1044.またもや、連鎖暴走!?

「リリイ、チャッピーあの人たちを助けて! ニアは回復を頼む!」


 魔物の『連鎖暴走スタンピード』から逃げてきた人たちの救出指示を出した俺は、迫り来るカエル魔物たちに魔法の鞭を放った。


 横薙ぎの打撃を往復で四発入れて、最初の集団を一掃する。


 だが、すぐにまた次の集団が来ている。


 そして、もともとこのフロアにいた魔物たちも、『連鎖暴走スタンピード』に触発されたように、一斉に姿を現し、襲いかかってきた。


 どうもこういうかたちで、フロアを通過する度に、そこにいる魔物を合流させて、大集団になっているようだ。


 一体どれだけの魔物が続いているのか……やはりここで殲滅してしまわないと。


 通路から大量に出てくるなら、出てきたところをまとめて倒せばいいと思っていたが、このフロアの魔物がすべて襲って来ているので、全方向から攻撃される状態になっている。


 今助けた人たちは、ニア、リリイ、チャッピーといるから、大丈夫だろう。


 俺は、この魔物たちを一掃する。


「全部の魔物、出てこいやぁぁぁ!」


『挑発』スキルを使って、俺に引き寄せる。


 思わず……元の世界で好きだった格闘技中継みたいな感じの煽りで、挑発をしてしまった。

 もちろん、右手の親指を突き上げて、体を後ろにのけぞらせるポーズ付きでだ。

 まぁご愛嬌だ。


 周囲の魔物が、一斉に俺をロックオンしている。


 さて……どう倒すのが、一番効率がいいかなぁ?


 おおっと、考えている暇はない。

 もう迫って来てる。


 俺は、魔法の鞭を構えて、その場で360度回転した。

 そしてフィギアスケートの選手のように、その場でくるくる回転し続けた。


 これによって、魔法の鞭が全方位から襲ってくる魔物たちを、無作為に薙ぎ倒す。

 俺を中心とした、でたらめな範囲攻撃だ。


 そして『限界突破ステータス』の俺は、普通の地面の上でもアイススケートの選手のようにくるくる回転できるし、それを長い時間維持することができる。


 少しの間くるくる回り……襲ってくる全ての魔物を倒した。

 元々このフロアにいた魔物と、『連鎖暴走スタンピード』の第二陣の魔物だ。

 すごい数の魔物の死体が横たわっている。


 でもこれで終わりではない。

 『連鎖暴走スタンピード』は、まだ続いているのだ。

 次の集団が迫っている。


 俺は、『波動収納』のサブコマンド『戦利品自動回収』を使って、転がっている大量の魔物の死骸を回収した。

 邪魔になるからだ。


 すぐに、第三陣が来た。


 元々このフロアにいた魔物は倒したので、先のフロアの通路から襲ってくる魔物だけを倒せばいい。

 当初考えていた通り、出てくるところを魔法の鞭で薙ぎ払い、次々に倒していく。


 しばらくそれを繰り返したら、襲ってくる魔物が極端に減った。

 やっと打ち止めらしい。


 と思ったのだが……少し振動が伝わってくる。


 この感じ……デカい奴が来るのか?

 なんとなく……このノリ……キングが来るときの感じに近いんだけど……まさか来ないよね?


 そんな俺の思いがフラグになったのか……本当にキングが来てしまったようだ!


 超どデカいカエル魔物だ!


 体高が三メートルくらいあるんだけど。

 こんなどデカいカエルって……ドン引きなんですけど。


 なんとなく、忍者物なんかで、忍者が乗っている大ガマみたいな感じだ。

 全体に赤茶色で、見るからに固そうな外皮だ。


 おおっと!


 舌を伸ばして攻撃してきた。


 地面に大穴があいたんだけど……。

 めっちゃ攻撃力あるじゃないか!


 『波動鑑定』すると……『種族』が『イビル・キングフロッグ』となっていた。

 レベルは、なんと58だ。


 カエル魔物でそんなに強いって、ありなのか!?


 ——ゲロゲロゲロゲロォォォォォォ


 う、なんだ!?

 すごい声だ……超音波攻撃なのか……?


 『限界突破ステータス』の俺は耐えられるが……


 ニア、リリイ、チャッピーの様子を確認すると、みんな耳を押さえてうずくまっている。

 ニアに至っては、飛行を維持できずに下に降りてしまっている。


 助けた冒険者たちは、全く動かない。

 死んでないよね?


 冒険者たちを『波動鑑定』とすると……『状態』表示が、『拘束バインド状態』となっている。


 この攻撃には、拘束バインド効果もあるようだ。

 厄介な攻撃だ。

 俺はレジストできているが、ニア、リリイ、チャッピーは微妙な感じだ。


 何とか抵抗しているが……そのかわり動けない状態になっている。

 実質拘束バインドされたのと同じ状態だ。


 そしてこの超音波攻撃は、攻撃力もあり、ダメージを受けてしまう。

 俺やレベルの高いニアたちは大丈夫だが、助けた冒険者たちは、肉体的にもダメージを受けているはずだ。


 早く倒してしまわないと!


 俺は、切れ味抜群の『魔剣 ネイリング』を取り出し、奴の正面に走り寄った。


 そして下から……顎から突き上げる軌道で、脳天まで刺し貫いた。


 キング討伐終了だ!


 俺にとっては、瞬殺だったが……こいつは、かなり厄介な魔物だったと言える。


 もし俺がいなくて、ニアたちだけが戦っていたら、苦戦していたかもしれない。

 ニアたちくらいのレベルなら、ほとんどの魔物は苦戦せずに倒せると思うが、こいつの特殊攻撃は凄かった。

 レベルが58というのも破格だし。

 まぁ油断大敵というか……俺を含め、戒めなきゃいけないな。

 気を引き締めないといけない。


 『拘束バインド』状態は、特殊な状態異常らしく、『状態異常耐性』や『状態異常反射』が効かないし、『状態コンディション最適化グリーン』でも治せない可能性が高い。

 『暗示』等と一緒で、『特殊状態異常』と呼ばれる範疇になるのだろう。


 助けた冒険者たちは、『拘束バインド』状態になっていたが、術者であるカエル魔物のキングが死んだので、元の状態に戻っている。


 ニアたちも、もう大丈夫なようだ。


 このキングの存在が、『連鎖暴走スタンピード』を引き起こしていたと思うので、これでも大丈夫だろう。


 実際に、もう魔物の気配はないしね。




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