680.巨大ロボ、調査開始。

『チョコレート』のティータイムが落ち着いた頃、『ドワーフ』のミネちゃんが俺の隣にやってきた。


「国王陛下が言っていた郵便の魔法道具は、多分『ドワーフ』の私たち『ノームド』氏族が作ったものだと思うのです。実物を見てないから断言できないけど、多分そうなのです。十個セットの魔法道具が里にあるのです。ずいぶん昔に作ったけど、今は作っていないのです。でも資料は残っているのです。ノームのノンちゃんが許可してくれたら、グリムさんのために作ってあげちゃうのです。郵便の魔法道具があれば、いろんな地方の美味しい食べ物を送ってもらうこともできるとわかったのです! それに気づくなんて、さすが王様なのです! だから箱は大きめに作った方がいいと思うのです!」


 さっきの国王陛下と王妃殿下の話を聞いて、美味しいものが食べれると気づいたらしく……ミネちゃんがめっちゃやる気だ!

 そして郵便の魔法道具作りも……フードファイトに繋がっていたらしい……。


 でも確かに、どうせなら大きめの……大型ポストみたいなものにしてもらえば、かなりのものが送れるようになるよね。

 もうそうなると、手紙を届けるのを通り越して、ちょっとした物流革命になっていると思うけど。


 長距離乗合馬車で人や物資を定期的に配送する仕組みを作ったり、飛竜船で短時間に人や物資を届ける仕組みを作るとことで、段階的に物流革命を進めていっても面白いと思っていたのだが……。

 大型の郵便ポストができちゃったら……俺の緩やかな物流革命を、ぶっちぎりで通り越してしまう。

 まぁいいけどさ。


 郵便の魔法道具の仕組みが、転移なのかゲートなのかわからないが、もし巨大な郵便箱が作れるなら人も届けることができるんじゃないだろうか……そうなるともうゲートだけどね。


 少し気になったので、ミネちゃんに尋ねてみた。


「ゲートを開くのは、結構難しいのです。それに、ミネの里では封印された技術なのです。だから、ゲートを作るのは多分できないと思うのです。郵便の魔法道具の仕組みは、登録してある場所への転移なのです。転移の魔法道具との違いは、魔法道具の使用者が転移する必要はなく、物だけを転移させられるということなのです。ゲートとの違いは、一回づつの使用ということなのです。もしゲートなら、郵便箱の蓋を開けて、小包を入れ続けて、送り続けるという事ができるのですが、それはできないのです。一回づつ蓋を閉じて発動させる必要があるのです。ただ郵便箱に入る範囲なら、まとめて送れるのです。手紙百枚でも、箱に入ればまとめて送れるのですよ。だから、カレーライス氏ととんかつさんも一緒に送れるのです! 無理矢理カツカレーにする必要はないのです!」


 ミネちゃんは、珍しく丁寧に説明してくれた。

 そして珍しく普通に終わるのかと思ったら……やはり最後にフードファイト要素が入っていた。


 それから、ミネちゃんに付け加えられたのは、郵便の魔法道具も転移の魔法道具のようなものなので、俺が責任を持って管理して使うなら『土の大精霊 ノーム』のノンちゃんも許可をしてくれると思うが、広く一般に普及させるのは難しいだろうということだった。


 転移の魔法道具ほどは奪われたときの危険性が少ないにしろ、大きい郵便箱を作ると場合によっては、人が入り込んで転移することも可能になるからね。

 奇襲攻撃に使われたりする可能性はあるよね。


 そう考えると……無理に郵便の魔法道具を作ってもらわなくても、信頼できる人間に、転移の魔法道具を預けて、毎日、王国内の各領の領都を回ってもらう方法で、郵便事業をやる方がいいかもしれない。

 転移の魔法道具の方が、一度に多くのものが運べるしね。

 人も運ぶことができるわけだし。


 ただ担当者は、一日に何回も転移しないといけないから大変だろうけど。


 今まで深く考えたことがなかったけど、人を伴わないで物だけを送る転移ってなかったんだよね。

 そういう意味では、郵便の魔法道具は便利そうではある。


 なんか……郵便事業をやる前提で考えてしまっていたが、実際やるかどうかは別の問題だ。

 郵便事業をやるとすれば、すべての領に『フェアリー商会』の支店を作らなきゃいけないから、そんな面倒くさいことはやりたくないんだよね。


 まぁこれも、サーヤたち次第だけどね。


 ただ改めて思うのは、この世界の人たちの生活を豊かにしたりするには、何かしらの物流革命は必要だよね。


 現状だと、あまりにも時間がかかりすぎるからね。


 もっとも、個人的にはのんびり行く馬車の旅が好きだけどね。





 ◇





 翌早朝、俺は『コロシアム村』から北上した無人の草原にいる。


 これから『正義の爪痕』から没収した通称べつじん28号二体とメガヒュドラの調査をするためだ。


 べつじん28号は、『操縦型人工ゴーレム 紅II刃べつじん二十八号 タイプR』と『操縦型人工ゴーレム 紅II刃べつじん二十八号 タイプL』という正式名の二体だ。


 メカヒュドラは、正式名を『操縦型人工ゴーレム 魔機マギヒュドラパレス』という。


 まずは、べつじん28号から調べる予定だ。


 最初に確保したのは『タイプR』で、次に首領が乗って現れたのが『タイプL』である。


 ぱっと見たところは、同じものに見える。


 まずは『タイプR』の中に入って調査だ。


 『タイプR』については、確保したときに『自問自答』スキル『ナビゲーター』コマンドのナビーと『アラクネーロード』のケニーが簡単な調査を行っている。


 ナビーはその時に、『パレットバレット』というかなり使える魔法道具を手に入れ、早速実戦で使っていたのだ。

『階級』が『伝説の秘宝級レジェンズ』の逸品である。


 釣鐘型のボディーの下の方、ロボになった時のお腹からお尻に位置する場所に、かなり広い格納庫がある。


 『タイプL』を使って首領が襲ってきたときに、捕らえた人たちを閉じ込めて投下していた収容コンテナと同じものが、この『タイプR』にも搭載されている。


 最初に侵入した時は壁かと思っていたが、大きな収容コンテナが縦に三段積まれている。

 格納スペースの半分くらいを占めているので、スペースをほとんど使うつもりなら収容コンテナを最大六個搭載できるのだろう。


 首領が襲ってきたときは、五カ所に収容コンテナを落としていたから、五個搭載していたのだろう。


 上のほうに昇ると、大きな会議室のようなスペースや個室がいくつかあった。


 そして『魔物の博士』『酒の博士』たちがいたコックピットスペースに行って、色々と物色した。


 お宝やアイテムはなかったが、このべつじん28号の操作マニアル的なものと整備日誌みたいなものを発見した。



 次に、もう一体の『タイプL』についても、同様に中を確認した。


 格納庫には、収容コンテナが一つだけあった。

 六個搭載してあって、五つは投下したのだろう。

 その五つも、俺が『波動収納』で回収してあったので、取り出してここに格納した。

 よく見ると……床や壁、天井などに格納式のアームのようなパーツがあって、縦に重なったコンテナを動かしたり射出したりすることが可能になっているようだ。


 この『タイプL』も中の構造は、基本的に同じだ。

 そして、コックピットスペースには、やはり操作マニアルと整備日誌のようなものがあった。


 それから、格納庫には『タイプR』にあったのと同じ、『パレットバレット』があった。

 最初は、ただのパレットに見えたので見逃していたが、よく考えたらパレット型の魔法道具だったのだ。

 そして、『波動鑑定』で確認した。

 標準装備として、一つずつ装備してあったのだろう。



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