818.賞金稼ぎになったら、儲かるぞ。

 大型船を襲っていた川賊たちのアジトを壊滅させた。

 といっても、やったのはツクゴロウ博士たちだ。


 このアジトは、『川イルカ』のキューちゃんたちが見つけていたアジトらしき場所五つのうちの一つだった。



 残り四つのアジトも、キューちゃんに案内してもらい、全て壊滅させた。


 ここでもツクゴロウ博士が張り切り、ほとんど一人で倒してしまった。

 大暴れ状態だった。

 九十五歳ということだったが、動きがヨレヨレなこと以外は、すこぶる元気なようだ。

 動きがヨレヨレなことも、わざとではないかと思えてくるほどだ。


 最初に壊滅させたアジトと、後から連戦した四つのアジトと合わせて、五つのアジトを壊滅させた成果は、まぁまぁだった。

 戦利品という意味である。

 特にめぼしいものは、なかったのだ。

 ただ目的は川賊たちを根絶やしにすることだったので、それが達成できたから問題はないんだけどね。


 拘束した川賊は、最初のアジトの五十人を入れて、百七十三人にもなった。


 俺の分身『自問自答』スキル『ナビゲーター』コマンドのナビーの尋問によって、このうち十七人が悪事の程度が低く矯正可能と判断された。

 それ故に、『残念B組ナビ八先生』に入れることになった。

 『残念B組ナビ八先生』に入る必要がない、すぐ立ち直れそうな人間は『舎弟ズ』に入れるのだが、今回は残念ながら該当者がいなかった。

 根っからの川賊で、悪い奴が多かったのだ。

 ゆえに残りの百五十六人は、セイバーン公爵領に突き出すことになった。


 この川賊たちは、領から褒賞金として一人当たり三十万ゴル、川賊団の首領については更に懸賞金として百万ゴル支払われるということになっている。

 ユーフェミア公爵から、事前にそう聞かされていたのだ。

 俺としては褒賞金は必要はないのだが、固辞するとユーフェミア公爵やマリナ騎士団長からダメな子供を見る目で見られてしまうので、もらうしかない。


 ざっと計算すると、首領が五人いるので五百万ゴル、首領を含めた川賊が百五十六人なので、四千六百八十万ゴルになる。合計で五千百八十万ゴルにもなってしまう。

 めぼしい戦利品という意味では、まぁまぁと言ってしまったが、褒賞金を考えるとかなりの金額になってしまった。

 前に盗賊たちをまとめて退治した時にも思ったが、腕に自信があるなら盗賊や川賊を退治して、褒賞金をもらうのが効率よく稼ぐ方法だと思う。

 なぜこの世界に、賞金稼ぎみたいな人たちがいないのかが不思議だ。

 まぁ俺が知らないだけで、どこかにいるのかもしれないけどね。


 それから五つのアジトから没収した船も、かなりの数になった。

 大型船が二隻、中型船が十七隻、小型船が二十五隻である。

『フェアリー商会』では『川運・海運事業』はやっていないので、船を大量に使う予定は今のところない。

 ヘルシング伯爵領での川賊退治の時の船も入れると、かなりの数になる。

『波動収納』にしまってあるから、困るということはないのだが、使わないともったいないよね。


『フェアリー商会』で『川運・海運事業』を始めるという手もあるが、できればこれ以上手を広げたくない。

 今まで海上貿易をやっていた『シンニチン商会』の皆さんに船を提供しても良いが、彼らは『格闘技興行』がメインになるので、もはや船は必要ないんだよね。


 さっき知り合った『郵船商会』という移住希望者を運ぶ仕事をしてくれている商会が、事業を広げる気があるなら、船を提供してもいいかもしれない。

 現物出資というかたちで、事実上無料で提供することができる。

 儲けが出たら、配当金をもらえればいいだろう。


 よし、話だけでもしてみよう!


