635.パレットから、バレット。
「『スザク
スザクの巫女となったミアカーナが、
同時に『スザク
両翼の炎の刃『
生きているように向きを変え、魔物たちの間を飛翔し、瞬く間に多くの魔物を屍に変えた。
これもミアカーナが念の力で、動かしているのであった。
「私だって負けられません! 『ゲンブ
今度は『ゲンブの巫女』ドロシーが、
亀の甲羅形状の黒き大盾から、鱗状の小盾が十三個飛び出し、それぞれがシールドバッシュをするように前方の魔物を打ちのめした。
その鱗状小盾の中央部分には、破壊力を高める為の突起も発生していた。
これにより、魔物は即死状態で撲殺されている。
一時的に飛び出した鱗状小盾は、吹き戻しのピロピロ笛のように、すぐに大盾に戻る。
ドロシーは、即座に盾の向きを変え、再度、鱗状小盾を打ち出す。
この攻撃を連続して、次々に魔物を打ち倒していった。
飛び出す十三個もの小盾の軌道を、念の力によって正確にコントロールすることは、今のドロシーにはできなかった。
だが、それでも空間全体を捉え、大まかな軌道コントロールはできていたのである。
これは、彼女の持つ並外れた空間認識能力の賜物であった。
小盾とはいえ他の武器に比べれば接地面積が大きく、魔物に当てるのには十分な軌道コントロールであったのだ。
「『コウリュウ
すると、杖の先端の魔水晶を掴んでいた龍の腕が、魔水晶を離して天に向けられた。
黄金の龍腕から、エネルギーがほとばしり、拳大の黄金球が五つ現れた。
龍腕の先で、浮遊している。
それはすぐに、輝く黄金の弾丸となって魔物に襲いかかった。
破壊力抜群の黄金の弾丸は、連続して魔物たちに風穴を開けていった。
これも、クリスティアが念によって操作をしているのである。
『神獣の巫女』五人は、それぞれに伝家の宝刀……『神器』の力を引き出し、圧倒的な攻撃力でどんどん魔物を駆逐していった。
そしてもう一人、密かに奮戦している者がいた。
宙に浮遊して戦っているクリスティアたちよりも、更に上空……そこに静かなるスナイパーがいた。
彼女は、全方位を見渡し、魔物が戦闘エリアから外れ周辺に被害を及ぼすことがないよう、遠距離射撃で周囲に広がる魔物を排除しているのだ。
彼女の名はナビー……グリムの分身、『自問自答』スキルの『ナビゲーター』コマンドの顕現体である。
グリムとの念話での打ち合わせにより、彼女は陰ながら神獣の巫女たちをフォローしていたのである。
四歳児の体とレベル5というハンデを抱えたハナシルリにはニアがサポートについて、この戦場全体のフォローは、ナビーが担当していたのだ。
『聖血生物』の『
だが、エリアの広さと魔物の数に対しては、十分な数ではなかったのだ。
それを補っているのが、ナビーなのである。
彼女は、周囲に散らばる魔物、そしてレベルが高い魔物を優先して狙撃していた。
上空からの一撃必殺のロングスナイパーである。
ナビーは、この襲撃の中で入手した新しい武装を早速活用していたのだ。
それは、最初に無力化した『操縦型人工ゴーレム
グリムが活動不能にした後、その後処理を任されていたのが、ナビーと『アラクネロード』のケニーだった。
ナビーは、その時に格納庫で特別な武器を発見し、今後の迎撃に活用できる可能性を考えて、抜け目なく『波動収納』に回収していたのだ。
『マシマグナ第四帝国』の遺物でもある特別な武器の『名称』は、『パレットバレット』という。
『階級』が『
この武器をグリムはまだ見ていないが、見たら驚くに違いない。
名前の通り……形が物流で使うパレットの形状なのだ。
そのパレットに乗って魔力を流すと、広さがパレット四枚分に広がる。
そして、四角の四方に胸の高さほどのフェンスが展開して、浮遊するのである。
中央に操作用のレバーが現れ、前後左右の移動や上昇下降ができるようになっている。
四方に出現したフェンスには、『魔法のスナイパーライフル バレットスナイパー』が四つ装備されているのである。
浮遊する移動砲台ともいえる武装であった。
中央の操縦者と四方のスナイパーの最大五人が乗り込むことができる。
だが、一人でも操作し、かつ狙撃もできる仕様になっていた。
ナビーは、上空に浮遊状態で固定して、自らが動くことで四方の魔物を狙撃していた。
出現するスナイパーライフル四本は、四方のフェンスの中央に固定された状態で現れるが、取り外して使うこともできるのである。
ナビーが放つ魔力弾は、高威力で魔物を消し飛ばしていた。
分身体でありながら、本体のグリムよりもはるかに魔力調整がうまいナビーでも、威力を出し過ぎて、地面に大穴を開けてしまう狙撃が何度かあった。
元の威力が高い高性能のスナイパーライフルだったのである。
こうして、大量に放出されている
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