640.瞬殺バイバイ、瞬殺ハロー。
突如として現れた天災級の魔物……超巨大クラゲ『イビル・アーマークラゲ』の一体が、『魔芯核』を撃ち抜かれて、一瞬にして倒された。
『魔芯核』に取り付いていた『
そして倒したのは……俺の予想通り……分身の『自問自答』スキルの『ナビゲーター』コマンドのナビー顕現体だった。
上空から狙撃したようだ。
そして、急降下で俺のところに降りてきた。
なんか四角い物体に乗ってるけど……何これ?
「マスター、軟弱な特殊な体と物理耐性を持っていますが、魔法銃で十分倒せるようです。また、魔法吸収では魔法銃の魔力弾を消し去ることはできないようです。今後は精度を高める為に、近距離から狙撃します」
ナビーは、一方的にそう言うと俺のそばから離れ、狙撃しやすい位置を探すように飛んでいった。
てか……なにあれ?
何に乗ってるわけ?
……あんなの持ってた?
相変わらず、ナビーは俺の情報は全て知っているのに、ナビーの情報は求めないと取得できない。
自動では流れ込んできてくれないのだ……。
もちろん、みんなのプライバシーに関する事以外は、尋ねれば教えてくれるんだけど、勝手に念じて取得しようとすると……セクハラと責められちゃうんだよね……。
ぶっちゃけ、納得いかないんですけど……。
そんな普段のやるせない気持ちをちょっと思い出してしまったら……そんな気持ちもナビーには筒抜けだから……
(マスター、男は細かいことを気にしない方がいいと思います。ちなみに、この装置はべつじん28号の格納庫で手に入れた『マシマグナ第四帝国』の遺物です。これでよろしいですか!?)
と念話を入れてきた。
そして逆ギレしてるし……トホホ。
俺って一体……。
でもそんなナビーもかわいい……そう自分に言い聞かせながら、イメージの中でナビーを抱きしめた。
(それはセクハラです! この戦闘中の局面でセクハラしてくるとは……。しかも意地悪でワザとやりましたね! すべてお見通しです! 後で逆セクハラをお見舞いします! お覚悟を……)
やばい……ナビーが完全にオカンムリだ……。
確かに、ちょっと意地悪する為に、あえてやってしまったのだが……完全にお見通しだったよね……自爆……トホホ。
それにしても……美人秘書さんが仕返しでお見舞いする逆セクハラって、なんだろう……。
微妙に気になるんですけど……。
やばい……恐ろしさを感じつつも、ちょっとしたワクワク感を持ってしまっている自分がいる……。
俺の中の変態な何かが、確実に育ってきているのか……まずい……。
そんな俺のイカれた思考もナビーには筒抜けだから……ナビーは、念話で「チィッ」という舌打ちだけを、送ってきた……。
舌打ちだけって……トホホ。
俺は、ナビーに呆れられた自分を反省しつつ、気を取り直して『魔剣 ネイリング』を抜いた。
巨大クラゲを倒しちゃわないとね。
「伸びろ! ネイリング」
——ズンッ、ズンッ、ズンッ、ズゥゥゥーーーー
——グウォンッ、バスッ、ジュルルルルッ、グサ
俺は、巨大クラゲの『魔芯核』と『
そして『魔芯核』と『
一体目……瞬殺バイバイだ!
巨大クラゲの体表に剣先が当たったときに、柔らかい粘膜のようなもので弾かれる感触があったが、そのまま押し込んで『魔芯核』まで伸ばしたのだ。
切れ味抜群の『魔剣 ネイリング』でも抵抗を感じたので、他の剣では体表を貫けなかったかもしれない。
そしてネイリングのように魔力で伸ばせる剣でなければ、あの巨体の『魔芯核』まで攻撃を届ける事は、難しかったかもしれない。
体内組織にあったジェル状のものも、剣を伸ばす上で抵抗を感じたからね。
そう考えると……ナビーが使ったあの魔法のスナイパーライフルは、かなりの優れものだと思える。
俺は、伸ばしたネイリングを引き戻し、巨大クラゲの死体をすぐに『波動収納』に回収した。
落下させただけで、衝撃がすごそうだからね。
そして続けざまに、もう一体の『魔芯核』と『
ネイリングは、『
体内ジェルの反発で軌道が少し外れて、『
そのせいで、巨大クラゲがまだ生きている。
トドメを刺そうかとも思ったが……一つアイデアが浮かんだ。
俺は、『波動収納』から『操魚の矢』を取り出した。
そう……思い浮かんだアイデアとは……この巨大クラゲを仲間にするということだ。
『魚使い』ジョージの血でできた『操魚の矢』を使えば、魔物でもテイムできる可能性がある。
クラゲが魚として扱われるかわからないが、海洋生物という括りで効果があることを期待し、チャレンジしてみようと思ったのだ。
俺は、『魔剣 ネイリング』に斬り裂かれ、開いたままクラゲの体内に『操魚の矢』を投げ入れ突き刺した。
巨体を考慮して、十本突き刺した。
ここで、本来なら『魚使い』のジョージに『魚使い』スキルを使って仲間にしてもらうところだが、あいにくジョージは『五神絶対防御陣』の中にいる。
連れて来る時間がないので、俺が仲間にすることにした。
『操魚の矢』さえ効いてくれていれば、『操魚の笛』を使うことで俺でも仲間にできる可能性があるのだ。
蛇魔物を仲間にしたときに、実証済みだからね。
あの時は、『操蛇の矢』と『操蛇の笛』を使ったのだ。
『波動収納』から『操魚の笛』を取り出して吹く——
『操蛇の笛』と同様に、リコーダーのような縦笛から単一と思われる音が響く。
『操蛇の笛』は、あまり大きな音がしなかったが、『操魚の笛』は、しっかり音がする。
そして空気が振動しているのがわかる。
水の中の魚にも届くように、仕様が違っているのだろう。
俺は笛を吹きながら、全力の気合で念じる!
(仲間になれ!)
ダメだ……反応してるような感じもあるが……大きな影響は与えられていない感じだ。
もう一度だ!
(仲間になれ!)
ダメなのか……。
そうだ……肝心なことを……忘れていた。
今まではまともに使わないで済んできたが、ここは使おう……『テイム』スキルだ!
(仲間になれ! テイム!)
俺は『テイム』スキルを発動させながら、もう一度全力で念じる!
…………おお!
巨大クラゲが苦しみ出した!
そして……体全体が一瞬発光した!
……動かなくなった……気を失ったようだ。
死んではいないようなので、成功した気がする。
『波動鑑定』すると……やった! 『浄魔』になっている!
『種族名』が『マナ・アーマークラゲ』に変わっている。
よし、大成功だ!
あとは、残りの巨大クラゲを“瞬殺バイバイ”ではなく“瞬殺ハロー”で仲間にしてやるか!
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