644.号泣の、溺愛オヤジとシスコン三兄弟。

 フウとタトルのステータスも簡単に確認しておこう。


『スザク』の『化身獣』となっている『スピリット・オウル』のフウは、『基本ステータス』の『職業』欄に『化身獣けしんじゅう(スザク)』と表示されている。

 『状態』の表示からは、『スザクの化身状態』という表示が消えている。

 レベルは、1つ上がって61だ。

 フウも、かなりの数の魔物を倒していたはずだが、レベルが低い魔物ばかりだったから1つしか上がらなかったようだ。


 『特殊ステータス』の『称号』の欄に『スザクの化身』が追加され、『加護』の欄に『スザクの加護』が付いている。


 スキルのところには、『職業固有スキル』が追加されている。

 『職業固有スキル』には、キンちゃんたち同様、『転移集合』『連携通話』というスキルがある。

 フウ独自のものとしては、『スザクの炎翼えんよく』というスキルが表示されている。

 これも、グレーアウトした感じになっていて、詳細が表示されない。

『スザクの化身状態』になった時だけ、使えるスキルなのだろう。


『ゲンブ』の『化身獣』となっている『スピリット・タートル』のタトルは、『基本ステータス』の『職業』欄に『化身獣けしんじゅう(ゲンブ)』と表示されている。

 『状態』の表示からは、『ゲンブの化身状態』という表示が消えている。

 レベルは、1つ上がって56だ。

 タトルもトーラ同様、『ミノタウロスの小迷宮』で特訓を行った時よりは5つ上がってレベル55になっていたが、今回の戦いでは1つしか上がらなかったようだ。


 『特殊ステータス』の『称号』の欄に『ゲンブの化身』が追加され、『加護』の欄に『ゲンブの加護』が付いている。


 スキルのところには、『職業固有スキル』が追加されている。

 『職業固有スキル』には、キンちゃんたち同様、『転移集合』『連携通話』というスキルがある。

 タトル独自のものとしては、『ゲンブの双頭』というスキルが表示されている。

 これも、グレーアウトした感じになっていて、詳細が表示されない。

 『ゲンブの化身状態』になった時だけ、使えるスキルなのだろう。



 『化身獣』となったみんなは、元の姿に戻っているものの、かなりぐったりしている。

 相当消耗するようだ。


 あの『五神絶対防御陣』は、かなり消耗するし、張っている間はキンちゃんたち五体の『化身獣』は、全く身動きが取れなくなる。

 そして完璧な状態を作るには、五人の『神獣の巫女』も同様に動けなくなる。


 そういう意味では、かなり燃費の悪い技とも思える。

 敵を倒すだけなら、みんな普通に活動した方がはるかに圧倒できるからね。


 だが、多くの人々を守りたいというときは、『五神絶対防御陣』は優れている。

 あれほど強固な防御障壁を、あれほどの広範囲に張れるという技は、他にはないだろうからね。


 五人と五体の攻撃力を全く使えなくても、多くの人々を守ることができる。

 そういう意味では……攻撃力を犠牲にする価値はあるということだろう。



 俺は、みんなに回復薬を飲ませてあげた。

 そして、しばらく休ませることにした。



『神獣の巫女』となった五人も、『戦巫女』状態を解除して元の姿に戻っている。

 だが、やはりかなり消耗しているようだ。


 俺は、みんなに回復薬を飲ませ、タオルをかけてあげた。


 そんなところに……泣きながら走ってくる大男の姿が……


「ハナやぁ、ハナシルリ、あゝハナやぁ……ぐおうぅ、ぐわぁぁぁ」


 ビャクライン公爵が、ハナシルリちゃんに走り寄り抱きしめた。

 号泣している。


 かなり心配していたのだろう。

 無事に戻ってきて、ホッとしているに違いない。

 それと、我が子の素晴らしい活躍への感動の涙もあるかもしれない。

 とにかく、いろんな感情が入り混じった号泣だと思う。


 その気持ちは、俺にもよくわかる。

 溺愛オヤジじゃなくても、そうなっちゃうよね。


「ハナ、大丈夫? あゝ、ハナ……こんなに小さいのに、よくやったわ。ううっ……」


 母親のアナレオナ夫人も、ハナシルリちゃんの頭を撫でながら泣いている。


「ハナシルリ、無事でよかった……。ううっ、うわぁぁぁん……」

「ハナ……心配したびょぉぉぉーー」

「わあぁぁぁ、ああぁぁ、わあぁぁん……」


 イツガ君、ソウガ君、サンガ君のシスコン三兄弟も、号泣状態だ。


 可愛い妹が心配でたまらなかったようだ。


 そして目から涙、鼻から鼻水、口からよだれ……体から全ての水分を出し切る勢いだ……この子たち大丈夫だろうか……。


「私は大丈夫。みんな泣かないで。ちちうえと、ははうえと、にぃにたちが無事で……本当によかった……」


 ハナシルリちゃんは、めっちゃ健気な感じでそう言った。


「があぁぁぁっ、ハナやぁぁぁ……」

「うわぁぁぁ、うわぁぁぁん……」

「びゃぁぁぁん、うわぁぁぁ……」

「わあぁぁぁ、わあぁぁん……」


 ハナシルリちゃんの健気な言葉を聞いて、溺愛オヤジとシスコン三兄弟は、絶叫状態で号泣してしまっている。


 気持ちはすごくよくわかるけど……この人たち脱水状態にならないかなぁ……。



 それにしても……ハナシルリちゃんは……回復薬を飲ませたのに、ぐったりしたままだ。

 どうしたんだろう?


 もしかしたら……


 俺は『波動鑑定』をかけてみる——


 やっぱりな……。


 彼女は、急激にレベルアップしていた。


 元のレベルは5だったが、今はレベル39になっている。


『神獣の巫女』として、大量の魔物を屠ったことに加えて、元のレベルが低かったので経験値取得にレベル補正が入ったのだろう。

 それで、一気に34もジャンプアップしたようだ。


 普通の人でも、こんなにレベルが上がってしまったら、レベルアップによる体調不良……『レベルアップ疲労』が起こってしまう可能性が高い。

 四歳児の体では、無理もないだろう。


 この『レベルアップ疲労』は、しばらく休まないと治らないんだよね。

 俺は、心配しているビャクライン公爵とアナレオナ夫人に、現在のハナシルリちゃんの状態を伝え、しばらく休めば大丈夫だと説明した。


 二人とも『レベルアップ疲労』という言葉を知らなかったようだ。

 まぁ、考えてみれば、魔物の倒す兵士たちだって、『レベルアップ疲労』が起こるくらい一気にレベルが上がるっていうことは、普通起きないからね。



 それにしても……レベル39の四歳児って……。


 元気を取り戻した後のハナシルリちゃんのハイテンションが……怖すぎるんですけど……。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る