724.競りに、熱くなる!
オークションスタートの第一品目を、俺の出品した『マシマグナ第四帝国』の硬貨にしたのは、主催者側としては大成功だったようだ。
一気に会場の熱が高くなり、入札が活発になっている。
次々に物品が競りにかかっていく。
綺麗な壺や、豪奢な調度品などが出品されている。
大きな鏡も貴重品のようで、三種類出品されている。
三つ目の鏡は、全身が映るほど大きく、金縁の豪奢な作りで目を引く逸品だ。
マリナ騎士団長が欲しそうに見惚れているので、俺は彼女のために入札することにした。
俺が入札を始めると……
「なんだい、これが欲しいのかい? これはみんな欲しがるから、競り上がるよ。相当な高値になるから、やめときな。公式オークションでも、お目にかかれないほどの逸品だからね」
マリナ騎士団長は、俺を諫めつつも、最後にこの品に対する高い評価を口にした。
そんなことを言われたら、競り落としてプレゼントしたくなっちゃうよね……。
マリナ騎士団長のアドバイスに苦笑いだけして、普通に競りに参加し続けた。
俺と競り合う人が三人もいて、壮絶な競り合いになった。
俺は、なぜかスイッチが入ってしまい、隣で静止するマリナ騎士団長を無視して競り続け、競り勝ち、無事に落札したのだ!
途中から意地になってしまい……冷静さがほぼなくなっていた気がする。
そのせいもあって、最終的な落札金額は……二百六十万ゴルになってしまった。
マリナ騎士団長によれば、この品ほど見事なものかどうかは別にして、鏡の大きさ自体で考えれば百万ゴルも出せば買えるとのことだった。
まぁそれは大きさの話であって、デザイン性を考えれば……落札した価値はあったのではないだろうか。
俺は、そう自分に言い聞かせ……納得させた……。
マリナ騎士団長の為に競り落としたとは言ってないから、後でサプライズプレゼントして驚かせよう!
ちなみに、隣で見ていたマリナ騎士団長は、呆れて途中からは何も言わなくなっていた。
そして落札した瞬間の俺のガッツポーズを見て、笑っていた。
「無欲なあんたが、まさか競り合いに白熱するとはねぇ……。面白いじゃないか! こういうのも悪くはないね」
呆れていたマリナ騎士団長だが、最終的にはご機嫌になり、また俺の肩を組んできた。
なんか……男同士の友達みたいな感じになってきているが……。
さっき『マシマグナ第四帝国』の硬貨で二百十万稼いだが、それを大きく超えた二百六十万の落札をしてしまった。
まぁそれでも、硬貨が予想だにしない金額が落札されてくれたお陰で、実際の出費は五十万ゴルで済んでいるわけだけどね。
ただ実際のところは、オークションの手数料として、出品物の落札金額の10%を差し引かれるから、硬貨の落札代金として、実際手元にくるのは、二百十万ゴルから手数料の二十一万ゴルを引いた百八十九万ゴルとなるのだ。
この手数料は、公式のオークションだと5%程度らしいが『闇オークション』は高いようだ。
他にも少し変わった調度品やペンダントやブローチなどの装飾品が出品されていたが、特に欲しいとは思わなかったのでスルーした。
冷やかし程度に、札はあげちゃったけどね。
「さあ皆さん、第一部、最後の二品になりました! その一つ目は……これまた幻の古代文明『マシマグナ第四帝国』の品であります。こちらの指輪は、なんと、指にはめると自動でサイズが調整されフィットするという驚きの機能が付いた逸品であります! そしてこの赤き輝き……三千年の時を超えたルビーの輝きをご覧ください! 古の貴婦人を思わせる上品な作りのこの指輪……一千万ゴルからのスタートになります!」
司会者が、かなり興奮気味に説明し、すぐに競りが始まった。
もちろん、この指輪は俺が出品したものだ。
これも試しに出品してみたのだが……一千万ゴルからのスタートに少し驚いた。
見た目は、ルビーが一つ付いた普通の指輪だからね。
上品な作りの指輪と説明されていたけど……要はシンプルな……宝石が一つ付いた普通の指輪なのだ。
色んなデザインがあった中で、一番シンプルなのを出品してみたんだけど……それでも一千万ゴルからのスタートになるとは……。
やはりこれも、古代文明の遺物だからだろう。
あとは、リングの部分が自動調整でフィットするという魔法機能が珍しいからね。
競りは、どんどん釣り上がっていく……。
マリナ騎士団長が、ニヤニヤしている。
多分、マリナ騎士団長が思っている価格よりも、いい金額になっているから嬉しいのだろう。
……あっという間に三千万ゴルを超えた!
