758.海の魔物の、領域。

 中庭での『デンデン』の特殊な鞍パーツのお披露目も終わり、本当に解散になったので、俺は密かに、セイバーン公爵領の近海に出かけることにした。

 何故かというと、マグロ漁をする為だ!


 先程の打ち合わせの時に、国王陛下とビャクライン公爵のわがままにより、明日の夜みんなで温泉旅館に行くことになった。

 どうせなら、そこでジョージが握ってくれる寿司が食べたいと思ったのだ。

 しかも、マグロネタで!


 そこで、今日のうちにマグロを獲りに行くことにしたのだ。


 この前、海上貿易をしていた『シンニチン商会』のアンティック君に聞いたところによれば、セイバーン公爵領の近海には、何カ所かマグロが現れるスポットがあるとのことだった。

 その時に、大体の場所を聞いていたのだ。


 そこに、今から出かけるわけである。


 ただせっかく行くので、巨大ザメの浄魔たちがいたという海の魔物の領域に行って、俺とジョージで制圧してこようと思っている。

 制圧といっても、魚の魔物たちを『操魚の矢』を使って、俺とジョージで仲間にするということだ。


 セイバーン公爵領近海の魔物の領域は、そこだけではないようだが、一つだけでも潰しておけば、海上貿易をしている人たちの安全が、その分だけ高まるはずだ。

 それと同時に俺たちは戦力補強ができるし、巨大ザメの浄魔たちの住処を確保できるというわけだ。


 そこでまずは、魔物の領域を制圧することにした。

 帰りにゆっくり、マグロ漁をしようと思っている。


 今回連れて行くのは、ニアとリリイとチャッピー、そして『魚使い』のジョージとその『使い魔ファミリア』陸ダコの霊獣『スピリット・グラウンドオクトパス』のオクティ、虫馬『サソリバギー』のスコピンだ。





 ◇





 セイバーン公爵領近海の魔物の領域に着いた。


 巨大ザメの浄魔『マナ・メガロドン』たちが、元々住んでいた場所である。

 魔域とまではいかないみたいだが、それに近いくらい大きいようだ。

 海なので面積の感覚がよくわからないが、巨大ザメの魔物たちが生息していたのだから、魔域といってもいいくらいの面積があるのではないだろうか。


 この辺一帯の海面は、魔素が濃いようだ。

 だからと言うわけでは無いだろうが……海の色もかなり濃い。

 恐ろしい雰囲気が伝わってくる。


 ちなみに、ここまでは、『マナ・メガロドン』が道案内してくれた。

 俺たちは『マナ・メガロドン』に乗ってやってきたのだ。

 『マナ・メガロドン』は、まるで超巨大な飛行船のようだった。


 一体の『マナ・メガロドン』に、ボックス型のユニットをつけて俺たちが乗れる場所を作ったのだ。

 ボックス型のユニットは、『マナ・メガロドン』の胸びれの後ろあたりの腹の位置に取り付けた。


 それ故、『マナ・メガロドン』の巨体は上に位置していたので、俺たちは下の景色を楽しむことができた。


 首輪というか胴輪をはめるような感じで、巨大な紐状のパーツを作って、その下にボックス型の座席ユニットを取り付けたのだ。


 このボックスユニットには、巨大クラゲ魔物の透明な外皮を使って、展望用の窓が設置してある。

 それで、下の景色が見えたのだ。

 巨大クラゲ魔物の透明な外皮は、強化ガラスとかアクリルのような感じで使用できることがわかった。

 強度の高いガラスのような素材を求めていたので、試しに使ってみたら最高の素材だった。


 ボックス自体の材質も、巨大ザメ魔物の骨と皮で作ったので、強度が高く、かなりの圧力に耐えられると思う。


 おそらく、このまま『マナ・メガロドン』が海の中に潜ったとしても、潜水艦のようになるのではないかと思う。

 巨大クラゲ魔物の外皮の窓パーツとボックスユニットとの接合面は、巨大クラゲ魔物の体内組織のゼリー状の物質を使って強固に接合してあるので、かなりの水圧に耐えることができるだろう。


