642.ギフトスキルで、サイズ変更?

 俺は、五人の『神獣の巫女』たちと共に、防御障壁の中に入って、『コロシアム村』の『コロシアムブロック』まで空中を移動した。

『クイーンピクシー』のニアと、『魔盾 千手盾』の顕現精霊『付喪神 スピリット・シールド』のフミナさん、生体コア状態から助け出したニコちゃんも一緒だ。


 防御障壁の中に入ると、すぐに人々の歓喜の声が聞こえていたが、俺たちの姿が見えると、どよめくような歓声が上がった。


 俺たちが来たタイミングで、『化身獣』となっているキンちゃんたちも、『五神絶対防御陣』を解いて、一緒に降りてきた。


 『コウリュウ』の『化身獣』となっている『ライジングカープ』のキンちゃん、『セイリュウ』の『化身獣』となっている『龍馬たつま』のオリョウ、『ビャッコ』の『化身獣』なっている『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラ、『スザク』の『化身獣』となってる『スピリット・オウル』のフウ、『ゲンブ』の『化身獣』なっている『スピリット・タートル』のタトル、それぞれが憑依状態で神獣の姿になったままだ。


 キンちゃんは、本来の鯉のぼりサイズではなく、人間くらいのサイズの『コウリュウ』になっている。

 オリョウが化身している『セイリュウ』は、普段のオリョウ同様、人間よりも一回り大きいサイズになっている。

 トーラが化身している『ビャッコ』は、大きめの小型犬くらいのサイズだ。

 『スザク』の化身となっているフウも、普段の大きさと同じで、小型のフクロウサイズだ。

 『ゲンブ』の化身となっているタトルも、同様に大型の陸ガメサイズとなっている。


 人々が見守る中、『神獣の巫女』たちが、それぞれの神獣の『化身獣』の前に跪く。

 『神獣の巫女』たちには、それぞれの神獣が、頭の中に声を届けアドバイスしてくれていたようだが、改めて挨拶をするようだ。


「クリスティアちゃん、よく頑張ってたって感じ! かっこよかったし! あー、はいはい。わかったし。コウリュウ様が話したいって言ってるから、ちょっと替わるし…………クリスティア、よく戦いました。シキの子孫と話せて嬉しく思います。我ら神獣は、直接介入することができません。今日のように、直接教え導くのも特別なことです。今後は巫女と化身獣で力を合わせて、我らが与えた力を活かすのです…………わあ、戻ってきたし、コウリュウ様と選手交代してベンチに下がってるのは、不思議な感じだし。でもしばらくは、うちの中に居候するみたいだし。まぁ面倒みてやるし。スキルくれたから、家賃はなしでいいっしょ。てか、スキルくれるってまじすごくね、まじまんじ」


