757.カタツムリに、麦わら帽子。
午後の打ち合わせは、『フェアリー商会』の新しい事業部門の話にまで及んでしまったので、かなり長くなった。
だがそれも終わって、解散になった。
さっきまでの打ち合わせの中では触れなかったが、前から計画していたカレー専門店『イセイチ』ととんかつ専門店『勝負処 かつかつ』の出店計画も、一応進めている。
カレー専門店は、ビャクライン公爵領からはじめてほしいというビャクライン公爵の希望があるので、逆にゆっくりやろうと思っている。
とんかつ専門店については、今ある『フェアリー商会』の各市町の支店の状況を見ながら、始められる支店から随時始めようと思っている。
『とんかつ』は、料理のオペレーションとしては意外とシンプルだ。
揚げる温度と上げる時間がポイントだが、それさえマスターすれば美味しい『とんかつ』ができるのだ。
もちろん材料の問題はあるけどね。
ただ『とんかつ』本体よりも、定食の時に添えられるキャベツの方が問題だ。
キャベツを細く千切りにしないといけないからね。
あの細さが美味しさの秘訣でもあるし。
このキャベツの千切りの方が、技術が必要そうだ。
キャベツを入れたら、千切りになって出てくるカット装置を作りたいとは思っているけどね。
てか……『ドワーフ』のミネちゃんに頼めば、すぐ作ってくれそうな気がする。
後で相談してみよう!
それから一般家庭にも『カレーライス』を普及させる為に、固形のカレールウを作るという計画も進める予定だ。
これについては、ハナシルリちゃんが担当してくれることになった。
ビャクライン公爵領に戻ったら、領城の料理人たちに協力してもらって開発すると言っていた。
俺は打ち合わせが終わって、部屋を出るところで、ハナシルリちゃんと子供たちを誘って中庭に向かった。
中庭では、カタツムリ型虫馬『デンデン』のデンコが待っていた。
密かに念話して、厩舎から移動してくるように伝えておいたのだ。
俺は、昨夜作ったデンコ用の特別仕様の鞍を魔法カバンから取り出した。
俺の渾身の鞍を、ハナシルリちゃんにお披露目するのだ。
それはいいのだが……なぜかさっきの会議のメンバーが、全員ついてきているけど……。
俺としては、子供たちだけを誘ったはずなのに……。
子供たちに続く大人集団の先頭は、国王陛下とビャクライン公爵だった。
また遊んで欲しそうな犬の顔をしている……。
なんだよ、まだ遊んで欲しいのかよ……まぁいいけどさ……。
『デンデン』は、体高が二メートル以上ある。
体長は三メートル以上あり、横幅も一メートルくらいある。
そんな『デンデン』のカタツムリの殻の部分にセットする鞍を作ったので、かなり大型になった。
そして、色々と工夫したのだ。
俺が取り出した特殊な形の大きな鞍を、皆不思議そうに眺めている。
おそらくパッと見で、この使い方わかる人は誰もいないと思う。
巨大な帽子というか円盤のような形になっているからね。
俺はそれをデンコに被せた。
わぁという驚きの歓声が上がる。
何故かというと……『デンデン』の殻の部分に、ちょこんと麦わら帽子を乗せたような形になったからだ。
結構かわいい感じになったのだ。
麦わら帽子というか……つばのある丸い帽子というか……そんな感じのデザインになっている。
ただ麦わら帽子といっても、帽子本体の部分は丸くなく四角っぽい感じのやつだ。
それが『デンデン』の殻の上部に被さった状態になっているのだ。
浅く被っている状態だ。
『デンデン』の周りに、つばにあたる部分が円形に広がる形になっている。
つばの正面の部分……ちょうど『デンデン』の体というか頭の後ろにあたる部分のつばのところから、椅子形状のパーツが降りている。
そこに座れるようになっていて、ハナシルリちゃん用の鞍になっているのだ。
一応、二人座れるようになっている。
これと反対側の『デンデン』の尻尾の方に、同じような椅子状パーツが後ろ向きについている。
後ろ向きに、もう二人座れるようになっているのだ。
荷物を載せてもいい。
そしてつばの左右に当たる部分には、収納式のミニブランコが付いているのだ。
止め金を外すとつばから板材が下に降りる。
板には紐が付いていて、ミニブランコになっているのだ。
『デンデン』の殻の左右に、小さなブランコが垂れ下がるのである。
これは子供たちの遊び用の装備だ。
止まった状態で遊ぶこともできるし、『デンデン』が動いてる状態でブランコを楽しむこともできる。
もっとも、周りの邪魔にならなければだが。
つばの部分は、あまりせり出していないので、小さいブランコしかセットできなかった。
純粋に子供用サイズなのだ。
残念ながら、大人が遊ぶことはできない。
帽子本体のてっぺんにあたる部分は、平らになっていて、荷物を積んだり『サーベルタイガー』のミケが乗ったりできるようになっている。
また内蔵されている柵状のパーツを引き上げて、落ちないようにしてお立ち台のようにすることもできる。
パレードをする時に、ハナシルリちゃんが立てるようになっているのだ。
大人がお立ち台に乗るときの為に、柵状のパーツが長くなったオプションの後付けお立ち台パーツも作ってある。
それをセットすれば、大人もパレードすることができる。
この麦わら帽子型の特殊な鞍は、木剣作りで使った軽くて硬い『ワイルド樫』を使って作ってある。
そして、珍しい白い『デンデン』であるデンコのイメージを崩さないように、真っ白く塗装してあるのだ。
実物を見せながら説明し終わると、皆さんから拍手が起こった。
そして子供たちは待ち切れないようなので、自由に遊んでいいと言ってあげた。
早速ブランコに乗って遊んでいる。
片側では、ハナシルリちゃんがブランコに乗って、狼亜人のセレンちゃんが背中を押してあげている。
もう片側では、『ホムンクルス』のニコちゃんが乗って、リリイとチャッピーが押してあげている。
『サーベルタイガー』のミケは帽子パーツ頭頂部のお立ち台に乗って、気持ちよさそうにしている。
いい感じだ……満足のいく出来である。
そんな俺に、国王陛下とビャクライン公爵が、寄ってきた。
「シンオベロン卿、あのブランコは……やはり大人が乗ったら壊れるのかな?」
「子供たちの安全性を確かめるためにも……一度乗っておくべきなのだが……」
二人は、そう俺に尋ねてきた。
てか、乗りたいんかい!
サイズ的に無理だってわかるでしょうよ!
「そうですね。強度は十分にあると思いますが、サイズ的に……乗るのは無理だと思いますが……」
俺は、突き放すように冷静に答えてやったのだが……。
二人はニヤッとした。
まさか……壊れないからって……乗る気なのか?
まぁいいけどさぁ……。
サイズ的に無理だと思うんだけど、どうやって乗るつもりなんだろう……考えたら負けだな……無視!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます