1049.常識外れな報告に、できる受付嬢も少し壊れる……。

 迷宮入口の受付のところまで戻っ来た。


 迷宮を出るときも、受付で戻ってきた旨の申告をするのだ。


 当然ナナヨさんが受付担当となって、処理してくれた。


 この申告の時に、討伐した魔物についても申告をすることになっているそうだ。

 ただ、この申告は自主申告で義務では無いらしい。

 それでもほとんどの冒険者は、申告してくれるとのことだ。

 事実上の強制みたいな感じになっているのだろう。


 凄腕冒険者などで、討伐魔物の数が多い場合で、数えるのが大変な状況のときには、大体の数で済ませたりもすることもあるらしい。

 今回の俺のような場合だろう。

 運用は、まあまあルーズなようだ。

 いや臨機応変と言っておいてあげよう。


 『冒険者ギルド』は、冒険者が討伐した魔物の『魔芯核』を一定割合で国を収めることになっている。

 それゆえに、『冒険者ギルド』を通さずに『魔芯核』を横流しすることを防ぐ意味もあるのだろう。


 俺も、今回討伐した魔物の数を報告することにした。


 ただ『連鎖暴走スタンピード』の魔物については、みんなの前で回収した後半に倒した魔物の数だけにするつもりだ。


 『連鎖暴走スタンピード』の魔物については、カエル魔物、イモリ魔物、鶏魔物、ワニ魔物など合わせて百三十六体と報告した。

 詳しい内訳は後日ということにした。


 本当は俺の『波動収納』で、種類ごとにカウントされているからすぐ報告できるのだが、魔法カバンに入れた場合は、入れるときに記録でもとっていない限りカウントする機能は無い。

 だから、今は内訳はわからないということにしたのだ。


 ナナヨさんは、後日正式に内訳を報告しなくても、ギルドの買取窓口に持っていけばいいと言ってくれたので、無理に再報告する必要はなくなった。

 臨機応変な対応で助かる。


 それから、もちろんカエル魔物のキングの討伐も申告した。


 通常の探索で、倒した魔物の種類と数も報告した。


 これも、多少誤魔化して報告してしまった。


 大きな池を丸ごと殲滅するという無茶苦茶なことをしてしまったので、まともに報告するとすごい数になってしまうのだ。

 これ以上悪目立ちしたくないので、誤魔化してしまったのだ。

 まぁ今更感はあるが……。


 もともと狙っていたレアな魔物である『貝殻提灯アンコウ』の魔物については申告した。


 この報告にも、ナナヨさんは唖然としていた。 

 四体討伐したと言ったら、固まっていたのだ。


 なんか……ドン引きしてる感じだった。


 魔物の討伐報告をして、ドン引きされるって……まぁいいけどさ。


 通常の探索の時に、それ以外の魔物を全く倒していないのは不自然なので、普通に倒した鶏魔物、カエル魔物、イモリ魔物、メダカ魔物、ドジョウ魔物、タニシ魔物などの数も報告した。

 タニシ魔物については、もちろん大量に回収した貝殻を除いて、普通に倒した二十六体だけの報告にした。

 それでもその数に驚いていた。

 だが、ナナヨさんは何かを悟ったのか……「もう驚きません」と消えるような声で呟いて、すまし顔に戻っていた。


 そしてもう一つ、『迷宮人参』七十一本を採取したと申告したのだが……ナナヨさんはやはり驚いていた。

 でもすぐに首を横に振って……「もう驚かない、もう驚かない」と独り言をぶつぶつ言っていた。

 大丈夫だろうか?


 俺の魔物の討伐報告が常識外れだったせいか、綺麗セクシーで、かつ仕事ができて色っぽいというナナヨさんのキャラが、若干崩壊している気がするが……。

 まぁそれはそれで面白いからいいけどさ。

 その方が、ニアさんの『頭ポカポカ攻撃』も発動しないし。


 『迷宮人参』と、『貝殻提灯アンコウ』については、掲示板に張り出されている依頼……クエストでもあるので、クエスト完了を示す確認書も発行してくれた。

 ギルドの買取受付所に、魔物の死骸と一緒に出すのだそうだ。

 このようにクエストの達成は、ギルドに記録されていて、一定以上になると冒険者ランクが上がるというわけだ。


 俺は、依頼の読み上げ係として働いていた少年に、クエストを達成した報告をしたかったのだが、もう日暮れ前ということもありいなかった。

 そりゃ帰ってるよね。

 今度会ったら、良いクエストを教えてくれたことに、改めてお礼を言おうと思っている。


 ギルドの買取所には、すぐに持っていかなくても大丈夫という事だったので、俺たちは、このままツリーハウス屋敷に帰ることにした。


 エクセちゃんを、早く父親や妹に合わせてあげたいからね。




 ◇




 ツリーハウス屋敷についた。


 俺は、助けた熊亜人のプップさん、狼亜人のエクセちゃん、狸亜人のポルセちゃんを、俺と仲間たちの屋敷に案内した。


 ちなみに敷地中央にある俺と仲間たちの屋敷の建物を、『クラン本館』と呼ぶことにした。


 その手前にある元々あったツリーハウスと二本の木の後ろのコの字型の建物は、『ラウンジ館』という名前にした。

 みんなで集まって、お茶をしたり、食事をしたりする場所だからだ。


 敷地の左側に作った子供たちの暮らす建物は、『養育館』という名前にした。


 その手前側に作った大浴場は、『お風呂館』という名前だ。


 敷地右側にある冒険者のメンバーが住むための建物を『冒険者館』という名前にした。


 敷地全体というか、この場所全体は『ツリーハウス屋敷』と今まで通り呼ぶことにする。


 呼び方を決めないと、言い難かったので、各建物に名前をつけたのだ。


 ちなみに『ツリーハウス屋敷』の道を挟んで向かい……西側にある大きな農場スペースは、『クラン農場』という呼び方にした。


 そのさらに西側にある林は、『クラン林』という呼び方にした。

 林の中に、子供たちが遊べるようなアスレチックを作りたいと思っているので、完成したときには、特別な名前をつけてもいいかもしれない。



 『クラン本館』の中に入り、すぐにエクセちゃんを、応接室に連れて行った。


 もうすでに、父親のベオさんと妹のセレンちゃんは到着している。


 サーヤから念話で報告が来ていたのだ。


 待ちわびていることだろう。

 さぁご対面と行きますか。



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