747.身近な娯楽の、アイデア。

 最後の『炊き出し』が終わって、俺たちは屋敷に戻ってきた。


 俺は、貴族女子のみんなや仲間たちに、記念品として、四種類の『精密画』をセットにして、プレゼントした。

 みんな大喜びだ。

 改めて自分のものとして手に取って、憧れるような感じで見つめている。


 ほとんど写真のような出来栄えだから、紙の中にそのままのユーフェミア公爵とかが存在している感じなのだ。

 みんなが大いに驚き、かつ憧れの眼差しで見つめるのはよくわかる。


 そして、今回俺に描かれなかった貴族女子たちや俺の仲間たちは……何故か俺をじっと見ている。

 描いてほしいということなんだろうか……?


 てか……少なくとも俺の仲間たちは『共有スキル』にセットされているんだから、自分で描けると思うんだけど……。

 そういうことじゃないのかなあ……人に描いてもらいたいってことかなぁ……?


 なんとなく、わからなくもないけどね。


 料理とかでも自分で作るよりも、人に作ってもらうと嬉しいという人は結構いるし、俺もそうだからね。


 しょうがないので、俺に描いてほしい人は、今度順番に描いてあげるというその場しのぎの声をかけたところ……みんなが手を上げながら、俺に押し寄せてきてしまった。


 『はい、はい、はい、次は私!』というノリで、立候補が相次いでしまったのだ。

 そして……どさくさに紛れて、溺愛オヤジことビャクライン公爵とシスコン三兄弟も手を上げてるし……。

 どさくさに紛れるのは、やめようよ!

 オヤジの絵とか書きたくないし!


 まぁ冷静に考えれば、わからなくもないけどね。

 自分の姿をかっこよく『精密画』として残したいという気持ちは、男も女も関係ないからね。


 ただ俺的には……ビャクライン公爵とシスコン三兄弟を描いている自分を想像するのが……辛過ぎる……。


 今回は、俺もスキルの力を試してみたかったし、見本という意味もあって『精密画』を描いたわけだが、今後は誰かを担当者にして『精密画』を増やしていきたい。

 『ブロマイド』という名前にして、今一般に流通している『精密画』とは一線を画したものにしてもいいかもしれない。

 『トレーディングカード』とかにある『〇〇シリーズ』とか『第○期』のように、シリーズとして定期的に発売し、待ちわびるファンを作るのも楽しいかもしれない。

 一つ一つが高いし、コレクションの価値を考えると乱発はできないが、定期的に少しずつリリースしていくのは、いいと思うんだよね。


『精密画』作成の担当者の第一候補は、元々のスキルの所持者であるフミナさんだ。

 少し話したときに言っていたが、絵を書くことが大好きなようだ。


 ただ『精密画』よりも『絵画』の方が好きみたいだった。

 彼女は『絵画』スキルも持っているからね。


 あと『精密画』を担当する候補としては、『魚使い』のジョージもいいかもしれない。

 彼はアイドルオタクだったから、アイドルブロマイド的な発想で、いい『精密画』を描いてくれるような気がするんだよね。

 ジョージは、サルベージ事業本部を担当しているが、基本的に自由にさせてあげている。

 これから作ろうと思っている水族館の準備もあるが、『精密画』を書いてもらう事は、それほど負担にはならないと思うんだよね。


 価値を下落させない為にも、『ブロマイド』を乱発するつもりはないので、少しずつ種類を増やすつもりだ。

 それなら、誰を担当者にしても、時間的な負担はそれほどないと思うんだよね。

 もっと言うと、俺がこのままやり続けてもいいくらいだからね。


 あとで、フミナさんとジョージと相談してみよう。

 どちらか、やりたいと手を挙げてくれたほうに頼むことにしよう。

 二人とも手を挙げてくれたら、二人に頼んでもいいし。

 なんとなく……俺も含めた三人で、楽しくお絵かきしている姿が思い浮かんでしまった……。


 ちなみに、フミナさんが持っている『絵画』スキルは、俺も『波動複写』でコピーしているので持っている。

 もちろん、『共有スキル』にもセットしてある。


 まだ『絵画』スキルを試していないんだけど……絵心がない俺でも綺麗な風景画とかが描けちゃうんだろうか……?


 というか……この『絵画』スキルで……漫画とか描けないかなぁ……。


 まぁ絵画と漫画は違うような気もするけど……。

 多分……漫画独特の構図とか描き方は、『絵画』スキルでは補正されないよね……。


 でも……漫画は無理でも……『絵画』スキルを使えば、絵本とか……紙芝居ぐらいは作れるのではないだろうか!?


 そうだ! 今度、絵本と紙芝居を作ろう!


 各市町にある屋台が出ている広場とかで、紙芝居をやったら子供たちだけじゃなくて、大人も喜ぶに違いない。


 そして紙芝居なら吟遊詩人ほどの力量がなくても、演じられるのではないだろうか。

 娯楽の少ないこの世界の人々にとっては、手軽に楽しめる娯楽として喜ばれる気がする。


 広場に屋台を出す感覚で紙芝居をやってもいいかもしれない……。

 考え方としては、紙芝居を提供する屋台という感じだ。

 紙芝居を演じる屋台と言ってもいい。


 屋台自体を紙芝居専用に改造して、普通の紙芝居よりも大きい絵を展示するようにしたら、迫力も出るし、面白いのではないだろうか。


 そしてそれが発展したら……将来人形劇とかもできるかもしれない。


 各市町に歌劇団を作ったり、その劇場を作るのは大変だが、紙芝居を演じるスタッフを配置したり、屋台で大型紙芝居や人形劇を演じるのは、スタッフを教育すればできるような気がする。


 夢が膨らんできた!

 てか、めっちゃ楽しくなってきた!


 紙芝居を演じるときに、吟遊詩人の弾き語りとコラボしてもいいね!

 吟遊詩人の素晴らしい演奏と情緒たっぷりの語りに、紙芝居の絵がついていたら、見ている人たちはより楽しいよね!


 吟遊詩人の活動や歌劇団の運営をする『芸能事業本部』の中に、紙芝居部門や人形劇部門を作ろう!



 それから絵本を作って出版するのも良い。

 子供たちが喜びそうだ。


 これは、人々を娯楽で楽しませて、精神波動を高めてもらおうという今後の俺たちの活動方針にもぴったりと会う。

『フェアリー商会』の事業ではあるが、国王陛下を始めとしたいつものメンバーにも相談して、すぐにでも取り掛かろう!



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