684.首領のアジト、発見!

『操縦型人工ゴーレム 魔機マギヒュドラパレス』通称『メカヒュドラ』の中の探索が一通り終わったが、肝心の『正義の爪痕』の首領のアジトの情報が発見できない。


 そこで俺は、ひとつの作戦を思いついた。

 それは、この『メカヒュドラ』のシステムを利用した作戦だ。


 この『メカヒュドラ』も、『操縦型人工ゴーレム 紅II刃べつじん二十八号』通称『べつじん28号』と同じように魔法AIで簡単な動作を命じ、実行させることができるのだ。


 操縦システムも、ほぼ『べつじん28号』と同じだった。

 簡単な操作で済む『フライトシステム』、戦いの時などに威力を発揮する『ムーブトレースシステム』、それが使えないときの『サブ操縦システム』という作りになっている。


 この『メカヒュドラ』の『ムーブトレースシステム』は稼働できる状態で、実際俺が乗り込んだ時に、首領が使っていた。


 魔力認証による操縦者の登録システムというセーフティー機能も付いているようだが、システムが壊されている。


 俺にとっては好都合で、俺でもすぐには操縦することができる。



 俺はマニュアルに従い、『メカヒュドラ』を起動させた。


 そして、事前に外に出しておいた機械のヒュドラ首四つを、元の位置に戻した。


 意外と操縦は難しくないのだ。

 というか、マニュアルを見ながら、ゆっくりやっているからできている。


 そして、『フライトシステム』を起動する。


 問題なく空中に浮上した。


 同様にステルス機能も起動でき、姿を消すことができているようだ。


 そして俺は、『魔法AIモード』を起動する。


「格納庫に戻れ」


 俺は魔法AIに命じてみた。


 すると……すぐに動き出した!


 作戦成功のようだ!


 アジトが分かる資料を発見することはできなかったが、この『メガヒュドラ』の魔法AIが記憶していて、その場所に戻るのではないかと思いついたのだ。


 その思いつきは、大正解だったのだ。


『メカヒュドラ』は、当然のことながら何の躊躇いもなく、自動でアジトに帰還している。


 俺は、魔法AIに最短最速で向かうように追加で指示を出した。


 このまま一気に、アジトを潰してしまおう!





 ◇





 少しして、どうやらアジトに着いたようだ。

 着陸態勢になっている。


 この場所は、セイバーン公爵領の東端を超えた不可侵領域の森の中らしい。

『コロシアム村』は、ほぼ西の端だったから、かなりの距離を移動したことになるが、高速飛行ができるようで、それほど時間が掛からずに着いた。


 この不可侵領域の森はそれなりの広さがあって、魔物が住んでいる魔物の領域でもあるようだ。


 そして、隣国『ペルセポネ王国』との緩衝地帯にもなっているようだ。


 ちなみに『ペルセポネ王国』の更に東には、『格闘術プロレス』の継承者アンティック君の母国である『ヘルメス通商連合国』があるらしい。


 大きな森の中央部に円形の開けた場所があって、『メカヒュドラ』が近づくと地面がスライドして大きく開口した。


 格納庫の入り口が開いたようだ。


『メガヒュドラ』は、着陸態勢で降下している。


 そして、無事に着陸した。


『正義の爪痕』の構成員たちが集まってきた。

 やはり残党が残っていたようだ。

 もっともここにいるのは、戦闘要員というよりは研究員のようだ。


 俺は『正義の爪痕』から奪った『隠密のローブ』を身にまとい、姿を消す。


 そして『メカヒュドラ』の横腹の格納庫の扉を開き、外に出た。


 周りに集まってきている構成員たちは、すべて『状態異常付与』スキルで『眠り』を付与して、瞬く間に無力化した。


 まさか首領以外の者が降りて来るとも思ってないだろうし、そもそも俺の姿は見えないので、訳が分からないうちに意識を失った状態だろう。


 全部で十五名拘束した。


 一人だけ意識を奪わずに、尋問した。


 もちろん、いつものように優しく尋ねただけで、有形力の行使はしていない……つもりだ。


 素直に、いろいろと教えてくれた……強制はしていない……と思う。


 ここにいるのは、十五人で全てのようだ。

 やはり、『マシマグナ第四帝国』の遺物の調査研究や整備をする研究員のようだ。


 取り仕切っている三人以外の十二人は、拉致されて無理矢理働かされていた人たちのようだ。


 俺が尋問したのは、その三人のうちの一人だった。


 さらに尋問したところ、この場所は『正義の爪痕』の首領の本拠地、秘密基地で間違いないとのことだった。


 ここでは主に、『マシマグナ第四帝国』の遺物の再利用化の為の、解析と整備をしていたらしい。


 それで運用できるようになったのが、『べつじん28号』二体と『メカヒュドラ』とのことだ。


 まともに動かせるようになったのは、最近のことらしい。


 もう一つ、最近はじめたのが、『吸血生物』の生産だったとのことだ。


 特別な吸血鬼を捕まえたのがきっかけで、はじめたようだ。


 特別な吸血鬼というのが気になって詳しく訊いてみたが、どんな吸血鬼なのかは首領以外は知らなかったらしい。


 ただその吸血鬼の力で、蝙蝠や蚊を強化し、巨大化して『吸血生物』にしていたとのことだ。


 この『吸血生物』を作る能力は、『上級吸血鬼 ヴァンパイアロード』の『種族固有スキル』なので、普通に考えれば上級吸血鬼だと思うのだが、特別な吸血鬼とはどういうことなんだろう……?


 その吸血鬼は、最近になってこの不可侵領域を彷徨っていたところを、捕らえたらしい。


 現在は、必要な時以外は拘束しているとのことだ。


 俺は、早速その場所に案内させた。


 その吸血鬼を捕らえて、拘束して利用しているということは、もともと『正義の爪痕』とは関係のない吸血鬼で、悪い吸血鬼ではない可能性が高い。

 善良な吸血鬼なら助けてあげたいし、悪意があるようなら拘束してしまうつもりだ。


 特別室のようなところに入ると、お約束の……高圧電流のようなものが流れる檻があった。

 この檻を見るのは、もう三回目くらいだ。


 近づくと、中のベッドには…… 十五歳くらいの少女が横たわっていた。




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