1043.レア魔物、ゲットだぜ!

 ニアが打ち込んだ雷魔法によって、池の中に残っていた全ての魔物を倒せたようだ。


 検証するのにちょうどいい状況なので、俺は『戦利品自動回収』コマンドを使うことにした。


 俺は一切手出しをしていないので、普通で考えれば回収できないだろう。

 俺も一緒に倒していれば、俺が直接手を下していない魔物についても、俺のパーティーの戦利品として回収できる可能性が高い。

 だが今回は、全く手を出していない。

 これでも回収できるかを確認するのだ。

 ニア、リリイ、チャッピーは、パーティーメンバーになっているから、たとえ俺が全く攻撃を加えていなくても、俺の戦利品として認識されるかを確認するのである。


 俺は、早速『戦利品自動回収』コマンドを発動した。


 ……おお! 回収している。


 ニアたちが倒した魔物の死骸は、全く手を出していない俺の戦利品として認識されたようだ。


 そして、大量に回収されている魔物の死骸の中に……『貝殻提灯アンコウ』の魔物の死骸があった!

 しかも四体だ。


 あのチャラ男地図売りの地図は、結構信用できるらしい!


 『波動収納』から、アンコウ魔物の死骸を一つ出してみた。


 体長が二メートルくらいある。


 そして提灯の部分に、ホタテ貝のようなものが付いている。


 俺はナイフで、貝殻をこじ開けた。


 すると……貝の身があって、その膜の部分に、盛り上がりが六つある。

 その中には……綺麗な直径一センチくらいの玉が六つ入っていた。

 六つとも、綺麗な朱色だ。

 色は別としても、見た目は真珠みたいだ。

 依頼書に書いてあったが、貝の中の宝石には、色のバリエーションがあるらしい。


 俺は、残り三体も取り出して、貝部分を開けてみた。


 すると、違う色があった。

 一体が同じ朱色だったが、他は黄色と青色だった。

 玉の数は、どれも六個入っていた。


 四体分合計で、朱色の玉が十二個、黄色が六個、青色が六個となった。


 他にも、色の種類はあるのだろうか?

 今回手に入れた色を見て……なんとなく、「信号機か!」とツッコミを入れたい気持ちになったが……まぁいいだろう。


 それにしても、このフロアにまさか四体もいたなんて。


 レアなのか、レアじゃないのか、微妙な感じだ。

 まぁ……それ以前に、池ごと殲滅した俺たちの戦い方がレアだから、しょうがないけどね。


 依頼書には、買取相場として一体七十万ゴル程度と書いていた。

 採れる宝石が一玉十万ゴルが相場で、色や質などによってもっと高い値段がつく可能性があるとのことだった。

 これが一体について、六個入っているから最低でも六十万ゴルになる。

 それ以外に、肉や素材があるから、合わせて七十万ゴルが買取相場ということのようだ。


 レアな魔物だけあって、一体でも狩れば、かなりおいしい魔物と言える。

 実力のある冒険者パーティーが狙うというのも、頷ける。


 それを俺は、四体倒してしまったから……最低でも二百八十万ゴルにはなるということだ。

 色が三種類あるから、基準より高い値段がつく色が入っていたら、三百万ゴルを超えるかもしれない。

 買取値段がいくらになるか楽しみだ。

 ありがたいことにお金には困っていないけど……こうやってレアな魔物を倒して、換金するのってワクワクするね!


 そしてもう一つ、アンコウの魔物だけに、鍋とかにしたら美味しいのではないかと密かに期待している。

 ぜひ食べてみたい!


 ちなみに、ニアさんが頑張って採取してくれた『迷宮人参』は、一本一万ゴル程度という買取相場らしいので、七十一本採ってくれたから、『迷宮人参』だけでも七十一万ゴルになる。


 まぁこんなに採る冒険者はいないだろうけど、一つ見つけただけでも、駆け出し冒険者にとってはおいしいよね。



 とりあえず今日の目的は果たしたので、帰ることにしよう。


 今いる五つ目のフロアを出ると、通路が二股に分かれていて右側に進むと、最初の分岐の時に真ん中を選んでいた場合に進んでいたルートの四つ目のフロアに行ける。


 俺たちは、最初の分岐で左側のルートを選んだ。

 それは、この五つ目のフロアに『貝殻提灯アンコウ』の魔物が出る可能性があると書いてあったからだ。


 同じ道を引き返すのもつまらないので、この五つ目のフロアを先に進んで、次の分岐を右に曲がり、真ん中ルートだった場合の四つ目のフロアに行くことにしよう。

 そこから真ん中ルートを戻れば、新しいフロアを進んで帰れるからね。


 ちなみに地図を見る限り、一番進みやすいのは真ん中ルートだ。

 この左ルートで、四つ目にあったようなほぼ水辺というフロアが、八つ目まで出てこない。

 そこまでは、いやらしいフロアはないということだ。

 探索エリアを多くしたい場合は、真ん中ルートが進みやすいということになるわけだ。



 俺たちはこのフロアを出て、分岐を右に曲がり、真ん中ルート四つ目のフロアに入った。


 このフロアは、ほとんどが草原になっていて、水辺は小さな池が一つあるだけだ。


 かなり戦いやすいフロアではないだろうか。


 無理に戦う必要はないので、真ん中ルートの三つ目のフロアに繋がる通路を目指す。


 草原を進んでいると……後ろの方から、五つ目のフロアに繋がる通路から、騒がしい音が聞こえた。

 振り返ると、ものすごい勢いで冒険者が四人走ってくる。


 なんだ?


 ……まるで何かに追われているようだ。


 ただごとではない雰囲気だけど……


「逃げろ!」

「どけ、そこをどけ!」

「わぁぁぁ」

「急げぇぇぇぇ」


 四人の男が、叫びながら走ってくる。


「何があったんですか?」


 俺の問いかけを無視して、男たちは通り過ぎてしまった。


 俺はすぐに追いかけて、並走しながらもう一度尋ねた。


「何があったんですか?」


「なんだ、ようるせえな!」

「お前も早く逃げたほうがいいぞ!」

「魔物! 魔物だ!」

連鎖暴走スタンピードだ!」


 男たちは必死で叫んで、そのまま走り去った。


 俺は立ち止まった。


 魔物が来る……しかも『連鎖暴走スタンピード』だと言っていた!

 もしそれが本当だとしたら……ここから三つのフロアを遡れば、物売りなど人が大勢いる『スターティングサークル』にまで魔物が行ってしまう。

 そんなことになったら、すごい被害になる。


 ほんとに『連鎖暴走スタンピード』なら、ここで止めないと。


「ほんとに『連鎖暴走スタンピード』だったらまずいから、俺たちでここで倒そう!」


 俺の言葉に、ニア、リリイ、チャッピーが首肯した。


 三人とも、やる気満々だ。


 ……あれ、また冒険者が現れた!

 今度は亜人の冒険者たちだ。


 怪我をしている。

 熊亜人とおぼしき中年男性を、二人の亜人の少女が両脇から抱えて走ってくる。


 そのすぐ後に、カエル魔物が迫っている!


 これはやばい! 助けないと!




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