930.足は無いけど、踏み潰し……。
今度は、ビャクライン一家チームが成果を報告してくれた。
シスコン三兄弟ことイツガくん、ソウガくん、サンガくんは、凄く頑張ったようだ。
父親と同じ白髪の長男イツガくん十三歳は、レベル25になったと報告してくれた。
元のレベルは18だったので、7上がったことになる。
本人はもっとレベルを上げたかったようだが、ビャクライン公爵が止めたらしい。
妹のハナシルリちゃんがレベル39ということもあり、イツガくんは少し不満顔だ。
同じ歳のピグシード辺境伯家の長女ソフィアちゃんやゲンバイン公爵家長女のドロシーちゃんが、それぞれレベル30とレベル46ということもあるし、イツガくんのはやる気持ちもわからなくはない。
だが一気にレベルを上げてしまうよりも、じっくり鍛錬しながら1レベルずつあげた方が、スキルを取得する可能性も高くなるので、あせらず頑張ったほうが本人のためになるはずだ。
なにも今日一日で追いつく必要はないわけだから、鍛錬を積みながら本当の強さを身に付けた方がいいという話を、イツガくんにしてあげた。
そんな話を何とか消化してくれたようで、幾分晴れやかな顔になった。
そして、俺に尊敬の眼差しを向けてくれていた。
明るい赤髪の次男ソウガくんは、レベル22になったとのことだ。
十一歳としては、普通ではありえないレベルである。
とても嬉しそうで、晴れやかな顔をしている。
ソウガくんには、焦りのようなものはあまりないようだ。
銀髪の三男サンガくんは、レベル18になったとのことだ。
これまた嬉しそうで、晴れやかな顔をしている。
ピグシード辺境伯家次女タリアちゃんやリリイとチャッピーと同じ八歳児である。
八歳児でレベル18は、スーパー八歳児と言えるのだが、リリイたちが超スーパー八歳児すぎて、霞んでしまう感じだ。
少し可哀想だが、まだまだこれからなので、サンガくんにもあせらず頑張るように伝えた。
まぁ本人は、あまり気にしていないようだったけどね。
人と比べる以前に、自分が今までよりも強くなったことが、純粋に嬉しいようだ。
三人とも、いくつかスキルも身に付けた。
特筆すべきは、三人揃って『コウリュウド式伝承武術』スキルが発現したことだ。
普段から訓練している成果が出たのだろう。
これには、ビャクライン公爵もかなり嬉しそうだった。
ハナシルリちゃんのお供になっているカタツムリ型虫馬『デンデン』のデンコと『サーベルタイガー』の子供ミケは、揃ってレベル25になった。
この子たちも結構なパワーレベリングをしてしまったが、協力してくれたビャクライン公爵もハナシルリちゃんの護衛役になるかもしれないと考え、レベル25までは止めなかったようだ。
この二体は、俺の『絆』メンバーになっているので、『共有スキル』が使えるから元々スキルは豊富なのだが、今回『共有スキル』にないスキルを発現してくれた。
非常にありがたい。
デンコが『踏み潰し』スキルを取得してくれたのだ。
『踏み潰し』は普通に考えると、足で踏み潰すということだと思うので、足のないカタツムリ型虫馬のデンコが身に付けたというのは微妙な気もする。
だが、足だけではなく体全体でプレスして、踏み潰すことも含んだスキルのようだ。
それに、確かカタツムリは体全体が足の役割をしていて、“腹足”と呼ばれていたと思う。
そういう意味では、デンコの場合、体で踏み潰しても足で踏み潰していると言っていいのかもしれない。
シンオベロン選抜チームのみんなも頑張ってくれたようだ。
『フェアリー商会』の幹部・準幹部の中でサーヤが選抜したメンバーたちは、レベル30まで上げたとのことだ。
これは、事前に打ち合わせしていた通りだ。
みんな日々の激務のかいあってか、いろいろなスキルを取得してくれた。
ただ俺の持っていない新たなスキルはなかった。
そしてこのチームに特別参加しているメンバーたちも、頑張ってくれた。
まずは、先日、『闇オークション』で保護した狼亜人の親子ベオさん三十八歳と娘のセレンちゃん八歳だ。
『フェアリー商会』の幹部候補ではあるが、『アルテミナ公国』の出身で、生き別れた奥さんともう一人の娘さんを探しに行きたいという希望を持っている。
そのためにも強くなりたいと決意していたベオさんは、レベル35になり、娘のセレンちゃんはレベル20になった。
狼の亜人だけあって、運動センスがすごく、今後鍛えるとさらに強くなりそうだとサーヤが言っていた。
それから、ヘルシング伯爵領『サングの街』の『闇影の義人団』のメンバーも参加している。
『フェアリー商会』のスタッフでもあるスカイさん、『商人ギルド』のギルド長のレオさん、『商人ギルド』の受付嬢ジェマさん、イカ焼き屋台の店主マックさん、『アシアラ商会』の会頭のアシアさん、衛兵長のフィルさんの六人だ。
元衛兵であるスカイさんと衛兵長のフィルさんは、レベル40まで、他のみんなはレベル35まで上げてもらった。
スカイさんは最初に俺たちと出会った時は、レベル25だった。
その後『フェアリー商会』の仕事もしながら、鍛錬も続けていて地道にレベルも上がっていたようだが、今回一気に40まで上がり、すごく嬉しいようだ。
義人団といっても、全員が戦闘担当ではないので、『アシアラ商会』のアシアさんなどは、かなりヘトヘトになっていた。
五十六歳なので無理もない。
無理をする必要はないと一応止めたのだが、本人はやる気になっていたんだよね。
あとは、セイバーン公爵領『セイセイの街』とその付属の特別村『コロシアム村』の『フェアリー商会』の幹部スタッフになってくれている元『花色行商団』の大人女子のメンバーと亜人の子供たち、『総合教会』の孤児院の子供たちも頑張ってくれた。
まぁ孤児院の子供たちには、本当に小さな子もいるから全員参加ではないけどね。
大人女子メンバーは、皆レベル30になっている。
亜人の子供たちと孤児院の子供たちは、レベル18まで上げてもらった。
やはり今後の成長を考えて、子供たちは低めに抑えてもらったのだ。
それでも子供たちは、皆晴れ晴れとした顔をして、すごく喜んでいる。
前から強くなりたいと言っていたので、本当に嬉しいようだ。
ちなみに『雷使い』となった虎耳の女の子ラムルちゃんは、参加していない。
彼女は既に『使い人』として、他の『使い人』の子たちと一緒に『大森林』で訓練をしているので、あえて参加する必要がなかったのだ。
みんなスキルもいくつか身に付けたようだ。
やはり俺が持っていない目新しいスキルはなかったが、結構な確率で『護身柔術』スキルが発現していた。
『護身柔術体操』とともに、『護身柔術』の基本も練習していたからね。
今回の魔物・小悪魔の掃討作戦に参加したみんなの成果を聞いて、俺は嬉しくなった。
コバルト領の領民が安全になっただけでなく、俺の身近な人たちが強くなってくれて、いいこと尽くしなのだ。
何よりも……みんな達成感のある充実した顔をしているのが、嬉しくもあり、頼もしくもある。
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