634.デビュー戦で、無双。
『神獣の巫女』たちは、空中に浮遊し高速移動できるようになっている以外にも、お互いに発現した『職業固有スキル』によって、強化されていた。
『ビャッコの巫女』となったハナシルリには、初代ビャクライン公爵が使っていたとされる『強化術』が発現していた。
『強化術』は……『基本ステータス』の『身体力(HP)』『スタミナ力』『気力』『魔力(MP)』と『サブステータス』の『攻撃力』『防御力』『魔法攻撃力』『魔法防御力』『知力』『器用』『速度』の全ての数値を高めるというスキルである。
高める割合は、スキルレベルによるが、現在スキルレベル1のハナシルリでも、 1.1倍程度は高めることができるのであった。
この『強化術』スキルによって、各『神獣の巫女』たちの能力値は、高められた状態になっている。
『ゲンブの巫女』なったドロシーには、『結界術』が発現していた。
これも初代ゲンバイン公爵が使っていたものであり、物理耐性、魔法耐性の目に見えないエネルギー障壁を体の周りに展開するというスキルである。
ドロシーの『結界術』よって、全ての『神獣の巫女』はエネルギー障壁で守られている状態になっている。
『セイリュウの巫女』となったシャリアには、『幻術』が発現していた。
これも初代セイバーン公爵が使っていたもので、自分の幻影を出現させ敵を惑わせるというものである。
スキルレベルが1のシャリアでも、三体の幻影を出すことができる。
これにより他の『神獣の巫女』たちも、自分の周囲に幻影を出現させている状態になっていた。
『コウリュウの巫女』なったクリスティアには、『治癒術』が発現していた。
初代コウリュウド王が使っていたスキルである。
技コマンドの一つである『自動回復』を使うと、『基本ステータス』の『身体力(HP)』『スタミナ力』『気力』『魔力(MP)』の各数値が、減少した場合に即座に回復できるのである。
スキルレベルが1のクリスティアでも、全体の1割を回復できる効果が出せていた。
既に『神獣の巫女』たち全員に、このスキルがかけられていた。
これらの各スキルは、『スザクの巫女』のミアカーナの『舞空術』と同様に、『通常スキル』のレアスキルとしても発現する可能性があるスキルである。
そして『神獣の巫女』の『職業固有スキル』として発現したことによって、指導伝播型の性質を帯び、巫女の指導教育によって身に付けさせることが可能な性質になっていることも同じである。
『神獣の巫女』たちに発現した各スキルは、実は『念術』系スキルという特殊なものである。
スキルの発動に、強い念の練り上げが必要となる代わりに、『スタミナ力』『気力』『魔力(MP)』を消費しないという特別なスキルなのである。
魔力切れなどで追い込まれた場合でも、念じる力さえあれば発動できるという利点があるのだ。
スキルは、通常、『スタミナ力』『気力』『魔力(MP)』のいずれか、もしくは併せて、消費して発動する場合が多い。
その代わりに発動させるときの念も、思う程度の念で良く、また
これに対し『念術』系のスキルは、さらに強い念が必要で、意識して集中しなければならないのである。
今回『神獣の巫女』たちに発現しているスキルは、いずれも、一定時間効果が持続するスキルである。
また、自分に効果を及ぼすだけでなく、他者にかけることもできるというのも特徴である。
ただ、効果が及ぼせる人数は、スキルレベルにより、スキルレベル1だと数人にしかかけられないのだった。
彼女は、伝家の宝刀『セイリュウ
「『セイリュウ
シャリアの
そして、その腕は生きているようにうねりながら伸び、魔物に向かって爪を伸ばした!
——ズンッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ
——ズンッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ
——ズンッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ
——ズンッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ
——ズンッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ
五本の指から伸びた爪は、槍による突きのように魔物たちを刺し貫いた!
爪槍とでも言うべき長さに伸び、五つの方向で魔物たちを串刺し状態にしたのだ。
そして龍腕と化した穂先が自由に動き、何度も爪槍を伸縮させながら魔物たちを屠っていった。
使い手のシャリアは、槍の向きを変えながら念じるだけで、その思いのままに『セイリュウ
まさに、戦巫女たちの無双の始まりだった。
「行くわよ! ついに私のターンなんだから! 無双しちゃうからね! 『ビャッコ
『ビャッコの巫女』ハナシルリも、魔物の集団に攻撃を仕掛けた!
だが四歳児の体で、レベルが5という状態の彼女は、他の『神獣の巫女』たちと違って、極端にステータス数値が低い状態だった。
通常では魔物に対して、大きなダメージを与えるのは難しい状態である。
だが『ビャッコ
そして剣を操るハナシルリの天才的な操念能力で、的確に急所を捉え倒していたのだ。
そして、左右の腕をオーケストラの指揮者のように動かし、剣を操ったのだ。
念の力によって、剣を遠隔操作したのだ。
右手に持っていた剣は、右手の動きに応じて、左手に持っていた剣は、左の動きに応じて、空を駆け回る。
まるで二頭の白虎のように、魔物たちに喰らい付いたのだ。
実際に二本の剣の剣先は、白い虎の顔に変化して、魔物を噛み砕いたり首を切り落としたりしていたのだった。
回転しながら宙を舞っている二本の剣は、刀身の部分での斬り付けと剣先の牙による粉砕・切断で、多くの魔物を屠っていった。
念の力で、二本の剣を同時に自由自在に操るハナシルリは、実は……念を使う天性の才能を持っていたのだった。
目で魔物をロックオンし、手の動きで剣の方向を変え、念の力で攻撃するという一連の行動を苦もなくこなしていたのである。
天才特有の“やってみたらできた”という感覚によって、彼女の優れた操念能力を、彼女自身は気づいていない。
ただ、そばでフォローしていた『クイーンピクシー』のニアだけが、気づいていた。
そして、もはや親友といえるハナシルリのデビュー戦の無双ぶりに、心を躍らせていたのである。
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