953.揃いつつある、使い人スキル。

 リリイが身に付けた『死霊使い』スキルは、『十二人の使い人』という英雄譚の語りの中では、最強の『使い人』との呼び声もあるスキルだ。


 戦場で死んだ人や魔物などを即座にアンデッド化して、使役することができるとされている。

 無尽蔵と言える程戦力が補給できるから、最強と目されているようだ。


 アンデッドも一応、魔物に分類されている。

 そして普通は、魔物をテイムしたり使役することはできない。


 浄化された状態すなわち『浄魔』の状態になれば、テイムをすることも可能で、実際俺の魔物型の仲間たちは、『浄魔』の状態なのだ。


 だが、死霊型のアンデッドの場合、浄化されるということは、倒された状態になるということである。

 だからスケルトンやゾンビや怨霊の『浄魔』というのは、理論上はありえないのではないかと思う。


 そんな本来戦力として組み込めないはずの死霊型のアンデッドを、戦力にできるのが『死霊使い』スキルの一番の特徴ではないだろうか。

 浄化されていない状態のスケルトンなどをそのまま使役できてしまうわけだからね。


 魔物は、通常、冷静な判断能力がない状態であるために、テイムなどを使って使役することはできないとされているが、その例外と言えるだろう。


 『死霊使い』スキルが特殊なのか……魔物の中に分類されているアンデッドが特殊なのか……いずれにしろ極めて特別なことである。


 『魚使い』スキルを持っているジョージでも、魚系の魔物を『魚使い』スキルを使って、直接使役することはできない。

 『正義の爪痕』が作ったジョージの血が入っている『操魚の矢』を打ち込むことで、仲間にすることができているのだ。

 このときも、結果として魚の魔物は、浄化された『浄魔』というかたちになっている。

 魔物のまま仲間にして、使役しているわけではないのだ。


 『死霊使い』がアンデッドを使役する場合は、当然浄化されていない状態のまま使役しているわけである。


 ただこの事は、もしかしたら……『魅了』している状態に近いのかもしれない。

『魅了』型のスキルの中には、魔物を魅了し一時的に従わせることができるスキルがある。

 『死霊使い』の能力は、どちらかと言うと、その系統に近い能力なのかもしれない。


 まぁそんなことも含めて、時間を見つけてリリイと一緒に、検証していきたいと思っている。


 チャッピーの『猛獣使い』スキルについても、どう使うのが効果的なのかは検証しなければならないだろう。


 まぁそれを言ってしまえば、今まで仲間にしている子たちの『使い人』スキルもみんな同じではあるんだけどね。


 獣型の魔物を使役することができるなら、かなり強力と言えるが、それはできないはずである。

 スキルレベル10になれば、もしかしたら可能性はあるかもしれないが、このレアスキルをスキルレベル10にすることは、実際上はかなり難しい。


 『使い人』スキルは『通常スキル』ではあるがレアスキルで、しかも意思を持った特別なスキルなので、俺の『波動複写』でコピーすることができないのだ。


 それゆえに、『固有スキル』の『ポイントカード』を使って、スキルレベルを一気に10まで上げるというチート技も使えないのである。


 スキルを持っている者が、地道に努力するしかスキルレベルを上げる方法がないのだ。

 まぁそれが、スキルレベルを上げる普通の状態ということではあるんだけどね。


 今のところスキルの力だけで、魔物を使役する事は望み薄である。


 『魚使い』のジョージや『蛇使い』のギュリちゃんは、『正義の爪痕』が作った『操魚の矢』や『操蛇の矢』があるので、それを打ち込むことと、『使い人』スキルを併用することで、魔物を『浄魔』にして仲間にすることができるのである。


 今のところ意図的に魔物を戦力として組み込むには、この『操魚の矢』と『操蛇の矢』を使うしかない。


 『虫使い』のロネちゃんや『猛獣使い』となったチャッピーの血を使って、同じような矢を作れば、虫系魔物や獣系魔物も仲間にできる可能性はある。


 『正義の爪痕』から押収した資料などを解析し、その技術を再現して矢を作ることは、可能かもしれない。

 ただそのためには、二人から血をもらわないといけないので、俺的にはあまりやりたくない。

 もっとも、一度だけ採血させてもらって、実物を一つ作れれば、『波動複写』でコピーできるから、そんなに負担にはならないんだけどね。

 なんとなく気が済まないのだ。


 今のところ、無理矢理魔物を戦力として組み込む必要はないというのもあるしね。

 ただ、今後の状況次第では必要性が出てくる場合もあるから、研究だけはしておいた方がいいかもしれないけどね。


 また、すべての使い人には、『使い魔ファミリア』というかたちで、サポートをする特別な生物がいるようなので、その生物が現れてくれるだけで、十分な戦力とも言える。


 まぁいずれにしろ、『使い人』についても、もう少し検証する必要がありそうだ。


 英雄譚に出てくる『十二人の使い人』のうち、七人が俺の仲間になった。


 『虫使い』『蛇使い』『石使い』『土使い』『植物使い』『死霊使い』『猛獣使い』だ。


 『虫使い』のロネちゃんは、『フェアリー亭』をやっているトルコーネさんの娘で、家の付喪神『付喪神 スピリット・ハウス』のナーナの本来の魂の転生した姿でもある。

 赤髪の元気な十歳の女の子だ。


 『蛇使い』のギュリちゃんは、十二歳ながらしっかりした子だ。

 『正義の爪痕』に捕まって、一年以上も実験台にされ過酷な日々を過ごしていた子で、もともとは『アポロニア公国』の出身とのことだった。


 『石使い』の少女カーラちゃんは、狼亜人で『領都ピグシード』の奴隷商館から保護した子だ。

  紺色の髪が印象的な十三歳で、両親をピグシード辺境伯領を襲った悪魔の襲撃事件で失っている。


 『土使い』のエリンさんは二十歳で、茶髪ロングのスラットした知的な感じの美人だ。

 『イシード市』の出身で、悪魔の襲撃事件の時に『土使い』スキルが発現し生き残ったものの、その後『正義の爪痕』に捕まり、家族を人質に取られ無理矢理協力させられていた人だ。

 元は文官だったのだが、今は『フェアリー商会』の幹部として頑張ってくれている。


 『植物使い』のデイジーちゃんは八歳で、ヘルシング伯爵領『サングの街』で、『闇影の義人団』のリーダーでもあるスカイさんと一緒に暮らしている。

 スカイさんは『フェアリー商会』の社員でもあり、ヘルシング伯爵領統括支部の幹部でもあるのだ。


 この子たちは、みんなレベル33まで上がっている。

 自力をつけるために、じっくり育成しているが、毎日大森林に集まって訓練をしているので、もう33までは上がってしまったのだ。


 それから英雄譚の中では、サブキャラ扱いだが、『魚使い』のジョージもいる。

 また英雄譚には登場しない『使い人』だが、最近スキルが発現し仲間になった『雷使い』の虎耳の女の子、ラムルちゃん六歳もいる。


 この二人を入れると、『使い人』スキルを持つ者が九人いることになる。


 ちなみに俺も、『精霊使い』と『言霊使い』というスキルを持っているが、相変わらず何も発動する様子は無い……トホホ。



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