920.オクティーの、タコ軍団結成!?

 この『フタコブ島』の周辺には、貝、海藻、魚など海産資源が充実していることが、改めて確認できた。


 そして島の中については、野イチゴや山ぶどうなどが採れるとのことだ。

 山ぶどうのワインを作っていると、教えてくれた。

 里芋のような芋も採れるらしい。

 野生動物も多く、狩りをすることもできるそうだ。


 フタコブ状の小山の片方の頂上付近には、なんと、野生の『陸ダコ』の群れがいるらしい。


 当然これを聞いた『陸ダコ』の霊獣『スピリット・グラウンドオクトパス』のオクティーは、ジョージと顔を見合わせ、すぐに山に向かって行った。


 仲間にするつもりらしい。

 ある意味、オクティーの眷属みたいなものだから、仲間にするのはいいかもしれない。

 なんか……オクティーの『タコ軍団』ができてしまいそうだ。

 いや……完全にできるなぁ。


 既にここに来る前に遭遇した海の魔物を、かなり退治したようだが、『操魚の矢』を使って仲間にしたものも結構いると言っていた。


 その中に、タコの魔物がかなりいたらしく、軒並み仲間にしたらしいんだよね。

 さっき海の資源を確認していた時に、ジョージが教えてくれたのだ。


 だから、すでにオクティーの『タコ軍団』ができていると言えなくもない。

 タコの『浄魔』と通常生物ではあるが『陸ダコ』が、オクティーの『タコ軍団』の構成員になりそうだ。


 ちなみに今回仲間にしたタコの魔物は、サイズはそれほど大きくなく大型犬くらいのサイズのようだ。

 『浄魔』になっているので『マナ・ブルーリングドオクトパス』と表示されるらしい。

 どうもヒョウモンダコの魔物だったようだ。


 ジョージが言うには、発色の綺麗な青色系統の個体が多かったとのことだ。

 三十体も仲間にしたらしい。


 確か『ヒョウモンダコ』って……すごい猛毒を持つ生物だったはずだ。

 その魔物を放置しておくのは危険極まりないので、仲間にしてくれて良かったと思う。

 味方になると、頼もしい戦力になるしね。


 もう一つの小山の頂上付近には、『黄色テナガザル』という猿たちの群れがいるとの話だった。


 当然これを聞いたニアさんは、『猿軍団』に組み込む為に、颯爽と飛び立って行ってしまった。


 無理矢理『猿軍団』に入れられる猿たちが、不憫で仕方ない。



 しばらくして……オクティー、ジョージ、スコピンのチームとニアが帰って来た。


 それぞれ、あっという間に仲間にしてきたらしい。

 『陸ダコ』は三十六体いて、『黄色テナガザル』は四十七匹もいたそうだ。


 『陸ダコ』たちも『黄色テナガザル』たちも、今まで通りここで暮らしてもらって、必要な時に召集をかけるというかたちにするらしい。


 どちらも通常生物なので、無理に強くする必要もないし、召集をかける必要のある時など無いのではないかと思うが……まぁ好きにさせておこう。


 ちなみに『陸ダコ』たちは、オクティーの登場にみんな喜んでいたらしい。

 いわば上位種族みたいなものだから、みんな喜んで仲間になったらしいのだ。

 ジョージから聞いた話である。


 ちなみにオクティーは、「我が漆黒の眷属たちよ、我の下に集え!」といつもの中二病チックな発言をしていたらしいが、『陸ダコ』たちは特に変に思うこともなく、喜んで仲間になったとのことだ。

