995.またもや、キング!?
俺は、感覚共有しているスズメの『
……すごい数だ。
倒されているものも結構いるが、まだ百体以上も残っている。
レベル30程度とは言え、体がデカくて鎧のような皮膚だから、致命傷を与えるのに時間がかかる……。
ここの戦力では、かなり厳しいだろう。
外壁を登り、乗り上げて来たワニ魔物を何とか掃討した衛兵と冒険者たちが、ふたたび外壁の下のワニ魔物に矢を射っている。
だが、普通の矢では、なかなか致命傷を与えられないようだ。
まともに倒せているのは、ハートリエルさんだけと言っていいだろう。
やはり、彼女の持っている弓矢は強力だ。
そして、腕前が凄い。
正確な射出で、ワニ魔物の脳天を捉えている。
彼女の矢筒には、高性能の矢が二十本ぐらい入っていて、全て射ち尽くすと、魔法装置を作動させて回収しているようだ。
背負っている矢筒が、カートリッジのような独特の形をしていて、かなり大きい。
おそらく……矢が入る場所が一本づつ区切られているのだろう。
自動回収された矢が、そこに綺麗に収まっていく。
矢筒も弓矢と同様に、青い輝きを放っているので、セットの武装なのは間違いないだろう。
破壊された門からこれ以上中に入らないように、近づくワニ魔物を射抜いている。
多少取りこぼしがあっても、中にはブルールさんがいるから対処できるだろう。
この感じなら……これ以上の損害は出さずに掃討できそうだ。
そう思った時だ——
遠くから、かすかな振動が伝わってくる。
土煙も上がっている。
嫌な予感が……
俺は、スズメの『
でかい!
嫌な予感的中だ……。
ワニ魔物の超デカい奴が、土煙を上げながら走って来ている。
『鑑定』すると……奴はキングだった。
『種族』が『イビル・キングクロコダイル』となっている。
レベルは57もある。
とにかく巨大だ。
体長が三十メートルくらいあり、体高も五メートル以上ありそうだ。
こんなのが壁に突撃したら、ひとたまりもない。
そしてハートリエルさん一人で倒すのは、かなり大変だと思う。
ほぼ同レベルと言っても、大きさが違いすぎるからね。
超強力な武器でもない限り、苦戦は免れないだろう。
彼女が使っている魔法の弓が、どのぐらい強力なのかわからないが……かなり厳しい状況だろう。
俺は、状況を観察しながら走り続けていて、北区に入ったところだ。
このまま一気に、戦場まで駆け抜けよう!
『
ワニ魔物のキングは、俺が倒すことにした。
早く倒してしまわないと、大きな被害を出す可能性があるからね。
ブルールさん達が戦っている北門前広場を一瞬で通り過ぎ、門の破壊された穴から外に出る。
普段使いの剣『青鋼剣 インパルス』を抜いて、障害になるワニ魔物を斬り倒しながら、一直線にキングのところに向かう。
もうすでに巨大なワニ魔物が近づいているのは、外壁の上の衛兵や冒険者も気づいているだろう。
すごい土煙が立っているし、地面から伝わる振動がすごい。
こんなドデカい魔物を見たら絶望するしかないが、俺にとっては、ただデカいだけの魔物だ。
——サァッ
——ザァァァァァァァァァァァァッ
——ドズンッ、ゴオォォォォォォォォォォォォッ
俺は、走っている勢いそのままに真正面からスライディングしてキングクロコダイルの下を通過した。
もちろん、スライディングが目的ではない。
スライディングしながら、剣で斬り裂いてやったのだ。
縦真っ二つと言うわけにはいかなかったが、体の厚みの半分ぐらいまでには、剣の先から伸ばした風の刃が到達したと思う。
倒すには十分な斬り付けだったはずだ。
現に俺がスライディングで通り抜けた後に、大きな音とともにすごい土煙が巻き起こっている。
土煙でよく見えないが、キングクロコダイルは体を斬り裂かれ、そのまま突っ伏すように地面を削ったみたいだ。
……土煙が収まってきた。
……巨大な塊が、大地を削りながらめり込んでいる。
無事に倒せたようだ。
ふう……大きな脅威は取り除けた。
間に合ってよかった……奴が外壁に突っ込んでいたら、大変なことだった。
振り返ると……ブルールさんとパトとラッシュたちが、門の外に出てワニ魔物と戦っている。
俺が通り過ぎるのを察知し、心配して出てきてくれたのか……?
……まだワニ魔物の数が多くて、微妙に囲まれた感じになっている。
まずいな……残るワニ魔物も倒してしまわないと。
「こっちだ! 俺にかかってこい!」
俺は『挑発』スキルを発動した。
効果抜群だ!
ブルールさん達を取り囲むようにしていたワニ魔物たちが、一斉に俺のほうに向かって来た。
そのワニ魔物たちを追撃するように、ブルールさん達が攻撃を仕掛けている。
そして、ハートリエルさんが外壁から飛び降りて、走りながら矢を射っている。
心配して応援に来てくれたのだろうか?
まだ五十体くらい残っているから、普通は囲まれたらひとたまりもないからね。
おおっと、そんな考察をしている場合ではなかった。
すごい勢いで、ワニ魔物が襲ってくる。
俺は、向かって来るワニ魔物を踏み台にしながら、縦横無尽に宙を舞って、次々に首を切り落としていった。
硬い外皮のワニ魔物の首をスパスパ落としていくのは、ちょっとやり過ぎかもしれないが、もう面倒くさくなったので倒してしまいたいのだ。
何か言われても、インパルスの性能と言うことにしておけば、いいだろう。
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