681.試運転、成功。
『正義の爪痕』から没収した『操縦型人工ゴーレム
発見した操作マニュアルと整備日誌により、かなりの事がわかった。
それを、俺なりにまとめてみた。
正式名称を『操縦型人工ゴーレム
そして、『マシマグナ第四帝国』の末期に作られたもののようだ。
なぜ『タイプR』と『タイプL』に分かれているのかということについては、二体がセットとして開発されたからのようだ。
識別の為に、右左という意味でRLとなっているらしい。
それから二体一組で、大都市に門番のようなかたちで配置される予定だった為でもあるようだ。
右側に位置する者と左側に位置する者という意味だろう。
狛犬や金剛力士像のようなイメージだと思う。
門番のように配置される予定だった理由は、防衛戦力としての意味と人々の避難用の移動手段としての意味があったらしい。
『箱船プロジェクト』の一環と書いてあった。
そういう国家的なプロジェクトがあったようだ。
格納庫が広く作ってあるのは、人々や物資を収納して避難するための設計というだろう。
そしてステルス機能も搭載されているから、敵に発見されにくい。
二体とも、赤いボディで、飛行形態は釣鐘型だ。
飛行の原理は明確に書いてないので、今のところよくわからない。
地上ではホバーで移動するか、足を出して移動する仕様のようだ。
人型形態になると、手、足、頭が出る。
まさに変形ロボだ。
腰のあたりから攻撃用の腕が二本出て、戦うことができる。
攻撃用の二本の腕は、それぞれ赤い刀を持っていて、斬り付けて攻撃をするのだ。
赤い……紅の二本の刃で戦うところから、『
『28号』は、28番目の試作機ということらしい。
胸の辺りに魔砲も内蔵されているようだ。
動きは鈍く、まともな戦力になるようには見えなかったが、移動砲台としてなら意味があるかもしれないと思った。
ただ動きが鈍いというのは誤った評価だったようで、本来の能力が出せていない状態だったらしい。
というのはマニュアルによれば、人型形態になったときには特殊な操縦システムで動かす仕様になっているらしいのだ。
それが壊れていて使えないので、『正義の爪痕』の幹部たちは、サブ操縦システムで動かしていたようだ。
動きが鈍くてぎこちなかったのは、緊急用のサブ操縦システムだったかららしい。
本来の操縦システムは、『ムーブトレースシステム』というようだ。
操縦者がコクピットルームに入って、その体の動きをトレースするという仕組みらしい。
生体コアの技術と共通した技術なのだろう……。
というか……生体コアの技術は、これが基になっているのかもしれない。
整備日誌を見る限り、この『ムーブトレースシステム』の修理は、難航していていたようだ。
二体とも、『ムーブトレースシステム』の修理中だったらしい。
『ドワーフ』の天才少女ミネちゃんと人族の天才少女ドロシーちゃんに頼めば、もしかしたら修理できるかもしれない。
本来の操縦システムが稼働できれば、かなり使えるようなことが書いてある。
そして『生体コアシステム』よりも、操縦者への負担が少なく、操縦席にも座るだけで良いという手軽な仕様のようだ。
立って操縦して、全身の動きをトレースさせることもできるらしい。
『バトルステージ』という名前の操縦席で、そこに入ると自動で体の動きをトレース仕組みになっているようだ。
『ムーブトレースシステム』を使った操縦で、二体の『べつじん28号』の操縦者とシステムのシンクロ率が100%の状態を維持していると、二体揃っての特別な技が発動できるとも書いてある。
飛行形態の時は、『ムーブトレースシステム』で操縦する必要はなく、『フライトシステム』という簡易な操作方法で運用できるようだ。
一人でも操作できるらしい。
もちろん『ムーブトレースシステム』も、ひとりで操縦できるわけだが、サブ操縦システムは二人程度いないと操縦が難しいようだ。
移動と攻撃という二つの動きを、管理しなきゃいけないかららしい。
このほかにも魔法AIが搭載してあって、『魔法AIモード』というのがあり、単純な命令で自動運行させられるらしい。
飛行しろとか、歩けとか、待機しろとか、そういう指示が出せるようだ。
だから一人で運用しているときに、一時的に『べつじん28号』から離れることもできるらしい。
専用の装置……『指令ボックス』という箱型の無線機のようなものを使って、『
なんかほんとに……リモコンで動く巨大ロボみたいなんですけど……。
これって……もしかして九人の勇者の誰かの……趣味的なものが入ってたりするのかなあ……?
稼働のための基本的なエネルギー源は、『魔芯核』らしい。
『魔力炉』というものに『魔芯核』を投入し消費することによって、稼働のエネルギーを作り出すようだ。
操縦者は、基本的に自分の魔力は消費しないが、『ムーブトレースシステム』を使うときだけ、少し消費するらしい。
『魔力炉』は、胸のあたりに左右に各一つ搭載されている。
胸の中央のあたりには、魔砲が内蔵されているのだ。
各『魔力炉』には、『魔芯核』の備蓄槽が併設されていて、自動的に供給される仕組みになっていている。
その備蓄槽には、『魔芯核』が八割くらい残っていたので、かなり大量の『魔芯核』を手に入れてしまった。
この『魔芯核』は、このまま『べつじん28号』の稼働エネルギーとして使おうと思う。
安全性が確認できたら、有効活用したいと思っているのだ。
ただ使い道は、まだ思いついてないけどね。
『正義の爪痕』が使っていたように……移動作戦本部みたいな感じの使い方をしてもいいかもしれないね。
いくつかの安全装置も装備されているようだ。
操縦者識別システムがあって、事前に登録してある操縦者しか操縦できないというセーフティー機能があったようだ。
魔力認証によって、事前に操縦者を登録するシステムだったらしい。
敵から強奪されるのを防ぐ為のものだろう。
だが、この操縦者識別システムは、現在破壊されていて使えない。
もしかしたら、『正義の爪痕』がこの遺物を発見したときに、無理矢理動かすために破壊したのかもしれない。
もう一つ分かったことは……この『べつじん28号』を修理しようとしていたチームがあるはずなので、どこかに『正義の爪痕』の残党がいる可能性が高いということだ。
というか……この『べつじん28号』二体と『メカヒュドラ』を格納していた秘密の施設いわば秘密基地があるはずだ。
そこには、まだ残党がいる可能性もある。
なんとか秘密基地の情報を手に入れて、乗り込みたいところだ。
だが今のところ、秘密基地に関する情報は発見できていない。
最後に俺は、マニュアルを見て『フライトモード』で動かしてみることにした。
マニュアルを見る限り、『フライトモード』自体はそれほど難しくない。
車の運転が出来るなら、多分誰でもできるだろう。
まぁこの世界で車の運転ができる者は、転移者か転生者しかいないわけだけどね。
おお、稼働した!
魔力炉が稼働する時も、特に大きな音みたいなものはしない。
そして、実際操縦してみる……
……うまく浮遊できている。
なんとか操縦できそうだ!
結構楽しくなってきた!
ステルス機能も使ってみる……
しっかり姿が消えているみたいだ。
中にいるから明確ではないが、機能が稼働しているサインが点灯している。
なんとなく……早朝の空の旅と洒落込みたいところだが……そんなことをしている場合ではないので自重した。
さて、次は、あのドデカい『メカヒュドラ』に乗り込みますか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます