1021.波動収納には、まだまだ未知の機能があった!
俺の『自問自答』スキル『ナビゲーター』コマンドのナビーは、俺の期待通り“魔物から効率よく『魔芯核』を取り出す方法”のアイディアを持っているようだ。
(それって、どういうアイデア?)
(はい、『波動収納』のサブコマンドの中に『仕分け移動』があります。
これは、任意の収納物を任意の項目に従って、仕分けして移動することができるコマンドです。
通常は、対象群の中から……例えばバナナを選定して、指定のフォルダに移動することができるわけです。
この機能を発展させられないかと考えています)
(具体的にはどうするの?)
(はい、対象群を例えば……猪魔物一体に限定し、その内部にある『魔芯核』を強くイメージして、指定のホルダーに移動することを試してみてはどうでしょう?)
(なるほど……猪魔物一体を様々なパーツで構成された対象群と捉えて、その中から『魔芯核』を強くイメージして仕分けるというわけか……面白い! やってみよう!)
俺は早速『波動収納』の中に、専用のホルダーを作った。
ちなみに、念じると、脳内に『波動収納』の管理画面が現れるのである。
自分のステータスを確認するときに現れる、ステータス画面と同じようなものだ。
実際は……脳内にイメージとして現れているとも言えるし、目の前の空間に画面が現れているような感覚でもある。不思議な感覚なのだ。
今回討伐した猪魔物の一体に焦点を合わせ、その中の『魔芯核』を強くイメージして、『仕分け移動』サブコマンドを発動する——
…………おお!
うまくできた!
『魔芯核』だけが取り出されて、指定したフォルダに移動している!
という事は……
俺は、検証の意味を含めて、牙、皮、骨をイメージして仕分けしてみた。
……よし!
それぞれのパーツ用に作ったフォルダに、指定した通りに移動している!
どうも俺がパーツを具体的にイメージできるものであれば、それが仕分け項目となって、分解して移動することができるようだ。
という事は……面倒な魔物の解体作業が、『波動収納』の中で、俺のイメージができるということか!
めっちゃ凄いじゃないか!
よし、もう一つ検証しよう!
今回討伐した猪魔物全てを対象群として、それぞれにある『魔芯核』を仕分けして移動する——
…………おお!
これもうまくできた!
対象群となっている猪魔物の『魔芯核』だけが取り出され、指定のフォルダに移動している!
これはすごい!
めっちゃ楽だ!
人海戦術で解決するしかないと思っていた難題が、一瞬で解決してしまった!
さすがナビーだ!
俺ではとても考えつかなかった。
ナビーは、やっぱり凄い!
俺は嬉しさのあまり、つい……久しぶりにイメージの中でナビーを抱きしめてしまった。
そして、そればかりか、勢い余ってキスまでしてしまった。
やばい……セクハラ認定されてしまう。
と思ったのだが、ナビーが固まっているみたいだ。
いつもなら、「それはセクハラです」と激しく糾弾されるのだが……。
俺がキスしてしまったからだろうか……なんとなく俺のイメージの中でナビーが真っ赤になって固まっている姿が浮かぶ。
たぶん……俺の分身だから、自然とその状況が伝わってきてしまったのだろう。
というか……自分の分身に思わずキスしてしまったこともショックだが、それでナビーが固まっていることも、とても微妙だ。
そんな俺とナビーの変な空気を打ち消すかのように、新しい技コマンドが発生した。
なんと、『波動収納』コマンドの中に、新たなサブコマンドとして『分解仕分け』というのが生み出されたのだ。
内容を確認すると……指定した対象物を、指定した項目に沿って細かく分解できるというコマンドだ。
事前に『分解対象』と『分解項目』を登録しておくことができて、一気に分解することができるらしい。
一度細かく『分解項目』を登録しておけば、その後は一瞬でできるのだ。
魔物が対象なら、一瞬で解体作業ができるということだ。
なかなかに便利なサブコマンドだ。
『仕分け移動』を、より分解に特化したサブコマンドといった感じだ。
それにしても『波動収納』……優秀すぎる!
