769.本格稼働第一号迷宮、希望迷宮。
『真祖吸血鬼 ヴァンパイアオリジン』のカーミラさんの家に、出発するメンバーがみんな集まったので、早速移動することにした。
カーミラさんの家である人造迷宮『希望迷宮』は、ピグシード辺境伯領の北西の端を北に上った不可侵領域にあるようだ。
そこで、『アメイジングシルキー』のサーヤの転移で、ピグシード辺境伯領の北西にある『ホクネの街』に移動することにした。
『ホクネの街』は、現在は閉鎖状態で無人の街だが、転移用のログハウスは街の郊外に設置してあるのだ。
そこからは、飛竜船で移動する予定だ。
タイミングよく、サーヤが来てくれたと思ったら……なぜか、ほとんどの仲間たちが一緒に見送りに来た。
国王陛下たちやビャクライン公爵一家、ユーフェミア公爵をはじめとした貴族の皆さんは来ていない。
みんな朝一番の時間帯は、転移の魔法道具を使って、王都やそれぞれの領に戻って仕事の段取りをしているのだ。
その段取りを終えたら、午前中の時間帯で秘密基地『竜羽基地』に集まって、毎日訓練をしている。
午後は、再度それぞれの仕事をする場所に戻ったり、『コロシアム村』で打ち合わせをしたりという感じのタイムスケジュールになっている。
ちなみにビャクライン公爵も、部下が無事に『領都ビャクライン』に戻って転移の魔法道具に転移先として登録できたので、魔法道具を使って領城に戻って、仕事をすることができているのだ。
これをするために、飛竜船でビャクライン公爵の部下の近衛兵を送ってあげたときに、俺の『自問自答』スキル『ナビゲーター』コマンドのナビーも同行していた。
もちろんナビーも帰ってきているわけだが、ナイスな仕事をしてきてくれていた。
ビャクライン公爵領に着くまでの間に通過した各領の飛行ルート近辺にあった市町を、転移の魔法道具の転移先として登録したらしい。
密かに飛竜船から降りて、登録するという作業をしていたとのことだ。
もっとも、転移の魔法道具に登録できる数には限りがあるので、小さな町などはサーヤの転移先として登録してある転移用のログハウスを設置してきたようだ。
これをするためにわざわざ、添乗すると言って一緒に行ってくれたのだ。
これによって、かなりの場所に転移することができるようになった。
今のところ行く予定はないが、何かあったときに役立つはずだ。
さすがナビーといったところである。
俺は考えもしなかったが、ナビーのナイスな判断だ。
やってきた俺の仲間たちに、クワの付喪神クワちゃんを紹介したのだが、クワちゃんは早速反応した。
「おやおや……兎亜人の子がおるではないか……。しかも綺麗なピンク髪……ラッキーちゃんと同じではないか! もしや君たちは……ラッキーちゃんの子孫かい?」
クワちゃんは、やはり兎亜人のミルキー、アッキー、ユッキー、ワッキー姉弟に食いついた。
約六百年前のパートナーは、兎亜人だったと言っていたからね。
しかも髪色まで同じらしい。
でもまさか……子孫ってことはないよね……?
「……すみません。多分違うと思います。私たちは不可侵領域の誰も住まないところに、家族で暮らしていただけなので……」
ミルキーが、申し訳なさそうに言った。
「そうかい……ふーん……まぁよいわ」
クワちゃんが、ちょっと残念そうなトーンになった。
確かにミルキーは、不可侵領域に家族で住んでいたんだよね。
どこかの国に住んでいたわけじゃないし、自分のルーツとかは、わからないのだろう。
髪色が同じだから、もしかしたら子孫の可能性もあるかもしれないけど、亡くなったご両親も特に伝えてなかったわけだから、その可能性は低いだろう。
◇
ピグシード辺境伯領の北西の端から北に上った不可侵領域にある森に、カーミラさんの家となっている『希望迷宮』があるようだ。
森に入り奥に進むと、少し開けたところがあって、山小屋のような家がある。
この家は、カーミラさん達が、外の自然を楽しむために作った一時的な家らしい。
本当の家は『希望迷宮』なわけだが、それはこの森の地下に広がっているようだ。
地上部分は無いらしく、地下迷宮に入る入り口はこの山小屋の近くにあるとのことだ。
山小屋の後ろ側に、岩がいくつか突き出ている場所があり、その岩と岩との間を通っていくと地下への入り口が現れた。
その入り口を入って少し進むと迷宮の入り口があり、俺たちは迷宮の中に入った。
この『希望迷宮』は『マシマグナ第四帝国』が作った本格稼働迷宮の第一号迷宮なわけだが、地下部分のみで五十一階層あるとのことだ。
俺がダンジョンマスターをしているテスト用迷宮と同じように、綺麗な階層構造になっているらしい。
最下層の五十一階がダンジョンマスタールームになっているとのことだ。
そしてそこが、カーミラさん達の家になっているらしい。
この迷宮は、現代では全く知られていないので、訪れる者はいないそうだ。
地下一階から五十階までは、基本仕様通りの魔物が配置されているらしい。
地下一階から二十階までが上層という括りになっているようだ。
様々な魔物が配置されているが、動物型が多いとのことだ。
地下一階は、レベル10程度の魔物がいて、それが徐々に上がっていき地下二十階はレベル30くらいの魔物になるそうだ。
それ故に、迷宮上層を突破するには、レベル30以上は必要らしい。
地下二十一階から四十階までは中層という括りで、ここも様々な魔物が配置されているが昆虫型や爬虫類型の魔物が多く配置されているとのことだ。
ここもだんだん現れる魔物のレベルが高くなっていき、四十階層にはレベル50程度の魔物が配置されているそうだ。
このため、四十階層をクリアするには、レベル50以上が必要らしい。
地下四十一階から五十階までが下層という括りになっていて、ここには様々な魔物と共に人工ゴーレムも配置されているとのことだ。
迷宮としての最下層は五十階で、ダンジョンマスターとの勝負の場所になっているらしい。
この地下五十階層にたどり着くには、レベル80以上は必要だろうとのことだ。
ダンジョンマスターに勝てるかどうかは、その時のダンジョンマスターのレベルによるらしい。
まぁ今のダンジョンマスターは、吸血鬼の真祖で始祖でもあるドラキューレさんなわけだから、普通の人族では太刀打ちできないだろう。
勇者とかが来ても難しいんじゃないだろうか。
レベル100とかを超えていれば、可能性はあるかもしれないけど……。
もっとも、通常人族がレベル100を超えるということは、ないみたいだけどね。
そこまでレベルを上げるには、相当な経験値が必要だが、それを提供してくれるような高レベルの魔物と出会うことは、通常ではないだろうからね。
整理すると、上層をクリアするにはレベル30以上は必要で、中層をクリアするにはレベル50以上は必要で、ダンジョンマスターに挑むためにはレベル80以上は必要ということになる。
まぁ普通は、中層をクリアするのが限度だろうね。
それに、攻略に必要なレベルを備えていたとしても、一人での攻略はほぼ不可能とのことだ。
通常の迷宮攻略と同じように、パーティーを組んでいないと魔物の物量から考えてもまず攻略できないらしい。
本気で攻略するには、パーティーを組み、かつメンバーが同じようなレベルで、かつ人数も必要らしい。交代要員ということだろう。
下層に挑む場合は、さらに大規模な部隊の編成が必要ではないかとのことだ。
拠点を維持したりする後方支援部隊が必要になるようだ。
そんな感じの『希望迷宮』の情報を、カーミラさんが教えてくれたのだ。
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