956.大精霊様からの、ギフト。
『ドワーフ』のミネちゃんが、『絆』メンバーになってくれたことによって、俺や仲間たちも大幅にパワーアップできた。
ミネちゃんの持っていた『通常スキル』は、かなり役立つものが多かったのだ。
そして今まで以上に、魔法道具作りなどで力になってくれるはずである。
ちなみに、ミネちゃんのレベルはまだ30なので、伸びしろもまだまだあるのだ。
ミネちゃんは、仲良しである人族の天才ゲンバイン公爵家長女で王立研究所の上級研究員のドロシーちゃんに、追いつきたいという気持ちが強いようだ。
ドロシーちゃんは、『ゲンブの巫女』になり大幅にレベルアップして、レベル46になっているのだ。
だが、一気にレベルを上げるよりは、やはり1レベルずつあげた方が、最終的にはメリットがある。
スキルが発現しやすいのがレベルが上がる時であり、その貴重な機会を一気に消費するよりは、1レベルずつあげたほうが機会を数多く得られるのだ。
俺はそんな話を改めてミネちゃんにして、焦らずにゆっくりレベルを上げていこうと説得した。
本人の反応は、ちょっと微妙な感じだったけどね。
やはり、早く追いつきたいみたいだ。
まぁ仲良しのリリイとチャッピーもレベルが高いから、追いつきたいと思うのは当然と言えば当然なんだけどね。
場合によっては、1レベルずつ上げるにしても、そのスパンを短くして三日に1レベル上げるとかにしても、いいかもしれない。
ただ本来は、レベルを1つ上げるまでの間に、何かを研鑽する時間があって、その研鑽によるスキル発現を期待するんだけどね。
研鑽する時間があまりなくて、単にレベルを1つずつ上げていくだけだと、レベルを一気に上げるのとそれほどは変わらない感じになってしまうのである。
まぁそれでも、一気にあげちゃうよりはいいと思うが。
「話はまだいろいろあるのじゃが、忘れる前に一つやっておかねばならぬことがあるのじゃ。ニアちゃんについてなのじゃ!」
『土の大精霊 ノーム』のノンちゃんが、そう言ってニアの方を見た。
「なに!? あたし?」
ニアが少し嬉しそうに、ぐるりと宙を旋回した。
「そうなのじゃ。前にニアちゃんと約束していたことがあるのじゃ。ニアちゃんが『クイーンピクシー』にクラスチェンジするときには立ち会って、特別なプレゼントをすると言っておったのじゃよ。今回、戦いの最中で立ち会うことができなかったのじゃが、今からプレゼントをするのじゃ!」
「ほんとに! 嬉しい! ありがとう、ノンちゃん!」
ニアが嬉しそうに、クルッと宙を三回転した。
「ニアちゃん、ちょっと近くに来て欲しいのじゃ」
「オッケー」
そう言って、ニアはノンちゃんの前に止まった。
ノンちゃんの右手から光が放射され、ニアが優しい光に包まれた。
その光は、徐々にニアの体に吸収され消えてしまった。
確認のため、ニアに『波動鑑定』をかけると……『称号』の欄に『大精霊ノームの加護』が追加されていた。
それから……『通常スキル』が一つ発現したようだ。
『土魔法——
『
戦闘陣地や戦闘用の城や砦が、土魔法で作れるというスキルのようだ。
なんかめっちゃすごそうなスキルだ。
一夜城という言葉があるが……一夜どころか一瞬で城が作れてしまうようだ。
「あとのう……特別にニアちゃんの『クイーンピクシー』としての『種族固有スキル』の『
ノンちゃんは、超ドヤ顔で言った。
しかも……左手を腰に当て、右手を天に突き上げるというニアの“残念ポーズ”とほぼ同じポーズをとっている。
そういえば……最初に会った時も、こんなポーズをしていたっけ……まぁいいけどさ。
「えぇ、ほんと! 凄い! ありがとう、ノンちゃん!」
ニアは大喜びだ。
『
ニアらしいスキルというか……めちゃくちゃなチートスキルなのである。
『ミラクルスロット』は三つあったはずだが、それをノンちゃんが一つ増やしてくれたらしい。
四つ願いがセットできるようになったということのようだ。
めっちゃ凄いんですけど……。
てか……『種族固有スキル』に追加とかできちゃうわけね……さすが大精霊様!
ちなみに……『ミラクルスロット』にセットした願いは、一つ目が『いつでもグリムの下に瞬間的に戻れる』というもので、二つ目が『なりたいときに人型形態になれる』というものだった。
そして三つ目の願いは、内緒ということだったが、今回追加された四つ目の『ミラクルスロット』にセットした願いも「内緒よ……ふふふ」と怪しい笑みを浮かべられてしまった。
今回も背中に寒いもの感じたが……掘り下げたら負けな気がしたので……スルーした。
それにしても……ノンちゃんは、ニアにすごいプレゼントをしてくれた。
本当にありがたい。
「それから……これからの話は、心に留めておいてほしいことなのじゃ。必ずやらなければならないということではないが、できればやってほしいこと、もしくはやったほうがグリム君のためになることなのじゃ。いわゆるフリークエストみたいなもんかのう……ほほほほほ」
ノンちゃんは、今度は俺に向けてそんな話を切り出した。
「はい、心に留めて、できるだけやれるようにします」
「そうじゃのう。そうしておくれ。悪魔を倒すといっても一朝一夕には、いかんじゃろう。特に今回は……大がかりになりそうじゃからのう。だから悪魔を倒す行動をとりながら、同時並行的にやれるタイミングが来たらやるという程度で良いのじゃよ」
「はい、分りました」
「まずは……引き続き『使い人』たちの情報に注意を払い、できるだけ保護してほしいのじゃ。『使い人』スキルは、幼年の者に宿る確率が高いでのう。悪魔の勢力に取り込まれては、大変なのじゃ。古の『使い人大戦』のように敵味方に分かれて戦うような事は、何とか避けて欲しいのじゃ。伝承にあるような核となる十二の『使い人』スキルが、一つの時代に揃うことはもうないと思っていたのじゃが……雲行きが怪しくなってきたからのう。あまり詳しくは言えんのじゃが……もしもこの時代に核となる『使い人』スキルが全て揃い、それを束ねることが出来るなら……古の『使い人大戦』で勝利した時のように、大魔王やそれに与する悪魔供を倒し、長く封印できるかも知れんのう……。まぁこの話は、あまり気にせんでいいがのう……」
ノンちゃんは、神妙な表情で、そんな話をしてくれた。
「分りました。引き続き『使い人』の情報に注意を払い、できるだけ保護するようにします。……『使い人』同士が争うようなことになると大変なことになるが、逆に結集すれば悪魔を倒す大きな力になるということなのでしょうか?」
「そうじゃなぁ、まぁざっくり言うとそういうことなのじゃ」
ノンちゃんに改めて指摘をされて、できるだけ『使い人』の情報を集めて、保護を図ろうと改めて心に誓った。
リリイとチャッピーにも『使い人』スキルが発現したことだし、古の『使い人大戦』のように『使い人』同士が争うような展開には、絶対なって欲しくないからね。
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