955.大食い、万歳!

 『土の大精霊 ノーム』様であるノンちゃんが、突然秘密基地『竜羽基地』に現れた。

 いくつか話をしたいということだった。


 最初に話があったのは、『ドワーフ』のミネちゃんを『絆』メンバーに加えても良いというものだった。


 そして今後は、ミネちゃんの里である『ドワーフ』のノームド氏族と、俺の『絆』メンバーになってくれた『コボルト』のブルールさんの里のカジッド氏族の力を、活かすようにというアドバイスをしてくれた。


 この話を受けて、『コボルト』の里では、俺がうまく使えていないドラゴンの鱗など特殊な素材を使った特別な武器を作れるとブルールさんが申し出てくれた。


 そんなやりとりが一段落したところで、俺は早速、『ドワーフ』のミネちゃんを『絆』メンバーに加えた。


「すごいスキルの数なのです! スキルレベルも10なのです! まるで最高のメニューを、お腹いっぱい食べた気持ちになったのです! この力を活かして、これからもっともっと食べ尽くすのです! 絶対に負けられない戦いが、そこにあるのです!」


 ミネちゃんもやはり『共有スキル』の存在と数、スキルレベルに驚いたようだ。

 それにしても……この膨大な数のスキルを、食べることには活用できないと思うんだけど……。

 いや……一つ一つ吟味したら活用できるスキルもあるのかなあ……?


 ミネちゃんにとっては、どうも絶対に負けられない戦いは、悪魔や魔物との戦いではなくフードファイトのようだ。


 逆に、ほのぼのとしていいけどね。


 それから、やはり念話が繋がることにも感動していた。

 魔法道具を使わなくても、リリイやチャッピーと話ができると喜んでいたのだ。


 ミネちゃんが仲間になったことによって、俺が所持していない『通常スキル』を『波動複写』でコピーすることができ、俺も更にパワーアップすることができた。

 ミネちゃんは、やはり凄いスキルを持っていた。

 俺が喉から手が出るほど欲しいスキルもあったのだ。


 ミネちゃんが持っている『通常スキル』の中で、俺が持っていないものは、五つあった。


 『土魔法——砂塊サンドブロック』は、中級の土魔法で、砂を固めて放出することができるらしい。

 砂の壁を作ったりできるようである。


 『土魔法—— 砂爆風サンドブラスト』は、上級の土魔法で、砂を高威力で発射できるスキルのようだ。

 攻撃はもちろん、素材の研磨などにも使えるらしい。

 俺は元の世界にいた時に、体験工房などでグラスに模様をつけたりしたが、そんな感じのこともできるかもしれない。

 ノンちゃんの話では、土魔法の中でも砂系の魔法は、なかなか発現しにくい魔法らしいので、貴重な魔法を身に付けることができた。


 『粘土細工』スキルは、粘土を使って様々な造形物を作れるようで、陶芸などに活用できそうだ。

 俺的には、粘土系の素材を使ってフィギュア作りなんかもできそうで、ちょっと楽しみだ。

 粘土のように柔らかくて自由に造形が作れて、乾燥すると硬く丈夫になって、長持ちするような素材が何かないかなぁ……。

 イメージ的には……紙粘土のような素材で、完成して乾燥させるとプラスチックみたいな感じになるのがあるといいんだけどなぁ……。

 異世界補正で、そんな夢のような素材がないかなぁ……。

 そんな素材があれば、好きなようにフィギアが作れちゃうんだけどなぁ……。

 ダメだ……妄想が広がってきている……一旦やめておこう。


 『魔法道具作成』スキルは、魔法道具の作成が容易になるというすごいスキルだ。

 このスキルが欲しかった!

