856.ストライクゾーンは、広めかも。

「オホン、アンチエイジングは私も協力するけど……ハナシルリちゃん、まだ情報収集が甘くないかしら? グリムってば……どっちかって言うと、若いピチピチよりも、熟れ熟れの熟女の方が好きだと思うのよね……。アンチエイジングも、早めにしすぎるのはマイナスかもしれないわよ」


 前世で大親友だったというハナシルリちゃんと『怪盗イルジメ』ことオカリナさんの女子トークに、突然、ニアが割り込んだ。

 そして、少し悪い笑みを浮かべている。


 二人はアンチエイジングという女子らしい会話をしていたんだと思うが……なぜ突然、俺の女性の好みの話になっているのか……?

 そして人を勝手に、熟女好きみたいに言うのはやめて欲しい。

 まぁ強くは否定できないけどさ……。

 俺って、本当に熟女好きなのかな……?


 最近自分でも、自分の恋愛性能というか……守備範囲というか……ストライクゾーンがよくわからないんだよね……。

 素敵な女性に年齢は関係ないということで、自分を納得させてはいるけれど……。


「あ! ……そうだった。確かにその傾向があるわよね。ユーフェミア様を見るときの目とか……。ストライクゾーンは、かなり上に広いかもしれないんだよね。還暦を超えたマリナ騎士団長ですら、ストライクゾーンかもしれないからなぁ……」


 ハナシルリちゃんが、しまったという顔をして、おでこに手を当てながらそんなことを言った。


 てか……何を言っちゃってるわけ?


 別にユーフェミア公爵を、女性を見るような目で見てないと思うけど……。

 ただ素敵な女性だと思っているだけなんだけど……。


 そして俺がいる前で、普通に何の遠慮もなくそんな話をするのは、本当にやめてもらいたい。


「そうだったの! はっはぁ……そっち方向ね。じゃぁ焦らなくて、いいかもしれないわね……」


 会ったばかりのオカリナさんが、そう言いながら俺を物珍しそうな目で見ている。


 何このいたたまれない感じ……。

 本人を前に、プライベートな情報を予想で話すのは、ほんとやめてほしい。


「でもそれだけじゃないのよ。若い子に対しても、デレッとするときはあるのよね。そこら辺は、ニアちゃんが一番詳しいけどね」


 ハナシルリちゃんがそう言って、ニアに視線を流した。


「オホン、大体のデータは把握済みよ! と言っても……グリムの場合、はっきり言って判断が難しいのよね。若い子に対しても、確かにデレッとするときはあるの。でも総合的な分析をすれば……やはり基本は年上の女性に弱いのよね。ただ色っぽさに弱いという見方もできるのよね。オカリナさんみたいなナイスバディーな大人の色気がある人には、基本弱いからね。オカリナさんは、ストライクゾーンだから安心して」


 ニアは腕組みしながら、まるで先生のようなノリでそんな分析を披露した。


 てか……ほんとに俺を勝手に分析しないでほしい……。


「ほんとですか! 嬉しい……」


 オカリナさんがそう言って、俺を見た後に、また頬を赤らめて俯いてしまった。


 何この気まずい感じ……。


 否定することも、肯定することもできないこの状況……。


「改めて考えると……やっぱりグリムの守備範囲は、相当広いかもしれないわね。恋のオールラウンドプレイヤーで、恋愛性能もチートかもしれないわね……。まったく、取りまとめるこっちの苦労も知らないで」


 ニアは、更にそんなことを言った。

 そして俺の方を見ると、チッと舌打ちした。


 なにそれ!?

 俺の話題で勝手にイラついて、舌打ちするのは本当にやめてほしい……。


「なるほど、侮れないのね。恋愛までチートとは、さすがグリムさんね。でも恋愛ゲームの攻略みたいで楽しいかも」


 オカリナさんは、そう言って楽しそうに笑った。


 なにそれ……ゲーム感覚で楽しもうとしてるわけ……?


 オカリナさんって、やっぱり腹の据わった人かもしれない。


 それにしても……俺を恋愛チートみたいに言わないでほしい。

 どっちかって言うと、恋愛下手な真面目な男の子だと思うんですけど……。

 もしかしたら、分析されてしまった通りに、守備範囲だけはチート並みに広いのかもしれないけどね。

 ……少し自分に自信がなくなってきた。


 俺としては歳に関係なく、素敵な女性、頑張っている女性に、心が動くだけなんだけどね。

 それも応援したいという意味での好意だと思うのだが……。


 俺のこの純粋な思い……誰も信じてくれそうにないけどね……トホホ。

 まぁ100%純粋とは信じ切れない自分もいるけどね……。

 自分を正当化しようとして、我ながらわけわかんなくなってきてしまった……トホホ。



 俺はなんとか気を取り直して、女子トークが一段落したところで、改めて『絆』スキルのことを説明し、『絆』メンバーに登録する話をした。

 俺の『固有スキル』の情報なども、他の仲間たちに開示している程度の情報は公開した。


 早速、『心の仲間チーム』メンバーとして『絆』登録すると……ハナシルリちゃんの時と同様に、オカリナさんは驚きの声を上げた。


「なに! この『共有スキル』の数! もうめっちゃチートじゃない! 『絆』メンバーになった時点で、みんなチートじゃないの! しかも、スキルレベル10ってなによ! いや……これはすごいわ……。もう無敵かも」


「そうでしょう! 私も最初びっくりしちゃったのよ。このスキルを一通り使ってみるだけで、かなり時間が必要よ。あと……梨那が仲間になってくれたおかげで、梨那の持っている『通常スキル』で、グリムが持っていないものについては、グリムのスキルとしてコピーできるみたいなの。それを『共有スキル』にセットできるから、みんな使えるようになるのよ!」


「その能力凄すぎ! じゃぁ『絆』メンバーの誰かが、新たにスキルを身につければ、『共有スキル』として、メンバー全員が使えるようになるわけ?」


「そういうことなのよ。一人が頑張れば、みんなのためになっちゃうわけ。『ワン・フォウ・オール』って感じよね。そして『数は力』って感じでもあるわ」


「ほんとそうね。グリムさんの『絆』の仲間たちって……チートの軍団だから……悪魔とか魔王も怖くないんじゃない?」


「そうね。まぁ油断は禁物だけどね。レベル制の世界だから、高レベルが出て来ちゃったら、ヤバい可能性はあるけどね……」


「確かにそうよね。油断は禁物ね。私も改めて鍛え直すわ! こんなに『共有スキル』があったら、嫌が応でもテンション上がっちゃうもの」


 二人の女子トークが、さらに盛り上がってしまった。


 ちなみにオカリナさんが仲間になってくれたお陰で、新たに『通常スキル』として『変装』『状態偽装』『模写』『光耐性』『光魔法適性』『光魔法——陽光の充足』『光魔法——暖かな光』『光魔法——太陽光輪』『光魔法——極光の壁オーロラウォール』が手に入った。


 当然これらスキルも、スキルレベルを10にした上で、『共有スキル』にセットしておこうと思う。


 個人的には、『変装』スキルが楽しみだ。

 スキルレベルを10にしたら、超早業で変装できるんじゃないかと思うんだよね。

 そうすると、変身ヒーローの変身のような感じで、鎧などを身に付けることができるかもしれない。

 今度試してみようと思っている。



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