957.古き古き、英雄譚。

 『土の大精霊 ノーム』のノンちゃんに、『使い人』を保護するように改めて言われた。


 ノンちゃんの話では、古の英雄譚『十二人の使い人』に出てくる十二の『使い人』スキルが、全てこの時代に揃う可能性が出てきたとのことだった。

 これらのスキルは、核となる『使い人』スキルとノンちゃんが言っていたが、全て揃って結束することができれば悪魔を倒す強力な力になるようだ。

 だが悪魔に取り込まれ、『使い人』同士で争うようなことになると、大変なことになるらしい。


 そんなこともあり、俺は、以前吟遊詩人の語りとして聞いた『十二人の使い人』の話を振り返ってみた。


 『正義の爪痕』に囚われて人格を書き換えられ、手駒にされていた吟遊詩人のジョニーさんが語った内容だ。

 『死霊使い』スキルの所持者でもあったわけで、リリイのスキルの前の所持者ということでもある。


 古の英雄譚『十二人の使い人』の物語は……端的に言うと……古き古き伝説の時代に、大魔王から世界を救った英雄たちの勇気と愛の物語、そして悲しみの物語だった。


 この物語を要約すると……


 今から約二万七千年前、大魔王が世界を蹂躙し人々は滅亡の危機に貧していた。


 その時代は、最初の魔法機械文明『マシマグナ帝国』の始まりよりも、二千年も前の時代ということになる。


 ちなみに……『マシマグナ帝国』は、二万五千年前に始まり一万年続いたと言われている。

 『マシマグナ第二帝国』は、一万二千年前に始まり千年で滅びているらしい。

 『マシマグナ第三帝国』は、八千年前に始まり千年で滅びたようだ。

 『マシマグナ第四帝国』は、四千年前に始まり千年で滅びている。


 『十二人の使い人』の話は、改めて考えると気が遠くなるような古い時代の話であり、今までに大きな文明が四つも滅びているのに、なぜか語り継がれている不思議な英雄譚でもあるのだ。


 特別なスキルに導かれた十二人の英雄が、対立や苦難を乗り越え、最終的に大魔王を倒し世界を救うという壮大なストーリーであり、語り継がれているのは、何か……上位存在の意図的なものを感じる。

 そうとでも考えないと、そんな古い時代のことが語り継がれていることが信じられないのだ。

 まぁ全くの私見だけどね。


 それはさておき……物語は……その当時の各国の思惑が絡み陰謀策謀が巡らされ、『使い人』は三つのグループに分かれてしまうのだ。


 そして二つのグループは反目し合い、対立が激化し戦闘を繰り広げるほどになる。


 『火使い』をリーダーとするグループと、『風使い』をリーダーとするグループで対立するのだ。


 『火使い』の仲間は、『土使い』『猛獣使い』『虫使い』。


 『風使い』の仲間は、『水使い』『蛇使い』『死霊使い』。


 これとは距離を置き、静観していたのが、『人形使い』『鳥使い』『石使い』『植物使い』だったらしい。


 『使い人』同士のバトルが、かなり激アツで、吟遊詩人としての語りもかなり力が入っていた。


 特に『虫使い』対『蛇使い』の話は熱い展開で、『虫使い』が人気があるキャラクターというのが納得できる内容だった。


 “虫対蛇”なので虫が圧倒的に不利だが、最終的に虫たちが力を合わせて勝利するのだ。

 このとき大活躍したのが、ダンゴムシ型虫馬ちゅうまの『ギガボール』だったようだ。


 『虫使い』のロネちゃんのところにいる『ギガボール』のだん吉のご先祖様だろう。


 ちなみに『虫使い』のロネちゃんと『蛇使い』のギュリちゃんは、大の仲良しになっているので、この二人が戦うということは無さそうだから、一安心でもある。


 英雄譚の中では、チャッピーに発現した『猛獣使い』とリリイに発現した『死霊使い』も戦っている。

 単体では『猛獣使い』の方が強いが、『死霊使い』は無限といえるほどにアンデッドを呼び出すことができる。

 対象を殺したり、戦場で死者が出ると、アンデッド化させて使役することができるのだ。

 『猛獣使い』の使役していた動物たちも倒されると、アンデッドとして敵になってしまっていた。

 激しい戦いが繰り広げられ、最終的に『死霊使い』の勝利で終わっていた。

 吟遊詩人のジョニーさんは、『使い人』の中で『死霊使い』が、個別能力では最強ではないかと歌い上げていた。

 まぁこの二つのスキルも、リリイとチャッピーのスキルだから、戦うことはないだろう。こちらも、一安心だ。


 主役扱いの『火使い』は女性で、敵対する準主役扱いの『風使い』の男性と最終的に恋に落ちるという恋愛要素も入っていた。


 『火使い』は『水使い』と戦い勝利し、『風使い』は『土使い』を破るという展開で、両陣営二勝二敗となる。


 激しい戦いだったので、敗れた者は瀕死の状態に陥る。


 そこに現れた『植物使い』が治療して、なんとか一命を取り止めるという展開だった。


 そして独自行動をとっていた『人形使い』『鳥使い』『石使い』が、発見した『絆のトーテム』というアイテムを持って現れる。


 やっと十二人揃った『使い人』たちは、『絆のトーテム』から現れた精霊によって諭され、遂に一つのチームになるのだった。


 『風使い』率いるチームのメンバーは、実は大魔王による見えないくびきに繋がれている状態だったとのことだった。

 それが『絆のトーテム』の精霊の力で、浄化されたのだ。


 『風使い』たちは、自分を失っているわけではないが、本当の自分ではない状態に陥っていたらしい。

 無自覚に誘導される一種の洗脳のようなものだったようだ。


 最終的に『十二人の使い人』は『絆のトーテム』の力を借り、『使い人』の力を解放し大魔王を倒したという終焉だった。


 だが最後の倒す場面については、あまり詳しく伝わっていないらしく、十分には語られていなかった。


 ちなみに…… メインキャラではないのだが、ジョージの『魚使い』のキャラクターが登場していて、とても面白いキャラだった。


 虎耳の女の子ラムルちゃんに発現した『雷使い』は登場していないし、俺が持っていて全然使えていない『精霊使い』や『言霊使い』も、物語には登場していない。


 この英雄譚に登場している十二人の『使い人』が、核となる『使い人』ということらしいが……普通は一つの時代に揃うことはないようだ。

 ノンちゃんの話では、この英雄譚の時代以降、今まで揃ったことはないらしい。

 『使い人』スキルは、意志を持ったスキルで、スキル精霊が宿主を選ぶ。

 それ故に、英雄譚の時代以降、今日に至るまで、何回かそれぞれの『使い人』が出現しているようだが、揃ったことはないらしい。


 だが、ノンちゃんも雲行きが怪しくなってきたと言っている通り……なんとなく十二人揃いそうな気がしないでもない……。


 現に、俺のところに、七人もいるわけだから。


 俺的には揃わないほうがいいと思っているが……“魔の時代”という特別な時代に入っているみたいだし……揃う可能性を考えて、できるだけ情報をつかんで、保護するようにしようと思う。


 十二人のうち残るは…… 『火使い』『風使い』『水使い』『人形使い』『鳥使い』だ。


 まぁ『使い人』スキルは、これ以外にも存在しているから、保護すべき『使い人』はもっと多いかもしれないけどね。



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