 俺の分身『自問自答』スキル『ナビゲーター』コマンドのナビーに、さっきの船を追いかけて出資の話を持ちかけてもらうことにした。

 ナビーはちょうど『残念B組ナビ八先生』に入れる川賊たちを、矯正施設に連れて行こうとしていたところなので、そのついでに寄ってもらうことにしたのだ。

 ナビーならさっき実際に顔を合わせているから、驚かれないと思うし。


 転移で矯正施設に連れて行った後、『アメイジングシルキー』のサーヤと合流して、船を訪れてもらうことにした。

 さっきの船に、転移することはできないので、飛竜に乗って訪問してもらうことにしたのだ。

 『共有スキル』に俺が取得した『飛行』スキルがセットしてあるので、空を飛んでいくこともできるのだが、人が空を飛んできたらかなりの衝撃だと思うし、その能力は隠しておきたいので、飛竜で行ってもらうことにしたのである。

 サーヤを呼んだ理由は、商会関係の事なので、実質的なトップであるサーヤにも参加してもらったほうがいいと思ったからだ。


 最初の川賊のアジトを制圧した後に、連続で制圧した四つの川賊のアジトも『マナゾン大河』に注ぐ支流を少し入ったところにあった。

 それぞれのアジトは、俺が没収した。

 まぁこれも放置状態になるだろうが。


 五つの川賊団から没収した金貨などの硬貨は、一千万ゴルを超えた。

 五つのアジトは、ほぼツクゴロウ博士たちが制圧してしまったので、領から出る褒賞金も含めて、戦利品として渡したいという話をしてみたのだが、「金には困っておらん! そんなものはいらんのじゃ! それより早く付喪神に合わせろ!」と半ギレされてしまった。

 どうも……五つの川賊のアジトをツクゴロウ博士たちで制圧してしまったのも、川賊退治を早く終わらせて、付喪神に会いたいという一心からだったようだ……。


 あと五つのうち三つの川賊のアジトからは、宝石や装飾品も没収することができた。

 標準サイズの宝箱二つ分ぐらいにはなると思う。


 高価なものではなく一般的なものだったので、貴族女子のメンバーは多分要らないと思う。

 俺の仲間たちで、欲しいという者がいればあげようと思っている。

 今度『フェアリー商会』のスタッフの慰労会をやって、その時の景品にしてもいいかもしれない。


 武具なども全て没収したが、『下級イージー』と『中級ミドル』の階級のものばかりだった。

 それでも数がそれなりにあるので、換金すれば、ある程度の金額にはなるだろう。

 だが、『波動収納』の死蔵品になりそうだ。

 状態の良いものは手入れをして、『フェアリー武具』の商品として販売してもいいかもしれない。


 没収した武具の中に、投擲剣として使えるダガーと投擲槍がいくつかあって、壺の付喪神ツボンちゃんが欲しいと言うので、それはあげた。

 壺の中に収納しておいて、戦いの時にそれを発射して使うらしい。


 それからどの川賊も酒が好きなようで、ワインの樽とエールの樽もかなり没収できた。

 ワインの樽は三十樽、エールの樽は十樽になった。

 これらは、『領都セイバーン』で行われる式典での振舞酒に使おうと思っている。

 食料品も没収したが、どこのアジトも日持ちするような干し肉や、麦類、米がほとんどだった。


 飼育されていた動物たちも、いつものように保護した。

 五つのアジトを合わせて、鶏を百十七羽、豆牛を二十頭、ヤギを三十七頭、保護した。

『コロシアム村』の牧場のメンバーになってもらう予定だ。


 追加の四つのアジトの川賊の首領にも聞き取りをしたが、最初の川賊と同様に取引のある商会は二つだった。

 ルセーヌさんとゼニータさんの特捜コンビが目をつけている二つの商会だった。


 そして、四つのアジトからも、なぜか爆弾は発見されなかった。

 ルセーヌさんたちの情報では、『マットウ商会』が流通させた爆弾は、コバルト侯爵領内の二つの商会と川賊らしき輩の手に渡ったということだった。

 だが、五つの川賊たちは、特殊な武器の売り込みをかけられたが購入しなかったと同じように答えた。

 嘘はついていないと思うんだよね。

『虚偽看破』スキルが反応しなかったからね。


 多分……川賊たちに売ろうとしていたが、結局売れなくて二つの商会が全ての爆弾を持っているということなのではないだろうか。


 二つの商会にあるはずの爆弾は、ルセーヌさんたちが怪盗として盗み出すことになっているが、急いだ方がいいかもしれない。



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