 このスキルの力を借りれば、俺でもある程度の魔法道具は作れるはずだ。

 今までも『魔法の巻物』を作ったり、魔法AIを使って犬馬車などを作ったが、このスキルを使えれば、もっと複雑なものも作れるはずだ。

 今から楽しみである。


 『暴飲暴食』スキルは、フードファイターのミネちゃんらしいスキルだ。

 ミネちゃんによれば、最近発現したらしい。

 あれほど食べ続けていたら、そんなスキルも発現しちゃうよね……。


 このスキルは文字通り、暴飲暴食ができるスキルらしい。

 ただ……単に大食いができるということではなく、すごい能力を秘めたスキルだった!


 実は、このスキルの能力に一番驚いた。


 その能力とはなんと……余分な栄養を贅肉とすることなく、『基本ステータス』の『スタミナ力』と『魔力(MP)』に変換できるというものだった。

 スキルレベルが上がると、『身体力(HP)』にも変換できるようになるらしい。

 つまり……食べると治療ができるということである。


 どんなに食べても太らず、かつ『スタミナ力』『魔力(MP)』を高めることができ、最終的には食べることで体が治せるというまさに“医食同源”という感じのスキルなのだ。

 はっきり言って……凄すぎるんですけど。


 密かにそんな感じで驚いていた俺に、ノンちゃんの解説が追い打ちをかけた。


 なんと『スタミナ力』と『魔力(MP)』については、食べた栄養を変換しオーバーチャージができるというのだ。


 最初はオーバーチャージの意味がわからなかったのだが、ノンちゃんが解説してくれた。

 その人のそのレベル時点での規定量の『スタミナ力』『魔力(MP)』を超えて、数値を増やしておけるらしい。

 しかもスキルレベルが10になると、規定値の三倍までチャージできるというのだ。


 実はそこまでの詳しい内容は、『鑑定』で表示される詳細表示には載っていない。

 ノンちゃんが、「特別じゃよ」と言って教えてくれたのだ。

 はっきりとは言っていなかったが……どうも、このスキルの取得にあたって、ノンちゃんが後押ししてくれたっぽい。

 解説に力が入っていたからね。


 それにしても凄い能力だ。

 本来の数値の三倍までチャージできるなんて……。

 特に魔法主体で戦う場合なんか、魔力切れが気になるところだが、三倍までチャージできていたら、かなり有利に戦える。

 ほぼ魔力切れを気にしないで、戦えるのではないだろうか。


 しかも『限界突破ステータス』でただでさえ魔力量が多い俺が、三倍までチャージできたら、すごいことになりそうだ。


 ステータス数値を一時的にアップさせる強化型のスキルはあるわけだが、それは一時的な効果である。

 このスキルは、消費されるまでは常時チャージした状態を維持できるということだから、本当に凄いことだ。


 ヒュドラ肉を食べた時には、『基本ステータス』の中の『身体力(HP)』『魔力(MP)』と『サブステータス』の中の『防御力』『魔法防御力』が、一割くらいアップすることがわかっている。

 これらのステータスが規定値一杯で上限だった場合に、さらに一割アップできるので、これもオーバーチャージしている状態と言えるが、あくまで一時的な効果なのである。

 『暴飲暴食』スキルの場合は、常にアップした状態を維持できるのだ。


 ちなみにこのスキルは、常時発動状態と任意発動状態を選択できるようだ。

 それから、オーバーチャージの限界を超えて食べ続けた場合には、余分な栄養は排出されるらしい。

 つまり大食しても贅肉にはならない……太らないという夢のようなスキルでもあるわけだ。

 スキル名はともかくとして、太らないスキルというのは……みんな欲しいのではないだろうか。

 ただノンちゃんによれば、その人の元々の体型のようなものを維持するらしいので、元々ぽっちゃりとした人はその状態が維持されるらしい。

 つまり……“現状以上は太らない”ということらしいのだ。

 すでに太っている人がこのスキルを得ても、このスキルの力だけで、スリムになるということはないようだ。


 ある程度自分のイメージする体型も標準になるらしい。

 だからムキムキマッチョの人が、細マッチョになるという事もないようだ。


 それにしても、凄すぎるスキルだ。

 ミネちゃんの大食いは……偉大だった!

 ありがとう、ミネちゃん。

 大食い万歳!



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