797.微妙な義姉妹、誕生。
俺は、この『海の魔域』の取りまとめを『スキュラ』のキュラリにさせることにした。
サイズ的にも人間に近いサイズだし、話も普通にできるからね。
『シーサーペント』のサーペンも『マナ・アーマークラゲ』たちも、異論は無いようだ。
『マナ・アーマークラゲ』たちは十一体いるので、その中のリーダーを決めた。
リーダーの名前は、クラゲッティと言う。
特に意味はない……クラゲの触手が、スパゲッティーに見えたからつけたというわけではないのだ……。
信じてほしい……。
そして、ネーミングへのクレームもまた、受け付けていないのだ。
既に、ニアからジト目を向けられたことは言うまでもない……トホホ。
俺は『アラクネロード』のケニーを呼んだ。
ケニーは、大森林の守護統括として取り仕切ってくれているので、先輩として『スキュラ』たちに色々と教えてもらおうと思ったのだ。
人はそれを……“丸投げ”と言うかもしれないが……。
当の本人は喜んでいるから、いいだろう。
今回は分離しないで下半身が蜘蛛で、上半身が人型という通常の『アラクネ』スタイルで来てもらったが、蜘蛛の触肢と人型の人差し指で、高速のツンツンをしていたから、この役目を喜んで引き受けてくれたと思う。
ちなみにダブルツンツンはかなりレアで、そして可愛いかった。
人型のケニーは、怜悧な顔付きに似合わない可愛さで頬を赤らめ、腰のあたりにある蜘蛛部分の目がたくさんついた蜘蛛顔も、赤くなっていた。
相変わらず、可愛い奴め。
「ケニー様……なんと美しい……フフ。手取り足取りのご指導を、お願いいたします。ケニー様色に染まります……ふふふ。私は美しいものが大好きなのです。ケニー様にも全力でご奉仕させていただきます。お姉さまと呼ばせてください……フフ」
『スキュラ』のキュラリはそう言って、口を半開きにしてケニーに色っぽい視線を向けた。
そして、ヨダレが垂れないように舌なめずりをした。
こいつ……両刀なのか……?
ケニーの怜悧な顔付きが、更に冷たい感じになった。
少し呆れたような……少し蔑むような感じの視線になっている。
ケニーの前で、グフグフいう変態野郎の『ミノタウロス』のミノ太に対する時のような、刺すような視線までは行っていないが、それに近いものがある。
「私に奉仕する必要はありません。
少し冷たい感じで、ケニーはキュラリに言ったのだが……キュラリは、一瞬ビクッとしつつも、恍惚の表情になって、うっとりとケニーを見つめている。
キュラリが、ある種の変態であることは間違いないようだ……トホホ。
なんか最近……いろんな種類の変態が集まってきてるような気がするのは……気のせいだろうか……。
「お姉さま、ありがとうございます。身も心も
キュラリがそう言って、妖しい視線を俺とケニーに向けている……。
……はぁ……俺はもしかして……やばい奴を仲間にしてしまったのか……?
もしかするまでもなく……やばい奴を仲間にしちゃったんだよね……まぁいいけどさ。
ここは申し訳ないが、俺はあまり関わらず、ケニーに丸投げしよう……ごめんね、ケニー……。
まあケニーに任せれば大丈夫だろう。
あのド変態の『ミノタウロス』のミノ太ですら、それなりに相手してくれていたからね。
ミノ太よりは、多少マシじゃないだろうか……。
キュラリもケニーが気に入って、慕ってくれているようだし。
『オリジン』義兄弟というか……義姉妹の誕生といったとこだね。
蜘蛛の下半身に人の上半身の『アラクネ』と、魚の下半身に人の上半身という『スキュラ』は、ある意味似てるし、『オリジン』同士だし、陸の魔域『魔域 マナテックス大森林』の守護をケニー、『海の魔域』の守護をキュラリでやってくれればいいだろう。
ケニーは、どんな仲間に対しても、お母さんのような感じで面倒見がいいから、色々と教えてくれるだろう。
そういえば……ミノ太は元気にしてるかなあ?
ケニーが、『アラクネロード』に進化して人型分体と蜘蛛型分体に別れられるようになってから、人型分体はほとんど人族の街で活動するようになっている。
俺の手伝いや『フェアリー商会』の仕事で忙しいし、ケニー率いる『聖血鬼』たちの諜報軍団の指揮もあるからね。
蜘蛛型分体は、大森林をいつも通り守ってくれているのだが……ミノ太は蜘蛛型分体だけでは満足できないらしく、人型分体のケニーにも会いたいと言ってぶーたれていたんだよね。
前に会ったときに、ヤサグレながら俺に文句を言ってきたからね。
そして自分も『フェアリー商会』の手伝いをしたいと言ってきたのだが……ミノ太は見た目が完全に魔物だし、あくまでケニー目当てで言っているだけだから、却下したのだ。
今にして思えば……覆面レスラーみたいな感じで、お面を被っている体で何とかできたかもしれないが、その時には全く思いつかなかったんだよね。
まぁ冷静に考えると……大男が牛のお面を被って働いてますっていうのも、あまりにも不自然だから……どっちみちダメだったな……。
ミノ太は俺に諭されて、一旦諦めてくれたのだが……見た目が問題だということに、今更ながら気づいたらしく……自分も人型分体になれるように修行したいと、わけのわからないことを言い出していた。
その為に、故郷の『ミノタウロスの小迷宮』にこもると俺に一方的に宣言して、修行に行ったんだよね……。
俺は、面倒くさかったので、そのまま許可をしたが……あいつの発想自体が間違ってると思うんだよね……。
大体……『ミノタウロス』が人型分体とかには、ならないよね……?
いや……待てよ……牛頭が分離して……牛になって、残った体に人の頭が付けば……かろうじて人型分体になるかも……。
もし本当にそうなったら……すごいとは思うが……。
なんとなく……ミノ太の変態魂なら、そんな奇跡も起こしてしまいそうで、ちょっと怖い。
少し期待もあるが……いやダメだ……期待しちゃいけない。
もし成功したら……人の顔をしたド変態と牛の姿のド変態が出来上がるってことでしょう……いや駄目だな、これは。
ミノ太には悪いが、修行が成功しないことを祈ろう。
それにしても……迷宮にこもって以来連絡がないが……あいつは大丈夫なんだろうか……?
修行が失敗するだけならいいが……下手したら変態に磨きがかかって帰ってくるかもしれない……。
考えるだけで怖い……いや、考えたら負けだな……あいつの事は忘れることにしよう……ごめんね、ミノ太。
この『海の魔域』を事実上支配していた『マナ・アーマークラゲ』たちと『シーサーベント』と『スキュラ』を仲間にしたからだろうか、俺の称号には『魔域 スパイラル大海域の主』というのが追加されていた。
今後この場所は、大森林との対比という意味でも、大海域と呼ぶことにしよう。
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