無限の収納であるとともに攻撃にも使えるし、解体までできるようになってしまった。
なんかもっと更に能力が拡充しそうな気もするし……。
更にできることがないか、『波動収納』について本気で検証したほうがいいかもしれない。
といっても、発想力の乏しい俺では、今のところ他の活用アイディアは出ないけどね。
ただ新しい活用法はともかくとして、今発現した『分解仕分け』だけでも、発想次第でいろんな使い方ができるのではないだろうか。
異物混入ワインから『分解仕分け』コマンドを使って、異物を取り除くこともできるかもしれない。
最も異物が何かをイメージできないと分解できないかもしれないけど。
……待てよ、異物混入ワインから異物を取り除くのではなくて、ワインを取り除くというかたちでこのコマンドを使えば、結果としてワイン成分と関係ない異物だけが取り除けるのではないだろうか!
よし! 試してみよう!
『波動収納』の中に入っている異物混入ワインに焦点を当て、ワインをイメージして『分解仕分け』を発動する——
おっしゃ! ワインだけが取り出された!
そしてワインが入っていた樽と、その中の異物と思われるものだけが残った状態になっている。
これはすごい!
異物を取り除けてしまった!
これは、いろんなことに応用できそうだ。
汚れた水を綺麗な水にするとか、海水から塩分を取り除いて飲み水にするとか……できるかもしれない。
もちろん塩も作れるわけだ。
ちなみに、今ワインを分別した状態は、ワインの液体が裸で『波動収納』に入っている状態だ。
もちろん『波動収納』から取り出すときに、ワインの樽に注げば良いので、この状態でも良いのだが……ワインの樽にこの裸のワインを『波動収納』の中で移すことはできないだろうか?
『波動収納』の中で、フォルダを作ってフォルダ間を移動させる事はもちろんできる。
だが、収納物を他の収納物の中に移動させる事は、試したことがない。
これも試しにやってみよう!
俺は『波動収納』の中にあるワインに焦点を当て、ドラッグ&ドロップのイメージでワインの空き樽に移動する——
……おお! うまく入った!
これは、移動後のワイン樽のイメージをしっかり持てたから、うまくいったのかもしれない。
なんにしても、しっかりイメージすることが大事なようだ。
この検証によって、『波動収納』の中で、容器に移すことも可能だということがはっきりした。
やはり『波動収納』はすごい! 可能性が広がる。
まだまだ発見できていない機能もありそうだ。
今後、少しずつでも検証していこう!
それにしても……このスキルが活用できたお陰で、ギルド長からの難題が一瞬で解決した。
ただ俺の『固有スキル』の話はしたくないから、『フェアリー商会』の人手を使って、人海戦術で取り出したという話にして、ある程度時間を置いてから、『魔芯核』を渡すことにしよう。
◇
俺は、再び『冒険者ギルド』に戻ってきた。
そしてギルド長に、やはり人海戦術でコツコツと『魔芯核』を取り出すしかないと伝え、人手は俺の方で手配するので提出期限を教えて欲しいという話をした。
ギルド長が、再び申し訳なさそうな顔をしていた。
ギルド長は、人手の分も換算して『魔芯核』の買取代金を上乗せすると言ってくれた。
まぁ実際は、俺のスキルでやってしまうので人手はかからないから、上乗せしてもらう必要はないんだけどね。
ただスキルの事は秘密だから、「ありがとうございます」とお礼を言いつつ、「期待しています」と茶目っ気を出しておいた。
これから納める『魔芯核』の代金だけで、かなりの金額になりそうだ。
特にキングの『魔芯核』は大きいだろうから、いくらになるか楽しみである。
代金の半分は、今回活躍してくれた仲間たちに分けて、残りの半分はクランの運営資金にでもしよう。
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