 ただ残念なことに……『陸ダコ』たちはみんな、明るいオレンジ色で、全然漆黒ではなかったらしい。

 そもそも、オクティー自身が可愛いピンク色だからね……残念。


 ジョージの話では、『陸ダコ』たちはみんな人懐こい感じだったようなので、今後この島の人々と仲良くするだろうとのことだ。


 まぁそうしてくれると、防衛戦力にもなるから大助かりだ。

 当然この『陸ダコ』たちも、俺の『絆』メンバーに入っているので、『共有スキル』が使えるのである。


 ちなみに、オクティーの『タコ軍団』のもう一つの種族であるヒョウモンダコの『浄魔』たちも、この島の近海に生息させて、いざという時の防衛戦力にするつもりのようだ。


 ニアが仲間にしてきたという『黄色テナガザル』たちについても、ニアに確認したが、みんな喜んで仲間になったと言っていた。


 ただニアの視線が微妙に泳いでいたので……絶対物理力を行使して無理矢理仲間にしてきたよね……あの人。

 ほんとに猿たちが、不憫でしょうがない。

 ただ今のところ……戦う猿の軍団『モンキーマジック』に選抜したり、何かをやらせようという考えは無いようなので、ここの猿たちにとっては、それが救いだと思う。



 俺は、『救国の英雄』としての『職業固有スキル』の『集いし力』を使って、『アメイジングシルキー』のサーヤを呼んだ。


 『フェアリー商会』を取り仕切っているサーヤと、ここの人たちで今後のことを話してもらうためである。


 大体の方針は俺の方から伝え、今後具体的にどうするかということをサーヤと打ち合わせしてもらうのだ。



 まずサーヤが説明してくれたのは、この島の人たち全員に、働きに応じて賃金を支払うということだった。


 島の人たちは一様に驚いていたが、真面目に働けばここにいてもお金が稼げるし、必要なものは手に入るように手配してくれるという話もあったので、大喜びだった。

 特に女性が喜んでいた気がする。


 またセイバーン公爵領でも、コバルト直轄領でも必要な時に買い物に出かけて構わないし、各市町には『フェアリー商会』の支店があるので、効率よく買い物ができるように世話をしてあげるという話もしていた。


 また、船で買い物に出るのは距離的に大変なので、事前に連絡してくれれば、日程を決めてみんなを転移で買い物に連れて行ってあげるという話までしていた。


 転移で買い物に行くという話には、みんなまた口をぽかんと開けて驚いていた。


 将来的には、この島とセイバーン公爵領の港湾都市『ウバーン市』の『フェアリー商会』の支店を、ゲートの魔法道具で繋いでもいいかもしれない。


 現在『フェアリー商会』では、新体制の事業本部制にした時に決めた通り、各支店と商会本部をゲートの魔法道具で繋いでいるのだ。


 これにより、各支店の幹部が本部に集まることができ、迅速な意思疎通が可能となっている。

 毎日本部で行っている幹部朝礼に、各支店から幹部・準幹部が集まってくるので、情報の共有も早いし指示も迅速に出せるのだ。


 はっきり言って、かなりのチート技だ。

 まぁこんなことでもなければ、急速に支店数を拡大したりできないからね。

 通常は店舗数や支店が増えれば増えるほど、意思の疎通が難しくなり問題が起きるものだが、今まで大きな問題はほとんど起きていない。

 毎日、対面で状況を確認したり、指導ができるからなのだ。


 設置しているゲートの魔法道具は、『マシマグナ第四帝国』のテスト用第四号迷宮『トラッパー迷宮』で手に入れた『対鏡の門ツインミラーゲート』という名前の大きな魔法道具である。

 普通のドア二枚分ぐらいの大きさの鏡が、二つで一セットになっているのだ。

『階級』は、『究極級アルティメット』であり、今では失われている技術を使った貴重な魔法道具なのである。

 見た目は巨大な全身鏡で、自分の姿が映るので誰も魔法道具とは思わないだろう。


 当然手に入れたのは、一セットだったわけだが、俺の『波動複写』で必要な分だけコピーして、使っているのだ。

 二箇所しか結ぶことができないので、各支店の特別室と商会本部に作った専用の大部屋にセットしている。


 あくまで、その支店と本部だけの間でしか、移動できないのである。

 ただ……一度本部に来て、本部に置いてある他の支店に繋がる『対鏡の門ツインミラーゲート』を通って、そこを訪れることはできる。

 本部の特別室には、支店ごとの名前を貼ったこの魔法道具が並べてあるのだが、支店の増えるスピードが凄すぎて、大部屋を大拡張しなければならない状況なのだ。


 この魔法道具の存在は、極秘事項なので『フェアリー商会』の幹部と準幹部にしか公開されていないし、その者たちしか使うことができない。

 もちろん『契約魔法』で『秘密保持契約』も結んでいて、情報が漏れないようにしているのだ。


 それ故に、使用も厳格にしていて、あくまで各支店とを結ぶことにしか使っていない。

 だが、特別にこの『フタコブ島』と『ウバーン市』の商会支店を繋いで、買い物に出かけられるようにしてもいいかもしれない。

 特例措置を発動してあげようかな……。

 まぁ状況を見て決めよう。


 当面は、サーヤや転移の魔法道具を持っている仲間が、連れて行ってあげることで事足りるだろう。

 負担があまり大きくないなら、それで充分かもしれないし。


 ちなみに『ウバーン市』を選んだのは、この島から近い範囲の中で、一番大きな都市だからだ。

 コバルト領の『ミルト市』にしようかとも思ったが、そこから逃げ出してきた人たちがほとんどなので、場所を変えた方が良いと思ったのだ。


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