1028.可愛い、お披露目ショー。

 『アラクネロード』のケニーのおかげで、ローブは完成した。


 ケニーに作ってもらっている間に、俺は密かに、クランのオリジナルの装備品をもう一つ作っていた。


 メンバーによっては、普段の服のセンスとローブが合わない可能性もあるし、毎日同じローブを着ると飽きる可能性もある。

 そこで、どんな服装でも身に付けられる装備品を作ることにしたのだ。


 実は、このアイデアは、ニャンムスンさんが出してくれたのだ。

 確かに言われてみれば……ニャンムスンさんの『美火美びびび』のメンバーは、独特な服装の人が多いからね。


 俺は、どんな服装でも見つけられるだろう腰飾りを作った。

 ベルトのバックルくらいの大きさのプレートが付いていて、『ツリーハウスクラン』の紋章が刻まれているのだ。

 ベルトのような使い方もできるし、腰飾りとしてゆるく巻いておくこともできる。


 木剣の素材として使っている『ワイルド樫』で、プレートを作った。

 この素材は、軽くて硬く丈夫なのだ。

 腰に巻くための紐素材は、丈夫な蛇魔物の皮を紐状にして編み込んで作った。

 プレートも紐も赤く染色したので、かなりお洒落な感じにできた。


 ちなみにプレートに描かれた紋章は、緑色になっている。

 紋章は、『冒険者ギルド』でクランの登録をしたときに、その場で作ったものだ。

 ずんぐりした二本の木が手を繋いでいて、その上に家が乗っているデフォルメした感じの可愛い紋章だ。


 それから身に付けているときは見えないが、プレートの裏側には個人名が記されている。


 この腰飾りは、『ツリーハウスベルト』という名前にした。

 『階級』は、『中級ミドル』になっていた。


 ただの装飾品なのだが……結構お洒落になったから『中級ミドル』になったのだろうか?

 それとも、武器としてもある程度威力があるから、『中級ミドル』 と評価されたのか?


 実は、武器として使うことも可能なのだ。

 紐の部分が蛇魔物の皮でできていて、プレートが硬い『ワイルド樫』でできているので、鞭のように打ち付ければ、それなりの破壊力がある。

 まぁそんな使い方は推奨しないけどね。

 ただ、手持ちの武器がない時に、身を守る手段になるかもしれないから、一応そんな使い方も可能だという事は伝えておこうかな。




 ◇




 俺は、ケニーに作ってもらった各種サイズの『ツリーハウスローブ』と俺が作った『ツリーハウスベルト』を『波動複写』でコピーし、メンバーの数だけ用意した。


 ふと思ったが……名前が結構長くて言いづらい。

 なんとなくだが、ユニフォームとベルトという表現で落ち着いてしまいそうだ……トホホ。


 これから、みんなにお披露目することにする。


 子供たちがいる建物……養育館という名前にしたが、そこのプレイルームでお披露目する。

 プレイルームは、子供たちが室内で遊ぶための広い部屋なのだ。

 中に入ると……まだ呼んでいないのに、既に子供たちがみんな集まっていた。

 そしてなぜか、全面にマットレスが引いてあった。

 これは昨夜、林で子供たちを寝かせるのに使ったものだ。


 リリイとチャッピーによると……子供たちは、自分たちの部屋があることに喜んではいたのだが、みんなで一緒に寝たいと言い出して、バーバラさんが困っていたのだそうだ。

 そこで、リリイとチャッピーのアイデアで、このプレイルームにマットを敷いて、みんなで寝ることにしたらしい。


 まぁ、みんなで一緒に寝たいという気持ちもわかるけどね。

 林に隠れていた子たちは、肩を寄せ合って寝ていたわけだし、奴隷商人に売られた子たちも、みんなで寝ていたわけだからね。


 それにしても、今マットを引く必要はなかったと思うんだよね……まだ昼間だし。

 俺が「自分たちの部屋の寝床の準備をして」と言ったのは、夜にすぐ寝れるために部屋を整理してほしいという意味で、今寝ろという意味ではなかったんだけど。


 まぁこのマットの上で遊んで、夜になったらそのまま寝るでもいいけどさ。

 そしてリリイとチャッピーを始め、子供たちはこのマットの上で遊ぶ気満々みたいな顔してるし。

 まぁいいけどさ。


 俺は気を取り直して、お披露目を始めることにした。

 他の場所にいた大人メンバーたちにも、集まってもらった。


 そしてクランのメンバー用に、特別な装備品を作ったことを説明した。


 特別な装備品と言っても、子供たちはピンと来ていない感じだ。

 それでも、歓声をあげてくれた。


 早速、実際に見てもらおう。

 お披露ショーの開始だ!



「わぁすごい!」

「かわいい!」

「かっこいい!」

「ほんとにくれるの?」

「「「わーいわーい」」」


 子供たちから、ため息や絶叫が混じった大歓声が起きた。


 ちなみに、お披露目するためのモデルとして最初に登場したのは……俺の可愛い天使、リリイちゃんとチャッピーちゃんだ。


 リリイは、袖を通してローブとして着ている。

 腰飾りが見えるように、前を開いて着用している。

 『ツリーハウスベルト』は、プレートを横にずらしてゆったりと巻いて、腰飾りのような使い方になっている。


 チャッピーは、袖を内側に折り返してマントとして着用している。

 『ツリーハウスベルト』は、プレートを正面に向けてきつく巻いているので、変身ベルトのようにも見える。

 かっこいい変身ヒーロースタイルである。


 リリイは、『ワイルド樫』で作った模造品の小さな魔法の杖を持っているので、本当に人気映画の魔法学校の生徒みたいな感じだ。

 そして魔法使いっぽい可愛いポーズを決めていて、めっちゃ可愛い!


 チャッピーは、木剣を構えてかっこいいポーズを決めている。

 決まってる!


 二人がポーズを変えるたびに、子供たちから大歓声が上がっている。


 二人とも照れ臭そうにクネクネしつつも、結構ノリノリでポーズを変えているのだ。

 本当に、なんて可愛い子たちなんだ……ニンマリ。


 二人の姿を見ていて思ったが、子供たち全員に、木剣もプレゼントしよう!

 護身用にもなるし、標準装備として渡すことにしよう。


 あと……肩から斜めにかける可愛い感じのカバンもあったほうがいいなぁ。


 さすがに子供たち全員に魔法カバンを与えるわけにはいかないから、標準装備として配るのは普通のカバンにするけどね。

 クランの紋章入りのオリジナルのカバンを作ろう。


 早くも二つ追加で、標準装備品が四つになってしまった。


 まぁ普通に考えても……学校とかだったら制服とカバンがあるわけだし、部活の道具も持ってたりするから、多いというわけではないよね。

 木剣は、部活の道具のイメージだ。


 木剣は、販売用に作っている物に紋章だけ刻み込めば良いだろう。


 肩掛けカバンは、大人用と子供用の二種を新たに作ろう。

 今回討伐したワニ魔物の皮を使って、かっこいいのを作るか。

 ワニ皮のカバンなんて凄いなぁ……ムフフ。

 なるべく重くならないように、薄くして作るつもりだが、なんとなく……結構な防御力を持つカバンになってしまいそうだ。

 楽しみだなぁ。

 この後すぐ作ろう!

 色は、男女問わず使えるように、白にしよう。




 

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