611.本当にあった、怖い漆黒……。

  俺の分身、『自問自答』スキル『ナビゲーター』コマンドのナビー顕現体の攻撃で、上空に敵がいることが確定した。


 まだはっきりとした大きさまではわからないが、ここは攻撃を仕掛け撃墜してしまう方が良いだろう。


 そう思った矢先——


 ——ボンッ

 ——ボンッ

 ——ボンッ、ボンッ

 ——ボンッ、ボンッ


 魔法銃の連撃!?


 ……ニアか?

 もう来たようだ。


 そして抑えきれずに、俺から借りた魔法銃を連射したようだ。


(ナビー、ケニー、ジョージ、オクティ、スコピン、ニアと一緒に、攻撃して倒しちゃって! 状況次第で、俺もすぐ行くから)


 俺は、ナビーと一緒にいる『アラクネロード』のケニー、『魚使い』のジョージ、その『使い魔ファミリア』陸ダコの霊獣『スピリット・グラウンドオクトパス』のオクティ、虫馬『サソリバギー』のスコピンに、攻撃の許可を出した。


 ニアは『魔法銃』、ナビーは『魔剣ハウリング』による旋風攻撃、ケニーは糸による攻撃、ジョージは『冷刀レイトウ真黒マグロ』によるビット攻撃、オクティとスコピンは、『共有スキル』にセットしてある『火魔法』と『風魔法』の二人合体攻撃をしている。


 的が大きいだけに、すべての攻撃が命中しているが……大きなダメージは与えられていないようだ。

 激しく揺れている感じだが、まだ落下する気配がない。

 思ったよりも、巨大で頑丈なのかもしれない……。


「仕方あるまい。ここは一旦我に任せよ! 闇に潜みし愚か者の全容を暴いてくれわ! 我が漆黒のブレスを受けよ! 漆黒の墨ブラックブレス!」


 ——プシュュュュュュュュ


 オクティが突然そう言うと、タコチューの口をした。

 いつも愛情表現でジョージにチューを迫るときの口だ。

 なんと、その見慣れたタコチュー口から、真っ黒なブレスを吐いた!

 最初は、プロレスラーの毒霧程度の噴水だったが、徐徐に威力を増し範囲が広がっていく……

 結構、ブレスっぽくなっている。

 そして本当に漆黒だ!

 初めてじゃないだろうか……言葉通り漆黒なのは……。


 なんでも漆黒と言えばいいと思ってるのかと誤解していたようだ。

 本当に漆黒の技を持っていたらしい。

 まぁタコの墨だから、黒いのは当たり前と言えば当たり前なんだが……

 ただここは素直に謝っておこう……ごめんね、オクティ。


 ちなみに、この技はオクティの『種族固有スキル』らしい。

 相手の視覚と臭覚を奪い、『基本ステータス』の『気力』と『サブステータス』の『速さ』を下げる効果があるようだ。

 武器にも纏わり付いて、性能を下げることができるらしい。

 ジョージの持っている『炎盾ホタテ』が出す炎は、“纏わり付く炎”という特殊なものだが、オクティの墨は、“纏わり付く墨”のようだ。

 なんかいろんな意味で……微妙すぎる。

 そして絶対に浴びたくないんですけど……。



 オクティの墨が、かなり広範囲に放射されたお陰で、空中にある物体の姿が浮き彫りとなった!


 ……巨大な釣鐘のようなものが浮いている。


 黒い墨で染まっているので、本当に釣鐘のように見える。

 気持ち的には、除夜の鐘を叩きたくなる感じだ。


 という馬鹿なことを考えてしまったがために……いい作戦を思いついてしまった!

 名付けて……除夜の鐘作戦!


 (ジョージ、周りで待機している他の巨大ザメ浄魔たちに、あの物体に体当たりをかけさせてくれ! 除夜の鐘を叩くイメージで!)


 俺は、ジョージに念話で指示を出した。


 そう……巨大ザメで釣鐘を叩くのだ!

 釣鐘をつく棒……撞木しゅもくの役割をしてもらう作戦だ。

 まぁ作戦も何も、ただ体当たりするだけだけどね。


 我ながら思いつきで、無茶苦茶な指示を出してしまった……。


 (なるほど、除夜の鐘……わがった、んだば、すぐやるよ)


 おお、ジョージは普通に理解してくれたらしい。

 同じ日本人として通じてくれたらしく、何の疑問も持たず行動に移ってくれた。



 すぐに、待機していた巨大ザメの浄魔たちがやってきた。


 巨大ザメ浄魔は、百メートルの体長だが、その比較からすると釣鐘物体は……横幅が二十五メートル、高さが四十メートル近くあると思う。


 除夜の鐘を叩くイメージではあるが、叩く巨大ザメ浄魔の方がはるかにデカい。


 ——ゴーンッ


 最初の一体が、体当たりをした!

 なんとなく……ゴーンと聞こえた気がするが……除夜の鐘を連想していたから、そう聞こえただけだろう。


 やはり体格差は大きかったようで、破壊することはできていないが、釣鐘物体は大きくノックバックした。

 それをもう一体の巨大ザメ浄魔が反対側に回り込んで、下方向に加速しながら激突した。


 釣鐘物体は、その攻撃で支流の手前側……『コロシアム村』側に墜落した。


 (よし、みんなありがとう! なんとか入り口を探して、幹部を捕まえて! くれぐれも用心して)


 俺は、念話で幹部の確保を指示した。


 (オッケー!)

 (了解いたしました)

 (かしこまりました)

 (んだば、行っでぐる!)

 (我が漆黒の魔眼にて、冥府への入り口を見つけようぞ!)

 (皆さん、気をつけていきましょう)


 ニア、ナビー、ケニー、ジョージ、オクティ、スコピンが返事をし、すぐに釣鐘物体の近くに着陸した。

 そして、巨大ザメ浄魔の背から飛び降り、釣鐘物体に近づいた。


 ——ギィィィ、ガチャンッ


 ——ギィィィ、ガチャンッ


 なんだ!?




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