748.ファングッズは、やっぱり売れる!

 ファングッズとして、『精密画』がどのぐらい売れるか楽しみであるが、それに先立って販売していたファングッズがあった。


 俺は、その売れ行きがすごいという報告を受けていた。


 そのファングッズとは……記念メダル、ペンダント、練習用の木剣の三つだ。


 記念メダルは、今大会のメモリアルグッズであり、かつ『高貴なる騎士団ノブレスナイツ』のファングッズでもあるのだ。

『〜歴史の証言者〜 限定メダリオン『高貴なる紋章ノブレスエムブレム』』という名称で、限定商品として大々的にアピールした。

 なるべく多くの人が購入できるようにと、値段は低めの三千ゴルに設定していた。

 日本円で言えば三千円くらいだ。

 この価格設定が功を奏したのか、すでに五千枚以上売れているらしい。

 売り上げは、一千五百万ゴルを超えている。

 思いついて急遽作ったが、発売して良かった。

 そして、それだけ多くの人が喜んでくれているということも嬉しい。


 ペンダントは、『高貴なる騎士団ノブレスナイツ』の各メンバーをイメージしたファングッズだ。


 彼女たちの特徴的な武器を、デザインしている。

 ペンダントトップが、武器の形のアクセサリーになっているのだ。

 ユーフェミア公爵は二本の剣、長女のシャリアさんは剣、次女のユリアさんは大剣、三女のミリアさんは槍、第一王女のクリスティアさんは二本の剣、護衛官のエマさんは剣、エレナ伯爵は二本の棍、執政官のキャロラインさんは剣、アンナ辺境伯は矢となっている。


