746.自分で作って、自分で集める。
俺が描いた『精密画』は、四種類だ。
手に入れた染料……いわゆる絵の具を使って、頑張って描いたのだ。
何色も使うのは、面倒くさかったが、なんとか描くことができた。
自分ではかなりの時間を費やした感覚だったが、実際には二時間くらいだった。
マスカット家から帰ってきて、『炊き出し』までの間に描き上げてしまったのだ。
スキルレベル10のお陰だと思うが、迷うことなく手が動くからね。
まぁ描いた絵の大きさが小さかったというのもあるけど。
A4用紙くらいのサイズが二枚と、普通の写真くらいのサイズの絵を二枚描いたのだ。
慣れたら、もっと早く描ける気がする。
そして俺の場合、一枚描いてしまえば、あとは『波動複写』で大量にコピー生産できるので、写真を印刷するように何枚でも作れてしまうのだ。
普通の絵師は、一枚一枚手書きするわけだから、販売する為のまとまった数を用意するにも、かなり時間がかかるはずだ。
『
人数が多いので、上半身のみ描き、記念写真のような構図になっている。
ちなみに『
『セイリュウ騎士団』のマリナ騎士団長の『精密画』は、いつものセイリュウ騎士の鎧姿の凛とした、そして強そうでかつ気品のある姿で描かれている。
サイズは、写真くらいのサイズだ。
ブロマイドと言っていいだろう。
ユーフェミア公爵の『精密画』は、『
最高にかっこよく、そして彼女の美しさを再現した……我ながら素晴らしい『精密画』になったと思う。
これもサイズは、写真くらいのサイズになっている。
セイバーン家の三姉妹の『精密画』は、三人が『
構図は普通だが、その代わりに全身姿が描かれているのだ。
美人三姉妹が揃って微笑んでいるので、若い男たちは、キュンキュンしてしまうに違いない。
A4用紙サイズを縦にして描いているので、それなりの迫力がある。
この四種類の『精密画』の価格設定は、俺的には強気の設定にした。
ただ、『精密画』を見せた仲間たちからは、もっと高くてもいいんじゃないかと言われたけどね。
A4用紙くらいのサイズの二つの『精密画』は、五万ゴルにした。
ちなみに『精密画』の名称は、『結成!
写真くらいのサイズの『精密画』は、一万ゴルにした。
名称は、『領の誇りマリナ騎士団長』と『麗しのユーフェミア公爵』にした。
最初はいろんなワードを入れて、長い名称になってしまったのだが、シンプルなものに修正したのだ。
もし四種類全部を購入してくれると、十二万ゴルとなる。
結構な値段になるが、そもそもファングッズだし、プレミアものだし、いいだろう。
それに、この大会を見に来ているような人たちは、基本的に裕福な人が多いと思うので、購入するのではないだろうか。
というか……見たら、買わずにはいられない出来だと思うんだけど。
ファンなら絶対買うと思うんだけど……売れ行きが楽しみだ。
今改めて思ったが、今後、定期的にリリースして行こう!
すごく楽しい!
そして、俺のコレクター魂も活性化してきた!
まぁ集めるものを、自分が作り出すという変な状態ではあるけどね。
今思い出したが……そういえば俺は、子供の頃、好きなキャラクターやメカなどを紙に描いたり、粘土で作って数を揃えて遊んで喜んでいた。
どうもそれと同じことを、やろうとしているらしい。
少し微妙だが……子供の心を持ったおじさんということで、自分を許してあげよう……。
見た目は青年、中身はおじさん……でも少年の心も持っている……なんのこっちゃ!
まぁそれはともかく……俺のコレクター魂は置いておくにしても、世の中の人々にも喜ばれるはずだ。
どこの世界にも、いつの時代にも、ファン心理のようなものはあるはずだからね。
そして、『精密画』の企画は、いくつでも思いつく!
例えば……『神獣の巫女』シリーズとか……『神獣の巫女』と『化身獣』が一緒になっているやつとか……『神獣の巫女』が全員集合してるやつとか……。
それと……『光柱の巫女』の『精密画』を作ってもいいな……。
そうだ! 教会で販売して、教会の運営資金や孤児院の運営資金に当ててもらってもいい!
俺が『精密画』を大量に作って、寄進というかたちで提供して、テレサさんたちに販売してもらえば、かなり大きな収入になるだろう。
これは、いい方法だ!
そのうち孤児院の子供たちの中から、絵が上手な子や、スキルを身に付ける子が出てきてくれたらいいなぁ。
そうすれば、自分たちで『精密画』や『絵画』を描いて販売することもできる。
あとで提案しよう。
それから、今回『精密画』を販売するに当たっては、当然ながらモデルになった皆さんには事前の許可を取ってある。
『炊き出し』に出かける前に、みんなに『精密画』を見せたのだ。
『精密画』スキルを使って描いたと説明した。
そして『精密画』スキルは、この前の戦いの後にレベルアップして身に付いたということにした。
今までの偽装ステータスでの公開レベルは45だったが、今回の戦いの後に55に変えておいたのだ。
その時に、いくつか『通常スキル』も追加しておいた。
その中に、『精密画』スキルも入れておいたのだ。
『精密画』スキルは、本当は、俺がレベルアップによって身に付けたのではなく、仲間になった『魔盾 千手盾』の付喪神のフミナさんが持っていて、それを『波動複写』でコピーしたんだけどね。
俺の描いた『精密画』を見て、みんな驚いていた。
しばし絶句していた人も何人かいた。
どうも、あまりにも出来が良すぎて、衝撃だったらしい。
そしてスキルを身に付けたばかりなのに、これほどの絵が描けるのは凄いとベタ褒めされてしまった。
俺の『絆』メンバーの仲間たちは知っていることだが、本当はスキルレベル10なのである。
『固有スキル』の『ポイントカード』の『ポイント交換』を使って、一気にスキルレベルを10に上げているのだ。
もしスキルレベル1の状態だったら、もともと絵心がない俺では、全く描けなかったと思う。
スキルレベル1程度の補正ではどうにもならないくらい……絵心がないからね。
まぁ兎にも角にも、みんなから絶賛してもらったわけだが、特にモデルになった人たちからは、ほんとに驚かれてしまった。
そして、セイバーン家の三姉妹からは、いつもの調子で言われてしまった。
「こんなに素敵に描けるなんて……グリムさんは本当に何者ですの?」
「こんな『精密画』、今まで見たことありませんわ。もうセイバーン家に来てもらうしか……」
「嬉し過ぎる! もう私のものになりなさい!」
「「ミリア!」」
という、お約束な感じの会話が展開していた。
そして何故か、ユーフェミア公爵とマリナ騎士団長は、特に何も言わなかった。
だが、いつになく頬が緩んでいたので、喜んでくれていると解釈した。
他の『
特にアンナ辺境伯は、「これはいいですわね。今回の大会の記念にもなりますし、みんなそれぞれ飾っておけますものね」と言って、すごく喜んでくれていた。
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