725.生活魔法の巻物を、競り落とせ!
『闇オークション』第一部が終わり、第二部が始まった。
第二部は『魔法道具・魔法素材・魔法薬』の部門だ。
この部門に俺が出品した物はないが、何か面白いものがあれば落札したいと思っている。
だがこの部門の対象品は、希少でいつも出品数が少ないらしい。
今回出品されているのも、わずか五種類だ。
魔法道具作りの材料になる『魔火石』『魔水石』『魔風石』『魔土石』が、セットで出品されていた。
俺は特に欲しいとは思わなかったのだが、安かったので落札してしまった。
意外と人気のない品だったのだ。
マリナ騎士団長が言っていたが、今では魔法道具を作れる人がほとんどいないので、その材料になる魔法の石も、人気がないのだろうとのことだった。
拳大の石が四個のセットで、百万ゴルスタートだった。
競る人もまばらで、百二十万ゴルで止まった感じだったので、冷やかし半分で札をあげたら、百二十一万ゴルで落札してしまったのだ。
結果的に、めっちゃ安く競り落とせてしまった。
マリナ騎士団長が、良い買い物だったと笑っていた。
マリナ騎士団長によれば、本来なら、四、五百万ゴルの価格が付くものらしい。
つまり魔法の石一個について、百万ゴルくらいの相場があるということのようだ。
次に出品されていたのは、『魔法のランプ』で、三十万ゴルで落札されていた。
『魔法の水筒』も出品されていて、それは六十万ゴルの落札価格だった。
『魔法の水筒』は、旅をする人などにはかなり便利な魔法道具なので、いい値段がつくようだ。
ただこれも、公式オークションならもうちょっと高い値段がつくだろうと、マリナ騎士団長が言っていた。
そして……俺がワクワクで待っていた、四つ目の品の番がきた。
その品は……『魔法の巻物』だ。
これは、絶対に落札しなければ!
「さあ皆さん、次の品は、大変珍しい魔法の巻物です! この巻物は、失われた生活魔法の巻物なのです! 専門家の話によりますと、『洗濯』という生活魔法を魔術で再現し、三種類の巻物として完成されているとのことであります。『
司会者が合図を送ると、舞台に泥だらけの男が上がってきた。
その男に向かって、三人のスタッフが構えている。
それぞれ巻物を持っているのだ。
「
一人のスタッフが、
すると、その巻物から泡が放出された!
まるで、大量のシャボン玉だ!
吹きつけられた泡は、男にまとわりつき……汚れを落としている感じだ。
「
もう一人のスタッフが、
泡と共に汚れを洗い流している。
「
最後のスタッフが、
びしょ濡れだった男が、だんだん乾いていく。
どうもただの風ではないようだ。
乾き方が非常に早い。
水で汚れたステージまで、乾いていっている。
乾燥に多少の時間はかかるものの、男は見事に綺麗になった。
これは、『洗濯の巻物三点セット』という『名称』のようだが、お風呂というか……シャワーの巻物と言っていいのではないだろうか……。
全体的に……ワイルドな感じだが……めっちゃ便利とも言える!
「なるほど……うまい演出だね。これだったら、入札が入るかもね。戦闘で使えるようなリユース型の巻物なら人気があるだろうが、それ以外はあまり人気がないんだよ。でもこの便利さなら、意外と入札する者がいるかもしれないね……」
マリナ騎士団長が、そう言って感心している。
この『闇オークション』の運営は、結構うまいようだ。
俺としては……人気がないままのほうがよかったのだが……。
でもそんなことは関係ない。
俺は、何が何でも落札するのだ!
「どうですか、皆さん? この便利さ! それではこの巻物三本セット……三百万ゴルからのスタートです!」
おお! 安い!
……と思ったのは、俺だけだったようだ……。
入札が渋い……。
まぁよく考えたら、大金を払ってまでこの巻物を必要とする人はあまりいないかもしれない。
洋服を洗ったり、お風呂に入ったりするという機能に対して、三百万ゴル出す人は多くないよね。
これは安く買える予感……。
俺を含めた三人が、一万ゴルずつ競り上げるという渋い展開だ。
俺は、マリナ騎士団長のアドバイスに従い、はやる心を抑えて一万ずつの渋い競りに付き合っているのだ。
こういう場合、ある程度思い切った指値をして、他を諦めさせるという戦法もあるらしい。
だが、一万ずつ上げて、うまく途中で諦めてくれれば、それが一番安く落とす方法とのことだった。
そしてマリナ騎士団長の読み通り、三百八万ゴルで落札することができた!
素晴らしい巻物をゲットした!
これで突然、仲間たちが汚れてしまった場合でも、わざわざお風呂に入りに戻らなくても、綺麗にできるのだ。
そして、それぞれの巻物は……少し工夫すれば違う用途でも使えるような気がする。
『
『
『
俺が、そんなことを思いながらニヤニヤしていると……マリナ騎士団長が少し呆れたような顔で俺を見た。
「まったくあんたって子は、面白いね。この巻物を落札して、そんなに嬉しいのかい? 戦闘に役立つわけでもないのにね。ほんとあんたは面白いよ。ハハハハハハ」
マリナ騎士団長は、そう言うと、最終的にはまた俺の肩を抱いた。
完全に、戦友みたいな感じの間柄になってきてるんですけど……。
ちなみに一緒に参加しているルセーヌさんとゼニータさんの特捜コンビは、当初の予定通り、オークションそのものではなくオークション参加者について探っている。
もちろん、みんな仮面を付けているので、顔はわからないが、大体の特徴や競り落とす品などをメモしているようだ。
怪しい商会も探っているらしい。
当然オークションの主催者は、会員の情報は公開してくれないし、誰が何を出品したかということについても、秘密になっている。
地道に情報を集めるしかないようだ。
そもそも、オークションの主催者も謎だからね。
『闇オークション』は違法だから、摘発してしまえば簡単なのだが、しばらくはそのままオークションをさせて、闇市場に珍しい魔法道具や武器が出るのを期待するという作戦になったからね。
泳がせる中で、怪しい魔法道具や武器を出品している商会が特定できれば、いいのだが。
何か特別なルートを持っていたりする可能性があるからね。
そういう情報を、知りたいのだ。
また俺としては、奴隷などを出品している商会を突き止めて、潰してほしいんだけどね。
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