 これは、記念品というよりもファングッズとしての意味合いが強いので、高めの値段設定で、一つ一万ゴルで販売した。


 全部で九種類あるわけだが、これも総数ですでに千個以上販売しているとのことだ。

 売り上げにして、一千万ゴル以上になっている。

 九種類はどれもまんべんなく売れているようだが、やはり一番数が出ているのは、この領になじみが深いユーフェミア公爵と、その三姉妹のペンダントのようだ。

 お金に余裕がある人だと思うが、九種類全部購入する人もいたそうだ。

 まぁ揃えたくなるよね。その気持ちはよくわかる。

 ファンなら、お金に余裕がなくても、全部揃えたくなるよね。


 練習用の木剣は、大会期間中に発売していた通常のものとは別のファングッズとしての木剣だ。

 通常の木剣の売れ行きを聞いた時に、ファングッズとしてユーフェミア公爵モデルやマリナ騎士団長モデルを売り出したら面白いんじゃないかと閃いていた。

 そして、すぐに作って販売していたのだ。


 それが襲撃事件後のこの三日間でかなり売れたらしい。


 ちなみに『木剣二対組——ユーフェミア公爵モデル』は、ユーフェミア公爵が実際に使っている二本の剣と似た形状の木剣なのだ。

 『木槍——マリナ騎士団長モデル』は、マリナ騎士団長が使っている槍に似せてある。


 この二種類は、練習用の木剣というよりも、ファングッズという意味合いが強いので、強気の価格設定にした。

『木剣二対組——ユーフェミア公爵モデル』は三万ゴル、『木槍——マリナ騎士団長モデル』は、二万ゴルという値段にしたのだ。

 これが、昨日一昨日の二日間だけで、それぞれ二百セット以上売れているとのことだ。

 この二つだけで、一千万以上の売り上げになったらしい。

 予想外の売れ行きだ。


 やはり、ユーフェミア公爵とマリナ騎士団長の人気が凄いということだろう。



 それからファングッズと似たようなものとして……俺が作って販売を始めていた『従者獣』のサクラ、ツバキ、アスターの『ぬいぐるみ』も爆発的に売れているらしい。

 ピンク色の豹の赤ちゃんの『ぬいぐるみ』なわけだが、我ながら可愛くできたと思っていたんだよね。


 襲撃事件の時に、従者獣として活躍した姿を見た人たちも多かっただろうから、それで更に人気が出たのかもしれない。


 一体二千ゴル、三体セットで五千ゴルなのだが、三体セットが売れしているそうだ。

 昨日の夜までの間に、三百セット売れているとのことだ。

 百五十万ゴル以上の売り上げになる。

 今日も売れ続けているようだ。


 ちなみに子供のチャンバラ用に作った『剣のぬいぐるみ』は、一つ三千ゴルで販売しているのだが、これもそれなりに売れている。

 百個近くは売れているとのことだ。



 リリイとチャッピーを始めとした俺の仲間や、孤児院の子供たち、元『花色行商団』の子供たちには、すでにセットでプレゼントしてある。


 みんな大喜びだった。


 ビャクライン公爵家長女で、見た目は四歳児中身は三十五歳のハナシルリちゃんも、大喜びだった。

『ぬいぐるみ』シリーズも充実させようと、鼻息荒く念話を入れてきていた。

 俺も同じように思っていたので、同意しておいた。


 ちなみに、面白かったのは、『従者獣』の豹の赤ちゃんたちの『ぬいぐるみ』を見て、俺の動物型の仲間の一部が、自分の『ぬいぐるみ』も作って欲しそうにしていたことだ。


 特に『魚使い』ジョージの『使い魔ファミリア』陸ダコの霊獣オクティは、あからさまだった。


「我の漆黒の異形を型取りし、布人形をわらべ達の『守り魔王』として、側に置くことを許可しようぞ。そのわらべ達は、喜んで我が漆黒の眷属になるだろう!」


 オクティは、俺に近づいてきて、そう言ったのだ。

 相変わらず中二病をこじらせているので、微妙に何を言っているかよくわからないが……要は自分の『ぬいぐるみ』を作って欲しいってことだと思う。


 まぁオクティの存在自体が、まん丸なデフォルメされたようなタコだから、そのまま『ぬいぐるみ』にしても充分可愛いんだけどね。

 ただ作るとしても……漆黒じゃないし!

 オクティは、可愛いピンク色だからね。

 そして『ぬいぐるみ』を買った子供たちが、漆黒の眷属になっても困るんですけど!

 それから……『守り魔王』ってなによ!? ……そこは『守り神』でいいんじゃね!


 俺は、心の中でそんなツッコミを入れつつ、オクティには、前向きに検討するとだけ答えておいた。


 本人に言うと期待させるから言わなかったが、実は俺もオクティを『ぬいぐるみ』にしたら可愛いと思っていたんだよね。

 オクティって、中二病チックな発言がなければ、つぶらな瞳の可愛いピンク色のタコだからね。

 まぁつぶらな瞳の片方は、眼帯をしているわけだが……。


 オクティは、俺の仲間たちの中では主役級の存在感というか面白さがあるんだけど……一般の人たちには知られていないんだよね。

 それを考えると、『ぬいぐるみ』にしても売れるかどうかわからない。

『ぬいぐるみ』を見た人は、「何のぬいぐるみ?」みたいな感じになっちゃうと思うんだよね。

 動物シリーズの一つみたいな感じなら、いいかもしれないけどね。


 やはり『従者獣』の『ぬいぐるみ』に続く第二弾として妥当なのは、五神獣の化身である『化身獣』の『ぬいぐるみ』だと思うんだよね。





 ◇





 俺は、屋敷の個室で休んでいる『魔盾 千手盾』の付喪神フミナさんと、フミナさんがつきっきりで世話をしているニコちゃんを訪ねた。

 ニコちゃんは、移動型ダンジョン『シェルター迷宮』の生体コアにされていた人造生命体『ホムンクルス』の幼女だ。


 二人の様子を見る為と、さっき思いついた『ブロマイド』の製造について相談するために来たのだ。

 元々相談しようと思っていたこともあるので、その件も含めて話をしようと思っている。


「グリムさん、お帰りなさい」


 フミナさんが、明るく出迎えてくれた。

 だいぶ元気になったようだ。


「ゆっくり休めていますか?」


「はい。私は大丈夫です」


「ニコちゃんはどうだい?」


「あい、大丈夫……です」


 ニコちゃんも、微笑みながら答えてくれた。

 見た感じも、だいぶ元気になってきたようだ。


 俺は、早速本題に入った。

『精密画』スキルを使って『ブロマイド』を作って、『フェアリー商会』で定期的に発売していこうと思っているという話をしたのだ。

 そして、それにあたってフミナさんに『ブロマイド』制作を手伝ってもらえないかという提案をした。


「なんか面白そうですね! ぜひ私にもやらしてください」


 フミナさんは、あっさりと了承してくれた。


 ここに来る前に、『魚使い』のジョージに話をしたら、ジョージもノリノリで了承してくれたので、俺が想像した通りに、俺とジョージとフミナさんの三人で『ブロマイド』を作っていくことになった。

 ただなんとなくだが……他にも作りたいと立候補する仲間が現れるかもしれない。

 ハナシルリちゃんには、この話を振ってないから、後で怒って自分もやると言ってきそうな気もするが……まぁその時は、やらせてあげればいいだろう。

 てか……ハナシルリちゃん、やりたいことが多すぎて忙しいと思うんだよね。

 それもあって、声をかけなかったんだけどね。


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