1052.新人パーティーの、リーダー。
クランの新しい役割分担ができ、バーバラさん達も喜んでくれていた。
そしてバーバラさんは、やはり『アメイジングシルキー』のサーヤを気に入っているようで、二人で話し込んでいる。
バーバラさんが、すごく楽しそうだ。
クランの今後の運営について、話し合ってくれているようだ。
バーバラさんは、密かにやる気全開らしい。
いつも俺に対しては、そっけない感じなんだけど、俺の頼みを意気に感じて、密かに頑張ってくれるんだよね。
まだまだ大人の人手が足りなくて、苦労かけているが、何とかやってくれるだろう。
当面の課題は……やっぱり毎日の食事なんだよね。
子供の数が多いから、給食を作るみたいな感じなのだ。
今のところ、手の込んだ料理を作ってあげられていない。
毎回バーベキューだ。
ただ慣れてくれば、十歳以上の子が結構いるから、料理の手伝いもできるだろう。
そうすれば、少しずつ手の込んだメニューも増やしていけるはずだ。
子供が多いとはいえ、朝昼晩と百食以上作らないといけないから、飲食店をやったつもりで、調理人のスタッフを何人か雇用してもいいんだけどね。
これから駆け出し冒険者などをクランメンバーとして受け入れたら、なおさら人数も増えるし、いっぱい食べる人が増えそうだしね。
まぁ状況を見て、考えることにしよう。
クランの大人メンバーとの打ち合わせが終わったので、俺は育成冒険者第一号である『
冒険者になりたいと強く希望した狼亜人の姉妹エクセちゃんとセレンちゃん、そして狸亜人のポルセちゃんを紹介するためだ。
彼女たちを、『
早速、エクセちゃん、セレンちゃん、ポルセちゃんを紹介した。
三人とも少し恥ずかしそうに、はにかみながら挨拶をしていた。
三人とも芯の強い子なのだが、普段はおとなしい感じの子たちなのだ。
男子メンバーのレイくん、アマダくん、ウラキくん、ビダンくんは、少し照れ臭そうに、そして嬉しそうな感じで挨拶をしていた。
“可愛い転校生が来た”みたいな感じなんだろうか。
はっきり言って、この三人の亜人の女の子は、みんな可愛いいんだよね。
そして、すでにメンバー入りしているツリッシュちゃんとハウジーちゃんも、かなりの美人顔だからね。
他の男子が見たら、羨むようなパーティーかもしれない。
そのツリッシュちゃんとハウジーちゃんも、女子メンバーが増えて嬉しいようで、笑顔で挨拶していた。
これで男性四人、女性五人の九人パーティーとなる。
駆け出し冒険者のパーティーとしては、人数が多めだろう。
だが俺は、このように十人前後の構成が良いと考えている。なぜならこの方が、パーティーの安全度が高まると考えるからだ。
この十人前後のパーティー構成で、大きな支障が出ないようなら、『ツリーハウスクラン』の新規結成パーティーの標準仕様にしたいと思っている。
生存率を高めるための、推奨のパーティー人数ということだ。
このぐらいの人数にすることによって、盾役の『タンク』のポジションを増やせるから、魔物と対峙したときのパーティーの安定度が高まると思うんだよね。
守りって大事だからね。
俺はこのまま、パーティーでの各自のポジションも決めることにした。
もちろん、今後の訓練次第で違う部分に適性があれば、変更すれば良いので、お試しみたいな感じである。
ただその前に、一番大事なパーティーのリーダーを決めた方がいいだろう。
実は……リーダーに適した人材は、俺の中には既にあるのだが、まずは当人たちで話し合ってもらう。
「みんな、まずはこのパーティーのリーダーを決めてもらいたいんだ。少し時間をあげるから、みんなで話し合って決めて」
子供たちに話し合いの時間を与えた。
少年四人は、全員が十五歳で、レベルもみんな12だ。
ツリッシュちゃんは、十三歳でレベルは14だ。
ハウジーちゃんは、十二歳でレベルは11だ。
狼亜人のエクセちゃんは十二歳でレベル13だ。
妹のセレンちゃんは、八歳でレベル20だ。
狸亜人のポルセちゃんは十二歳でレベル14だ。
俺の予想に反し、話し合いは一瞬で終わった。
リーダーには、満場一致で男装の美少女ツリッシュちゃんが選ばれていた。
これには、少年四人の発言が大きかった。
彼らは開口一番、リーダーに必要なのは、みんなをまとめる力と責任感だと言って、大勢のみなしごたちを集めて守っていたツリッシュちゃんがふさわしいと言ったのだ。
普通なら自分たちが年上だし、リーダーをやりたがってもおかしくないのだが、この子たちは、ちゃんとわかっているようだ。
適材適所と言う考え方もわかっているんだろうし、パーティー全体のことを考えることができているのだ。
リーダーに向いてない人が、リーダーをやったときには、命に関わるからね。
この子たちも有望だ。
この発言に、みなしごたちをまとめていたサブリーダーのハウジーちゃんも賛同し、追加で入ったエクセちゃんたち三人も賛同したのだ。
当のツリッシュちゃんは、最初驚いていたが、少年四人から遠慮しないでリーダーをやってくれと説得され、引き受けていた。
遠慮する気持ちもあったみたいだが、彼女は責任感もあるし、何よりも強くなりたいという気持ちが強いので、引き受けたのだろう。
実は、俺が内心リーダーと決めていたのも、ツリッシュちゃんだった。
四人の少年たちが言ったように、みなしごたちを守っていたあの行動力は並外れているのだ。
素晴らしいリーダーシップだし、統率力と言えるだろう。
かなり将来有望だと思うんだよね。
「私がリーダーをやることになりました。がんばります!」
ツリッシュちゃんが俺のところに来て、力強く言った。
「わかった。みんなが決めたなら、俺から言う事は何もない。俺もツリッシュちゃんがいいと思っていたけどね」
俺はそう言って、ツリッシュちゃんの頭を撫で回した。
そして、悪戯っぽく笑った。
ツリッシュちゃんは、照れくさいような顔をしていた。
今までだと……「ふざけんな」とか「触るな」とか言われていたと思うが、だいぶ軟化してくれた。
警戒心も取れて、本当によかった。
アグネスさんと会って、大泣きした後は、憑き物が取れたように素直な感じになっているんだよね。
それまでのトゲトゲした感じが消えて、柔らかい感じになったのだ。
そのうち、女の子っぽく可愛く笑ってくれる日も来るだろう。
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