1041.大泥棒になれちゃう、技コマンド。
『波動収納』のサブコマンド『登録品回収』を使い、金貨の回収を試みた。
このフロア全体を範囲に指定して、試しにやってみたところ、三枚の金貨を回収することができた。
おそらくこのフロア全体に対して、効果を発揮したのではないかと思う。
直感的にそう感じるのだ。
多分当たっているだろう。
少なくともこのフロア程度の大きさに対しては、有効だということが確定した。
実は、同時にもう一つ検証していたことがある。
人が所持している金貨を奪うことができるかということである。
結論から言えば……奪えてしまった。
俺が密かに憂いていたことが、できるのだ。
悪意で使えば……完全な大泥棒になれてしまう。
なぜ確認できたかというと……実はリリイに金貨を渡して、手で一枚持っていてもらったのだ。
それが回収されたのである。
このことからすれば、ポケットに入れたり普通にカバンに入れている金貨は、奪ってしまえるということだ。
完全に泥棒だ。
そしてもう一つ分かったのは、『アイテムボックス』スキルや魔法カバンに入っているものは、奪えないということだ。
これも検証するために、リリイとチャッピーにそれぞれ『アイテムボックス』と『魔法カバン』の中に、金貨を入れておいてもらったのだ。
まぁ普段から、お小遣いは入っているのだが。
今回の検証で分かったのは、『アイテムボックス』や魔法カバンなど特殊な保管方法をしていない限り、対象範囲というか効果範囲にある物は、その存在を俺が知らなくても、『登録品回収』コマンドで、回収できてしまうということだ。
『登録品回収』コマンドは、やはり凄い機能だ。
もっとも、このコマンドが使えるのは、俺が一度『波動収納』に収納していて、波動情報を持っているものに限られる。
だから初見の武器などを、取り上げることはできないのだ。
ただ人の所有物でも関係なく回収できることから推測すると……『目視回収』コマンドを使って、目で捉えれば、人が持っている武器でも取り上げることができてしまうのかもしれない。
『目視回収』コマンドは、目でロックオンして回収するコマンドで、そのものの波動情報を持っている必要は無いからね。
これも試しで、リリイとチャッピーに武器を構えてもらって、『目視回収』を実行してみた。
……やっぱり。
俺の予想通り、うまく回収することができた。
これも凄い機能だ!
武器を持った相手に、このコマンドを使えば、一瞬で武装解除できてしまう。
武器を持たない魔物相手には使えないが、対人戦では使えそうだ。
ただ無力化するのは、今までのように『状態異常付与』スキルで『麻痺』や『眠り』を付与するほうがいいだろうけどね。
武器だけ取り上げただけじゃ、おとなしくなるわけじゃないからね。
その後に『状態異常付与』スキルを使わなければならないと、二度手間になっちゃうよね。
それから、『登録品回収』コマンドについても、まだ検証すべきことがある。
それは効果範囲だ。
まさか国とか領という広範囲に効果を及ぼせるとは思わないが、もしかしたら市町という範囲くらいまでは、効果を及ぼせるかもしれない。
対象とする範囲については、頭でイメージするから、イメージ力が大事なのかもしれないけどね。
いずれ広い範囲で試してみたいが、何で試すか……今のところ思い浮かばないんだよね。
効果の範囲を確認をするためには、どこにでもある物で試す必要があるが、人が所有する物でも関係なく回収できてしまうことを考えると、軽い気持ちでは試せないのだ。
本当に大泥棒になっちゃうからね……トホホ。
『登録品回収』コマンドで、このフロアから回収した金貨は三枚だが、そのうちの一つはリリイが持っていたものなので、実質は二枚ということになる。
二枚の金貨が、このフロアの中に落ちていたということだ。
ちなみに指定した金貨は、今まで俺たちがよく使っていた『コウリュウド式硬貨』の金貨ではなく、『アルテミナ公国金貨』だ。
『コウリュウド式硬貨』は、周辺諸国でも広く使えるのだが、各国でもそれぞれの硬貨を発行しているのである。
この世界の良いところは、通貨の単位も基準も価値も統一されていることだ。
単位はゴルで共通で、硬貨のサイズもほぼ同じで、価値は変わらないのだ。
国によって、各硬貨のデザインが変わるだけという感じなのである。
だから仮に様々な国の硬貨を混ぜて取引しても、特に問題ないのだ。
ただ今までいた『コウリュウド王国』では、流通しているのは、ほとんど『コウリュウド式硬貨』だったけどね。
『アルテミナ公国』のような小国では、他の国の硬貨も混ざって取引されることが結構あるようだ。
ここは、『アルテミナ公国』の迷宮だから、『アルテミナ公国金貨』が多いのではないかと考えて、それを指定したのだ。
せっかくだから……他の硬貨も試してみよう!
冷静に考えてみれば……この迷宮の序盤のフロアで命を落とすとか、お金を落とすような冒険者は、金貨なんて持ってないよね。
『アルテミナ公国銀貨』を登録品として指定して、『登録品回収』を発動する——
…………おお! 回収されてきてる。
なんと三十枚もあった。
俺は引き続き、銅貨と銭貨についても試してみた。
銅貨は二百三十枚、銭貨に至っては四百九十五枚も落ちていた。
銅貨は日本円で百円くらい、銭貨は十円くらいなので、金額としてはたいしたことないけどね。
ちなみに……『コウリュウド式硬貨』の金貨も『登録品回収』してみた。
……一枚回収できた。
この迷宮には、周辺諸国からも多くの者が訪れているので、違う国の硬貨も落ちているようだ。
徹底して回収するつもりなら、周辺諸国の硬貨を全て指定して回収すればいいんだろうけど……そんな面倒くさい事はやるつもりはない。
それに他の周辺諸国の硬貨は、まだ持っていないからね。
回収した硬貨は、ほとんど水中にあったみたいで、汚れているものが多い。
だが、『波動収納』の新機能『分解仕分け』で、汚れを分離できるので、まったく苦にならない。
この機能もほんとに凄い機能だ。
汚れの素材をイメージすることは難しいので、汚れていない綺麗な硬貨をイメージして、『分離仕分け』すれば、硬貨の部分だけが分離され、汚れ物質が残されるのだ。
ふと思ったが……迷宮の各フロアを回って、落ちているお金を『登録品回収』で拾い集めるだけで、日銭は稼げそうだ。
もしかしたら、小金持ちくらいにはなれるかもしれない。
まぁ想像するだけなら面白いけど……実際は、やはり面倒くさいからやらないけどね。
既にお金はあるしね。
気が向いた時にやるという程度でいいだろう。
俺の『固有スキル』だから、俺とナビー以外にはできないしね。
もしニアとかが使えたら……意外と目をドルマークにして、喜んでやっちゃうかもしれない。
あの人の場合、実際の金額はいくらというよりも、そういう行為自体を楽しむからね。
今やってる薬草採取だって、そんな感じなのだ。
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