 このゼリー物質はかなり優れた物質で、魔力を流すと固まったり、浮遊したりする。

 仲間となった元巨大クラゲ魔物『マナ・アーマークラゲ』が、自分たちの体組織の特徴として教えてくれたのだ。



 この『マナ・メガロドン』の飛行船は、俺たちの新しい移動手段として活用することができそうだ。


 ただあまりにも巨大すぎて、人々が住んでいる市町の上空を通るとすごい騒ぎになってしまう。


 それを避けるために、今回はかなり高度を上げて飛行した。

 普通の人では気づかない高度で飛行してきたのだ。


 飛竜船のように、手軽に使うことはできないが、大人数の仲間たちで出かけたり、何かの作戦のときにはいいだろう。


 『メガロドンシップ』と呼ぶことにした。


『メガロドンシップ』は、潜水艦としても使えそうだ。

 後で試そうと思っている。

 ボックスユニットを下腹ではなく、上に位置するようにすれば、船としても使えるかもしれない。

 ただ人目につくので、潜水艦として運用するのが妥当だろうが。



 俺たちが現れたことに、気づいた魔物がいるようだ。


 水面から飛び出て、襲ってくる魔物がいる。


 胸びれを広げて空を飛んでいる……。

 これは……おそらくトビウオの魔物だろう。

 トビウオか……いい出汁が出るんだよなぁ……。

 いや、そんなことを考えている場合ではなかった。

 トビウオの魔物が集団で襲いかかってきた!


 倒してしまうのは簡単なのだが、基本方針は『操魚の矢』を打ち込んで、仲間にすることだ。

 こいつらは、仲間にしたら結構使えそうだ。

 空を飛べるし、サイズ的にも丁度いい感じなのだ。

 普通のトビウオよりも大きく、八十センチくらいある。

 大きすぎず、小さすぎず、動員しやすい戦力になりそうだ。


 ただ仲間にする為には、『操魚の矢』を打ち込まないといけないが、矢を打ち込む対象としては、ちょっと小さいんだよね。

 下手したら、倒してしまいそうだ。


 でもがんばって、打ち込むしかないんだよね。

 俺とニアとリリイとチャッピーとオクティは、『操魚の矢』を片っ端から打ち込んで、まとめてジョージが仲間にするという作戦にした。


 ちなみに、ニアは矢を射る為に、人型サイズに大きくなっている。


 いまだに慣れないんだよねぇ……。

 いつものサイズのときは何とも思わないんだけど、人型サイズに大きくなると、美少女すぎてドキドキしちゃうのだ。

 まともに顔が見れないという恐ろしい状態になってしまう。

 まぁ、あくまで慣れの問題だと思うので、慣れれば大丈夫だと思うが。


 ちなみにオクティは、矢を射っているわけではなく、『操魚の矢』を八本の腕で投げつけている。

 実は、このやり方が一番効率的かもしれない。

 オクティは大活躍なのだ。

『サソリバギー』のスコピンは、『浮遊』スキルを使って宙に浮いて、オクティを乗せている。

 これにより、オクティが矢を投げることに集中できるようになっているのだ。

 この二人は、かなりいいコンビなんだよね。



 俺たちは地道な作業をやり遂げ、襲ってきた全てのトビウオ魔物に『操魚の矢』を打ち込んだ。

 そしてジョージが見事に仲間にした。

 トビウオの魔物は、全部で六十六体いたようだ。


 矢を打ち込むこと自体は大変ではないのだが、数が多いと面倒くさい。


 この魔物の領域にいる海の魔物の数は、こんなもんじゃないと思うので、微妙にゲンナリしてきた。


 まぁ地道にコツコツやるしかないけどね。

 じゃぁ続き行きますか!



 

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