能力の高さを考えたら、アタッカーが向いているかもしれないが、一旦は弓でがんばってもらうことにした。

 場合によっては、後でポジションを変えてもいいわけだからね。


 今回ポジションを決めたからといって、その武器しか使わないということではない。

 訓練では、一通りの武器が使えるように教えてあげようと思っている。

 まぁ実際に教えるのは、俺ではないけどね。

 でもたまには教えてあげようと思っている。


 一通りの武器で訓練することによって、隠れた適性を見いだせる可能性もある。

 それにいくつかの武器が使えた方が、戦いの幅が広がるからね。

 それすなわち、生存率も高まるというわけなのである。



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