1020.魔物の討伐数と、取り分。
「そうじゃ、忘れるところじゃった! 昨日お前さんが倒してくれた魔物の件で、打ち合わせをせねばならんのじゃ」
ギルド長が、おでこを軽くポンと叩いた。
クランの話も終わって、退出しようとしていたのだが、まだ帰れないようだ。
「はい。どのような件でしょう?」
「倒した魔物の総数は、昨日お前さんが伯爵に報告をあげてくれた数字とギルドで回収した数字で確定したのじゃが、打ち合わせをせねばならぬのは、その『魔芯核』についてじゃ。……まぁその前に、改めて確定の数字を伝えておく……」
ギルド長はそう言って、討伐した魔物の内訳を教えてくれた。
それによると……
まず、南区の外壁に現れた魔物は、猪魔物が百七頭とそのキング、それとバッファロー魔物が百六十八頭とそのキングだ。
このうち猪魔物百七頭とバッファロー魔物五十頭はギルドにある魔法の宝箱で回収しているのだ。
残りは、俺が回収している。
猪魔物百七頭については、四十七頭が衛兵と先行していた冒険者たちが倒したものとカウントされ、残りの六十頭が俺が倒したとカウントされたとのことだ。
もちろんキングボアも俺が倒したとカウントされている。
バッファロー魔物百六十八頭のうち、三分の一の五十六頭が衛兵と冒険者で倒したとカウントされ、残りの百十二頭が俺が倒したとカウントされたとのことだ。
もちろんキングバッファローについても、俺が倒したカウントだ。
最初は、このカウントについての説明がいまいちよくわからなかったが、俺が倒したとカウントされたものについては、俺の取り分となるとのことだった。
すなわち『魔芯核』や素材の売却で、大金が手に入ることを意味している。
中区でニアたちが倒した鶏魔物は、合計で百八十九体になる。
これについては、ほとんど俺の仲間たちが倒したのだが、後から駆けつけてくれた冒険者たちも何体か倒していたようだ。
判断が難しかったようだが、衛兵と冒険者で倒した数を三十とカウントしたそうだ。
それによって残りの百五十九体は、俺の仲間たちが倒したカウントになり、俺のカウントということになった。
もちろんキングチキンも、公式にはアイスティルさんが倒したことになっているので、俺の仲間ということで俺のカウントとなった。
実際に倒したのは、リリイとチャッピーだが、表向きはアイスティルさんが倒したことになっているのだ。
北区に現れたワニ魔物は百三十九体で、衛兵と冒険者で倒したとカウントされた数は六十九体とのことだ。
この中のほとんどは、副ギルド長のハートリエルさんが倒したんだと思うけどね。
俺たちが倒したカウントは、残りの七十体ということになる。
それからキングクロコダイルも、もちろん俺が倒したことになっている。
まず最初にギルド長からお願いされたのは、素材や肉の買取については、衛兵や冒険者が倒したものを優先したいので、俺の取り分については、買取を遅らせてほしいということだった。
俺が特別な魔法カバンを持っていて、収納しておけることを見越してのお願いのようだ。
一気にはギルドでも捌き切れないので、当然だと思う。
相場が崩れても、もったいないしね。
俺は、もちろん快く了承した。
『波動収納』にしまっておけば、鮮度が落ちることはないし、換金するのはいつでも良いのだ。
そしてまた……俺の『波動収納』に大量の魔物の死骸がストックされてしまった。
今まで倒した大量の魔物といい……まさにデッドストックだ。
死骸のストックだけに、言い得て妙だが。
俺の取り分じゃないもので、俺が収納している魔物については、この後引き渡すことにした。
ギルドの持っている魔法の宝箱に入るだけ入れてしまって、後は臨時に冒険者を雇って、解体作業をやってしまうとのことだ。
ギルド長の本題は、ここからだった。
「今回の魔物の襲撃については、当然のことながら国に報告を上げなければならないのじゃ。
討伐した魔物の数についても報告するわけじゃが、その『魔芯核』については、原則ギルドで買い取り、一定数を国に納めることになっている。
魔物素材の買取を待ってくれと言っておいて、言いづらいのじゃが……『魔芯核』だけは、早めに全量確保しておかないとまずいのじゃ」
「そうなんですか……」
「本来であれば、迷宮内の魔物では無いから、『冒険者ギルド』が絶対に買い取らなければならないと言うことにはならないのじゃが、これほどの事件じゃから……『魔芯核』を買い取っていないという報告は、許されんはずじゃ。それこそ下手したら、お前さんが難癖をつけられるかも知れん……」
「なるほど。難癖をつけられるのは避けたいですね。ちなみに……迷宮の外の魔物を討伐した場合は、普通はどうしているんですか?」
「この迷宮都市では、みんな『冒険者ギルド』に持ってくるのう。
他の市町では、役所で買い取っているから、役所に持ち込んで換金するのじゃ。
もちろん迷宮都市の役所でも『魔芯核』の買取を行っているが、みんな『冒険者ギルド』に持ってくるのじゃよ。魔物の素材や肉の買取などもまとめてできるからのう」
「そうですか。いずれにしろ、今回討伐した魔物の『魔芯核』については、早い段階で『冒険者ギルド』に納めておかないとまずいんですね」
「そうなのじゃ。おぬしの取り分で、しばらく魔法カバンにストックしてもらう魔物の死骸についても、『魔芯核』だけは取り出す作業をしたいのじゃが……何かうまい手立てはないかのう?」
「………やはりコツコツ取り出すしかないですよね」
一応考えてみたが、すぐにはいい手段は思い浮かばない。
「もちろん、数が数だけにある程度時間がかかっても構わないのじゃが、効率よくできる方法がないか考えて欲しいのじゃよ」
「分りました。一時的に私の『フェアリー商会』の人手を使って、『魔芯核』だけを取り出すことも考えてみます」
「無理を言ってすまんが、よろしく頼む」
すまなそうな顔をしたギルド長に、俺は苦笑いで返し、ギルド長室を後にした。
◇
俺は一旦ツリーハウス屋敷に戻り、先ほどギルド長から頼まれたことについて、何か方法がないか自問している。
何かスキルを使って、効率よく『魔芯核』を取り出す方法は無いだろうか?
そうだ! こんな時は……困った時のナビー頼み!
久々にナビーにアイディアを借りよう!
俺の『自問自答』スキル『ナビゲーター』コマンドのナビーに、早速念話を入れた。
ナビーは、今は顕現体となって、『フェアリー商会』本部でサーヤ達と打ち合わせをしているところだった。
(実は…… 一つ、前から考えていたことがあります)
ナビーは、開口一番そう言った。
俺の分身ともいえるナビーは、俺に起きている事は、リアルタイムで把握しているので、話が早い。
そして、なんとナビーにはアイデアがあるらしい。
さすがナビーさん、頼れるお方!
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