1042.レア魔物を倒す、滅茶苦茶な方法。
『波動収納』のサブコマンドの検証をいくつかやったが、一旦切り上げようと思う。
今日のところは、これぐらいで充分だろう。
もう少し先のフロアにも行きたいしね。
ただ思いつきで始めた検証によって、改めて『波動収納』の各サブコマンドが優秀すぎるということが確認できた。
そう思いつつ、改めてサブコマンドを見ていたら……あることに気づいた。
『戦利品自動回収』というコマンドがあるんだよね。
これは、俺の戦いに伴う戦利品を、自動で回収してしまうという便利なコマンドなのだ。
街中での戦闘後とかは、何が俺の戦利品として認定されるか分からないので、迂闊には使えないのだが、今回は使えたかもしれない。
リリイが倒したタニシ魔物の死骸は、確実に戦利品だからね。
ただ、そう考えながら、今思ったが……やっぱり回収できなかったかもしれない。
よく考えたら、俺が倒したわけではなくて、リリイが倒したんだよね。
俺の戦利品と認定されるかは、微妙だ。
リリイとはパーティーメンバーになっているから、リリイが単独で倒してしまっても、俺の戦利品として認定される可能性はあるけどね。
それに『波動収納』って……まるで考える力があるように、杓子定規じゃなくて判断して回収する感じがあるから、いけそうな気もする。
この辺については、この後のフロアで検証してみよう!
俺たちは、四つ目のフロア抜けて五つ目のフロアに入った。
チャラ男氏の地図が正しければ、ここに目当ての『貝殻提灯アンコウ』の魔物がいるはずだ。
ただレアな魔物らしいから、実際にお目にかかれるかどうかは、運次第だと思う。
地図の情報が合っていることを信じて、探すのみだ。
このフロアも楕円形になっているが、フロアの左半分が陸地で右半分が大きな池になっている。
当然『貝殻提灯アンコウ』の魔物は、池の中にいるはずだ。
地図によれば……出現頻度の高い魔物は、鶏魔物、カエル魔物、ナメクジ魔物、ハゼ魔物、イワシ魔物らしい。
イワシの魔物とか……食べたら美味しそうだが。
どうせなら、アジとか鯖の魔物がいないかなぁ。
それはさておき、どうやって『貝殻提灯アンコウ』の魔物を探すか?
他の魔物はどうでもいいから、出てきたら倒せばいいけど、アンコウ魔物はレアなんだから、ちょっとウロチョロしたぐらいじゃ出てこないよね。
俺は、ニア、リリイ、チャッピーに何かいいアイデアがないか尋ねてみた。
「そうね……水の中に潜るのはやだし。そうだ! グリムの『
ニアから、そんな案が出た。
確かに、その手はある。
感覚共有すれば……俺が潜っている感覚で探し回ることができるからね。
「でもさぁ……メダカサイズでこの池探し回るって、面倒くさいわよね。あ! もう一つ思いついちゃった!」
ニアが、また思いついたようだ。
悪い笑みを浮かべている。
なんか……無茶苦茶なことを考えていそうで、怖いが。
「どんなアイデア?」
「さっきのリリイがタニシ魔物を倒したのを見て思ったんだけどさぁ……この池に、火魔法を打ち込んで灼熱地獄にしちゃえばいいんじゃない! 池ごとやっつけちゃえば、アンコウ魔物も倒せるっしょ!」
ニアが親指を突き立てて、満面の笑みだ。
やっぱり無茶苦茶だった。
この人の発想って一体?
めっちゃ怖いこと言ってますけど。
この池の魔物を、根こそぎ倒しちゃうってこと?
まぁそれはアリだけどさぁ。
迷宮の場合は、一定時間が経過すると魔物が補充されるみたいだから、絶滅するってことは無いだろうしね。
「とりあえず、一回やってみようよ。いいじゃない」
苦笑いしている俺に、ニアが催促してきた。
この人……完全にやる気だよ。
まぁいいけどさぁ。
「じゃあとりあえず今回だけだよ……」
しょうがないので、渋々了承した。
リリイとチャッピーに、『火魔法——
俺がやってもよかったのだが、威力が強すぎて、水が蒸発しちゃうなんてことになったら困るから、自重した。
だいぶ魔力調整ができるようになっているので、多分そんな事は起きないと思うが、慎重にやりたいので魔力調整の上手いリリイとチャッピーに頼むことにしたのだ。
リリイは魔力調整の天才児なのだが、チャッピーもかなりうまいのである。
威力が一番低い『
リリイとチャッピーが、五発、六発と打ち込んでいくと……だんだんと湯気が立ってきた。
威力を最小限ではなく、ある程度高めた状態で打ち込んでいる。
状況を見ながら、だんだん威力を高めてくれている。
なんか……露天風呂感が半端ない!
一風呂浴びたい気持ちになってきたが……そんなことを考えるのは、不謹慎だよね。
すごい数のハゼ魔物とイワシ魔物が、浮かんでいる。
リリイとチャッピーは、ただ打ち込んでいるわけではなく、水面の動きなどで魔物がいそうなところを狙っているので、かなりの数を直撃で倒してしまっている。
焼き魚になりつつ、煮魚にもなっているみたいな感じだ。
いずれにしろ、この池全体がいい出し汁になっている。
……これも不謹慎だろうか?
ただ、直撃で倒してしまっている魔物以外は、浮いているが弱っているだけという状態だ。
さすが魔物だけあって、熱湯になったくらいでは、すぐには死なないみたいだ。
「そうだ! 今更だけどさぁ、雷魔法を打ち込んでもよかったよね! てか……そのほうが良かったかも!」
ニアが、そんなことを言った。
確かに、言われてみれば、それもありだった。
電撃で感電死させた方が、早かったかもしれない。
それに、きれいに倒せたよね。
この大きな池にいる魔物を、全て倒すほどの電撃は普通は打てないだろうが、レベルが高い俺たちならできる。
俺はリリイとチャッピーを止めて、ニアに雷魔法を打ち込んでもらうことにした。
「いっけえぇぇ!
——ゴゴオォォンッ
おお!
すごい威力だ!
てか……ニアさん、調子こいて、威力高いの『
多分面倒くさいから、一発で終わらそうと思ったんだよね。
まぁ黒焦げになってないから、いいけどさ。
これで弱っていた魔物も全て倒したし、まだ水の中にいた魔物も倒せたのではないだろうか。
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