 キンちゃんと人格が入れ替わるような感じで、『コウリュウ』様が話したようだ。


「コウリュウ様、ありがとうございます。人々のため、この世界のため、微力を尽くします」


 『コウリュウ』の巫女となった第一王女のクリスティアさんは、そう言って頭を下げた。


「ふふふ、ハルナの子孫は、実に頼もしい。私の力を存分に活かしなさい」


 今度はオリョウと入れ替わって、『セイリュウ』様が声をかけた。


「セイリュウ様、ありがとうございます、ご期待に添えるよう努力いたします」


 『セイリュウ』の巫女となったセイバーン公爵家長女のシャリアさんが、緊張気味に応えた。


「ほほほほ、アキの子孫は、本当に可愛いのう。そなたは無限の可能性を秘めておる。心のままに、自由に生きなさい」


 トーラと入れ替わった『ビャッコ』様が、ビャクライン公爵家長女のハナシルリちゃんに声をかけた。


「ビャッコ様、ありがとうございます。よろしくお願いします」


 ハナシルリちゃんは、可愛く応えた。

 中身は三十五歳なことは、ビャッコ様は当然知ってるだろうから……ここは突っ込むのはやめておこう。


「ナツナの子孫ミアカーナ、あなたは、あの子にすごく似ているわ。この世界を頼むわよ」


 フウと入れ替わった『スザク』様が、スザリオン公爵家長女のミアカーナさんに優しく言った。


「はい。かしこまりました。全身全霊をかけて、人々を守ります」


 ミアカーナさんは、力強く頷いた。


「フユミの子孫ドロシーよ、賢き娘よ、私がそなたを見守ろう。その賢さで、世界を守る盾となりなさい」


 タトルと入れ替わった『ゲンブ』様が、ゲンバイン公爵家長女のドロシーちゃんに声をかけた。


「ゲンブ様、ありがとうございます。私の使命を果たします」


 ドロシーちゃんが、頭を下げた。


 それぞれの神獣様たちが言っていたシキ、ハルナ、アキ、ナツナ、フユミという名前は、おそらく……神獣様たちが力を貸した初代様の名前だろう。

 英雄譚『セイバーン公爵とセイリュウ七本槍』に出て来た初代セイバーン公爵の名前が、ハルナ=セイバーンだったからね。



「なんか……コウリュウ様ってば、休むって言ってるから……うちも元に戻るし。そこんとこよろしくだし!」


 そう言うと、キンちゃんから光が溢れて、元の空飛ぶ錦鯉『ライジングカープ』の姿に戻った。

 『コウリュウ』様の憑依状態が解除されたらしい。


 キンちゃんは、元に戻ったといっても……実は、微妙に元の姿じゃない。


 元々キンちゃんは、こいのぼりサイズだったのだが……今は、かなり小さくなって、普通の錦鯉くらいのサイズになっているのだ。

 もちろん、空は飛んでいるけどね。


「キンちゃん、小ちゃくなっちゃったの?」


 俺は思わず、呟くように声を出してしまった。


「オーナー、びっくりしたっしょ。まじうけるし。なんかコンパクトになって、動きやすくなって……超ウケるんですけど! コウリュウ様は結構いいやつで、大きいと活動しにくいだろうってことで、気前よくスキルくれちゃったわけ。『ギフトスキル』とか言ってたし。半端ねえっしょ! まじアゲアゲ、まじまんじ! 自由にサイズ変更できるスキルなんだし。これでSサイズの可愛い服も着れるかし。そういえば、コウリュウ様ってば、適度なサイズになれるように、スキルレベル5にしてくれたし……ドンダケうちのこと好きなんだよ! まじウケる! もうマブだし」


 相変わらずキンちゃんの言ってることは、よくわからないが……とにかく『コウリュウ』様の力でスキルがもらえたということらしい。

 てか……『コウリュウ』様を“いいやつ”って……そんな対応でいいわけ……?

 まぁ今更ではあるけど……。



 俺は、スキルが気になったので『波動鑑定』させてもらうことにした。


 (キンちゃん、ちょっと鑑定させてもらうね)


 俺は念話で、キンちゃんにそう告げた。


 (オーナー……そんなにうちが見たいわけ? 乙女のうちに堂々と言うなんて、まじハズいし。でもオーナーなら許すし! 責任を取ってもらうし! 子供は、卵じゃなく直接産みたし! まぁ……もう好きにしてだし……。でも、恥じらう乙女心を失ったわけじゃないし。そこんとこ、よろしくだし)


 うーん……さらにわけがわからないが……とにかく鑑定していいらしいので、見せてもらおう。


 おお……『通常スキル』で『サイズ変更』というスキルが発現している。

 任意にサイズを変えれるらしいが、変更できる大きさはスキルレベルによるらしい。

 スキルレベル5では、5分の1程度に縮小できるようだ。

 また1.5倍程度に、大きくなることもできるらしい。


 これは、キンちゃんのように大型の仲間たちには、便利なスキルかもしれない。

 小さくなると、人族の街でも活動しやすくなるメンバーが、結構いるはずだからね。


 ありがたいことに、『通常スキル』なので『共有スキル』にセットできそうである。

 ただ、やはりレアスキルみたいなので、実際セットできるかどうかは、やってみないとわからないけどね。

 『通常スキル』でも、特別なスキルはセットできないことがあるからね。



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