そして……入札者は、二人に絞られたようだ。
デッドヒート状態だ……指値の金額が百万単位だ……。
そして……五千万ゴルを超えた……
「さぁ、五千五百万ゴルです……もうよろしいですか? 決めちゃいますよ……。はい、上がりました、五千六百万ゴル……おおっと、上がった、五千八百万ゴル……。もう上がりませんか? ……はい、これで決まり!」
——カン、カン、カン
決定した。五千八百万ゴルにもなってしまった……。
なんかすごいわ……思わずにやけてしまった。
これも希少価値のなせる技だね……。
俺が持っているものを、まとめて出品したら、あっという間に値崩れしてしまいそうだ。
やはりこれらの装飾品も、無闇に流通させられない。
俺のコレクションアイテムにしつつ、知り合いにプレゼントするという使い方になりそうだ。
ただ、公式オークションには、一度は出品してみようと思うけどね。
「皆様、これが第一部最後の品です。これも、指輪同様、『マシマグナ第四帝国』の遺物でございます。このティアラを見てください。この豪華な……まるで王族の方が付けていたのではないかと思われる、華やかなデザインです。これをつけたら、殿方の視線が集中すること間違いなしです! マダムの中でも、一際輝くでしょう! 上品でかつ煌びやかな古のティアラ……三千万ゴルからのスタートです!」
第一部、最後の競りが始まった。
もちろん、これも俺が出品したものだ。
シルバーフレームの一般的なデザインのティアラだが、宝石がいくつも埋め込んであって豪華なのは間違いない。
これもすごい勢いで、競り上がっていっている……。
一体いくらになっちゃうんだろう……めっちゃ楽しみだ!
……当然のごとく、あっという間に五千万ゴルを越えた。
指値の単位も、百万単位だ。
そして七千万ゴルを超えた時点で、また二人に絞られた。
そして百万ずつを指し合うデッドヒートの末に……八千八百万ゴルで落札された!
驚きの金額だ。
指輪とティアラの二つだけで、一億四千六百万ゴルになってしまった。
なんか……テンション上がるわ!
やっぱ、オークション楽しいなぁ!
「やはり……このぐらいの値は付くか……。まぁ高値が付いたのは、『鑑定』結果のおかげでもあるね。『鑑定』で詳細を見た時に、『マシマグナ第四帝国』の物とわかる説明が表示されたからね。そのお陰で、皆安心して競りに参加できてたんだよ」
マリナ騎士団長が、そんな感想を言った。
確かに、これらの宝石には、詳細表示と念じると『マシマグナ第四帝国末期の作品』と表示されるのだ。
これもこの世界のシステムの不思議なところで、作られた年代や作者が表示される装飾品もあれば、何も表示されない装飾品もあるのだ。
相変わらず、どういう基準でそうなっているのかは、全くわからないが。
この世界のシステムの謎というか……気まぐれな部分かもしれない。
そんな感じの部分が、結構あるんだよね、この世界のシステムって。
ただ、もしその表示が確認できない場合でも、過去に同じような古代文明の遺物が流通していた記録があれば、そのデータをもとに、鑑定する人間が評価をして、『ほぼ間違いない』というような鑑定書をつけたりして、出品するのだそうだ。
その鑑定書があれば、それを真実として、皆入札するらしい。
だが一番確実なのは、『鑑定』スキルで鑑定して表示されることなので、今回はもちろんそのことも、事前にアナウンスされているのである。
だから皆安心して、入札していたのだろう。
『マシマグナ第四帝国』の硬貨といい、この装飾品といい、試しで出品してみたのだが……思わぬ大金が手に入ってしまった!
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