827.濃い魔力は、刺激が強い?
高速飛行艇『アルシャドウ』の付喪神となったエメラルディアさんに連れられて、機関室にやってきた。
機関室は、船の後部の船体内のスペースにあり、そこに『魔力炉』と『魔芯核』の備蓄槽がある。
確かに備蓄槽は空になっていた。
俺は『波動収納』にストックしてある『魔芯核』を取り出し、備蓄槽を満タンにした。
そして、人の魔力を直接流し込んでエネルギーとして蓄える補助装置が付いていたので、そこに俺の魔力を流し込んだ。
「あゝ……す、すごい……。あ、あつい……体が熱くなってくる……。あぁ、はぁ……この魔力の質の高さ……濃さ……はぁぁ……すごい……、すごく濃い……はぁぁっ」
エメラルディアさんが、真っ赤になりながら身悶えしている……。
そして切ない感じの声を出している……。
声の感じが、微妙すぎてドキドキするし、ため息を漏らすのも、色っぽすぎるのでやめて欲しい……。
急にどうしたんだろう……?
凛とした姿のかっこいい女海賊が、そんな状態になっていると……“ギャップ萌え”でしかない……。
そして色っぽすぎる視線を俺に向けるのはやめてほしい……。
案の定……ニアの『頭ポカポカ攻撃』が炸裂してしまった。
どうも、エメラルディアさんは、俺の流し込んでいる魔力を直接感じ取っているらしい。
こんなことになると分かっていれば…… 魔力を流し込むのはやめたのだが……。
今さらしょうがないけどね。
魔力を流し込むのが終わって、微妙に気まずい雰囲気の中、俺は苦笑いするしかなかった。
エメラルディアさんも、気まずい感じでうつむきながら、頬を赤らめている。
この微妙な空気を察してくれたのか、フミナさんが口を開いた。
「あの……エメル皇女は、綺麗すぎてとっつきにくい印象かもしれませんが、ざっくばらんな人なんです。皇族でありながら、誰にでも分け隔てなく接してくれる優しい人なんです。黙ってると強い女性という印象なんですが、実際はどちらかというと面白い人なんですよ」
フミナさんが少しおどけた感じで、俺にそう説明してくれた。
多分……気まずい雰囲気をなんとかするために、無理矢理話題を作ったんだろうけど……
「ちょっと、フミナ、変なこと言わないで! 私のイメージが崩れるじゃない……」
さっきまで色っぽい感じになっていたエメラルディアさんは、急に普通の女子っぽい感じになって、ほっぺたを膨らませた。
もうすでに、イメージは崩れていると思うのだが……
エメラルディアさんは、どうやらいろんな側面を持った、面白いキャラクターのようだ。
怜悧な感じの美人なのは外見だけのようで、中身は愉快で面白い男前なキャラなのかもしれない。
「グ、グリムさん、お陰で起動することができました。飛行できると思います。これであなたたちを運んで飛ぶこともできます」
エメラルディアさんはそう言って、ニコッと笑った。
よかった……起動できて。
一安心だ。
あとは今後のことを話さないとね。
彼女は力になってくれる気満々だが……付喪神化したばかりでレベル1だからね。
改めて、彼女のステータスを確認すると……『種族』が『付喪神 スピリット・エアシップ』となっている。
『名称』は、エメラルディアとなっている。
そして、俺の眷属になっている。
レベルは1で、『通常スキル』をいくつか持っている。
もともとエメラルディアさんが持っていたスキルが、いくつか引き継がれているようだ。
『操船』という船の操縦ができるスキルを持っている。
これは、俺が持っていないスキルだ。
他には、俺が既に持っているスキルだが、『戦術指揮』と、『剣術』スキルを持っている。
『種族固有スキル』としては、『空中機動』『応急修理』の二つを持っている。
『空中機動』は、空中を航行するときの動作制御をするスキルのようだ。
技コマンドに、急旋回や回転などができる『曲芸飛行』と戦闘モードの『戦闘機動』というのがある。
『応急修理』は、損傷箇所などを素早く簡易的に修理できるスキルらしい。
自己修復できるということなのだろうか……?
『固有スキル』もある。
『砲撃戦』と『艦隊指揮』という二つのスキルを持っている。
『砲撃戦』スキルには、技コマンドとして『一斉砲撃』と『一点突破』と『弾幕』というのがある。
『艦隊指揮』は、自分の艦隊として登録した船を、指揮して戦わせることができる能力のようだ。
詳しくはわからないが、彼女の指揮する艦隊を作っておけば、彼女のコントロールで自在に動かせるのかもしれない。
もしそうだとしたら、無人の艦隊を指揮して戦わせる事ができるということだから、めっちゃすごい。
これらの凄いスキルを活かすためにも、早めに訓練をしたほうがいいだろう。
いくら凄いスキルを持っていてもレベル1では厳しいし、スキルレベルも1の状態だから、できればスキルレベルも上げたほうがいい。
ただ、エメラルディアさんの本体である高速飛行艇『アルシャドウ号』は、大きいので訓練できる場所が限られてしまいそうだ。
そしておそらく……本体である『アルシャドウ号』から近い距離でしか顕現していられないはずなので、街中に行くことは難しいかもしれない。
ただ家の付喪神であるナーナは、家の一部と認識されている『家馬車』の近くでは顕現できる。
それと同じようなかたちで、この本体の大型船とは別に、もう少し小さいものを本体の一部と認識できれば、小回りが利くようになるので活動の幅が広がるはずだ。
俺は、そんな話をエメラルディアさんにしてみた。
「なるほど……そうですね。この船では、戦闘時はいいですが、それ以外のときは大きすぎて活動範囲が限定されてしまいますね。多分……船の一部なら、それを分身として顕現できると思います。ただ……なんとなく直感的に感じるのは、船を構成する主要なパーツが適しているということです。そう考えると……この舵がいいかもしれません」
エメラルディアさんはそう言うと、舵を触って、目をつむった。
するとうっすらと舵が光り、丸いハンドル状のパーツだけが外れた。
「これなら、分身体として機能しそうです! でも……大きいですから……背負うしかないかもしれませんね」
エメラルディアさんはそう言って、船にある紐を使って、リュックサックのように背負った。
……俺としては違和感が半端ない。
てか……この人……結構天然なのかもしれない……。
背負ってなければ、イケてる女海賊風の超かっこいい姿なのだが、背負っていると……完全にミスマッチだ。
ただ見方によっては……後光が差しているように見えなくもない……いや、やっぱりそうは見えないな。
はっきり言ってしまえば、格好悪い。
そして街中でこんな格好をしていたら……悪目立ちしてしまう!
どうしよう……?
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