682.メカヒュドラの、調査。

 次は『メガヒュドラ』の調査だ。



 ……中に入って、大体の調査を行なった。


 かなり大きいので、内部も広く丁寧に見ると時間がかかるので、目視で一通り確認するに留めた。

 もちろん気になるところは、しっかり確認したけどね。


 この『メカヒュドラ』は、胴体と認識できる部分だけで横幅も体長も百メートル以上はある。

 体長は、尻尾と頭が加わるので、三百メートル以上あるのではないだろうか。


 背中に小さな宮殿が乗っているので、高さも百メートル以上あると思う。


 この中にも、操作マニュアルと整備日誌と思われるものがあった。


 俺は、まずそれらに目を通した。


 それによってわかったことと、外見的な特徴をまとめてみることにした。


 『メカヒュドラ』は、正式な『名称』が『操縦型人工ゴーレム 魔機マギヒュドラパレス』となっている。


 黄金色に輝くメタリックなボディーだが、一部ヒュドラの肉感的な部分が残っている。

 ヒュドラの死骸をベースに、機械化したのだろう。

 元のヒュドラの色は、黄土色なので黄金色に溶け込んで、大きな違和感は無いのだ。


 黄金のボディーは、魔法金属『オリハルコン』を使っている。

 黄金色といっても、実際は明るい金色というか、白っぽい金色だ。

 遠くから見ると普通の黄金色に見えるが、近づくと白っぽい感じに見えるのだ。

 独特な光を放っている。


『オリハルコン』は、硬くて軽い金属で、魔力を非常に通しやすいという性質を持っているようだ。

 そして硬いのに、加工自体はしやすいという性質もあることから、素材として選ばれたのだろう。


 それにしても『オリハルコン』は、希少な魔法金属のはずだが、かなりの物量が投入されていると思う。


 重要な兵器として開発されていたことが、資料からも見てとれる。

 莫大な予算を投じて作った、一点物の決戦兵器といったところではないだろうか。



 背中に乗っている小型の宮殿形状のパーツが、パレスということなのだろう。


 パレスは、階層構造になっている。


 パレスの台座のようになっている所には、魔砲が設置されている。

 前後左右に一つづつ、合計四門設置されているのだ。


 その上には格納庫があって、発進ゲートのようなものがある。


 ここに『ドワーフ』のミネちゃんが作った『浮遊戦艦 ミニトマト改』を格納して、発進させることもできそうだ。


 その上の階層には、様々な部屋がある。

 会議室のようなもの、個室、食堂、食料の備蓄庫などいろいろだ。

 この多目的な空間が、何階層も続いている。


 戦艦のようなかたちで、クルーを多くの乗せて運用することも想定されていたのかもしれない。


 パレスの一番上の部分……尖塔の部分には、操縦席があり、戦闘ブリッジのようなかたちにもなっている。

 艦橋と言っていいだろう。


 パレスの台座の下の『ヒュドラ』本体の背中や腹にあたる部分には、『魔力炉』がある。

 やはり『魔芯核』を消費して、稼働エネルギーを作り出しているようだ。

『魔力炉』の隣には、やはり『魔芯核』の備蓄槽があり、自動で『魔力炉』に供給するシステムになっている。

 かなり大型の備蓄槽だが、九割くらいは埋まっている。

 ここにある『魔芯核』だけで……換金したら……数億ゴルになるのではないだろうか。

 十億を超えるかもしれない。

 まぁ換金するつもりはないけどね。


 それにしても、これだけの『魔芯核』を消費して、どのぐらい稼働できるんだろうか……?

 もしかしたら……めちゃめちゃ燃費が悪かったりするのかなあ。


 そんなことが気になって、俺はマニュアルで情報を探してみた。

 だが、明確には書いていなかった。

 ただ、魔力電池のような魔力を貯めておくサブシステムがあるので、やはり『魔芯核』を相当消費する燃費が悪いものであることは、間違いないようだ。


 サブシステムとして組み込まれている魔力充填装置は、人が魔力を流して貯めておけるもので、稼働エネルギーにすることができる。


 仮に乗組員が多くいた場合、毎日少しずつでも全員が協力して魔力流せば、かなり貯めておけるだろう。


 魔力充填装置は、『オリハルコン』でできている。

 これも『オリハルコン』の持つ性質を活かした装置のようだ。


 ふと思ったが……俺の有り余っている魔力を毎日充填しておけば、『魔芯核』を消費しなくても稼働させられるんじゃないだろうか……。


 この技術を活かして、本格的な魔力電池が作れると、いいんだけど。

 俺ほどじゃないにしても、仲間たちも魔力を持て余しているからね。


 よくよく考えたら……『ドワーフ』の天才少女ミネちゃんは、すでにオリハルコンを使った魔力を貯めておける魔法道具を開発している。

 魔法の風呂敷『魔法風呂敷 マルチブルクロス』には、魔力を貯めておく性能もあるのだ。

 ユーフェミア公爵たち『高貴なる騎士団ノブレスナイツ』の専用装備である『魔法マント 高貴なるマントノブレスマント』も同じ仕様なので、魔力を貯めておくことができる。


 その技術を活かして、本格的な魔力電池を開発して、『メカヒュドラ』にセットして使えるようになると、ほんとに『魔芯核』の消費なしで稼働させられそうだ。


 後でミネちゃんに、構想を話してみよう。



 左右の横腹にあたる部分にも格納庫があり、扉が開いて出入りもできるようになっている。


 首は九つで、そのうち五つはヒュドラに元からついていた首のようだ。

 ヒュドラの肉感を残しつつ、部分的に機械化されている。

 残りの四つの首は、後付けされた機械の首だ。


 機械といっても、俺が元の世界で知っているような機械やSF的な機械とは微妙に違う感じだ。

 似たような感じではあるものの、その根本技術は魔法というか魔術的な技術なのだと思う。

 印象としては、魔法道具や魔法素材が組み合わさったものという感じだ。


 四つの機械のヒュドラ首は、分離して飛行が可能で、別個に攻撃ができるのだ。

 マニュアルなどの資料を見てわかったことだが、魔法AIによって自動で攻撃させることもできれば、人が乗り込んで操縦することもできるようだ。

 なんとなく……戦闘機のように運用できそうだ。

 本体との接続時に、魔力が充填されるようになっていて、その充填された魔力をエネルギーにして稼働するようだ。


 四つの機械のヒュドラ首は、ナビーが『波動収納』で回収してくれてあるが、元の状態に戻しておく予定だ。


 『メカヒュドラ』には短く太い足が四つ付いていて、歩行することもできるのだが、『べつじん28号』同様浮遊して移動することもできるようだ。


 体の大きさに比べると小さめではあるが、翼も付いている。


 ただ生きている『ヒュドラ』と違い、この『メカヒュドラ』の場合は、翼は飛行用のものではないようだ。

 飛行の原理は、『べつじん28号』同様、魔法的な仕組みによるものだろう。

 翼は分離して、移動シールドとして機能するらしい。


 元となっている『ヒュドラ』には、大きな翼がついていて空を飛ぶことができる。

 短く太い足が四本ついていて、尻尾は一つだが、首が複数あり、首の多さが強さを表すとも言われている。


 俺が元いた世界のゲームなどで知っている『ヒュドラ』は、多頭の蛇とされている場合が多く、足がなかったり翼がなかったりというのが多かった。

 この世界の『ヒュドラ』は、より『ドラゴン』に近いかたちのようだ。

 亜竜と言われているだけはある。



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