612.まさか、リモコンロボ?

 『クイーンピクシー』のニア、俺の分身『自問自答』スキル『ナビゲーター』コマンドのナビー、『アラクネロード』のケニー、『魚使い』のジョージ、その『使い魔ファミリア』陸ダコの霊獣『スピリット・グラウンドオクトパス』のオクティ、虫馬ちゅうま『サソリバギー』のスコピンという敵幹部捜索メンバーが、墜落した謎の釣鐘物体に着近づいたときに、妙な機械音のようなものが響いた。


 なんと……釣鐘物体が動いている!


 側面から手のようなものが出て、倒れた体勢をもとに戻している。


 そして、今度はホバーのような感じで、少しだけ宙に浮いた。


 ——ズンッ、ズンッ、ズズズズズンッ


 なんとさらには、二本の足が伸びた!


 ええぇぇ……なにこれ!?

 ……人型?

 さっきの側面から出てのは、やはり手だったようだ。


 最後に、釣鐘のてっぺん部分から、頭が出て人型になっている。


 頭は小さいし、足も短くて……なんか可愛らしい感じなんですけど……。

 釣鐘の形がちょうどワンピースのスカートのように見えて、デフォルメされた子供キャラみたいな感じにも見える。


 てか……もしかしてロボット!?

 しかも変形ロボ!?

 どういうこと?


 俺は慌てて、『使い魔人形ファミリアドール』の『共有スキル』の『鑑定』を使う——


 …………なに!

 ゴーレムなのか!?


 なんと、この釣鐘物体は、特殊なゴーレムのようだ。


 というか……俺が思っているゴーレムのように、自立行動はしないっぽいので、魔法道具なのかもしれない。


 『名称』が…… 『操縦型人工ゴーレム 紅II刃べつじん二十八号 タイプR』となっている。


 べつじん……28号……?

 なんだろう……この微妙な感じ……。

 鉄じゃないわけ?

 ……うん、なんか色々と微妙だ。……微妙すぎる!

 まさかリモコンで操縦とかしてないよね?


 この釣鐘ロボは、本来のボディーカラーは赤だったようだ。

 今は、全体的にオクティの墨で黒くなっているが、新たに出た足や手の内側は赤くなっている。


 そして、飛行形態が釣鐘型で、地上では人型に変形できるということなのだろう。


 変形と言うには微妙な気もするが、一応変形ロボと言っていいだろう。

 だが……微妙に心踊らない……。

 男のロマン………ロボ……しかも変形ロボを目の当たりにしてるのに……。

 まぁ敵のロボに熱くなったり、心踊るというのも微妙だから、いいけどさ。


 おお、腰のあたりから……なんだ!?

 別の腕が出た!


 新たに二本の腕が出て、その腕が、赤い……紅色の刀のようなものを持っている。

 あれで攻撃するのか?


 どうやら攻撃用の腕を出したようだ。


(みんな、気をつけて! 一旦離れて!)


 俺は慌てて指示を出したが、出すまでもなく皆距離をとって、警戒する体勢になっていた。


 さてどうするか……壊してしまうのは簡単だが……。


 いろいろ調査するためにも……できれば最小限の破壊で済ませたい。


 それに、名前からして誰かが操縦してるはずだから、できるだけ生け捕りにしたいんだよね。

 そしておそらく、その操縦をしているのが、この襲撃を指揮している幹部のはずだ。

 捕まえた構成員が言っていた『魔物の博士』と『酒の博士』である可能性が高いだろう。


 攻撃用に出た腕は、かなり長い。

 まさにロボットアームのように、細長く、関節がいくつもある。

 いろんな角度に、自由に動く感じだ。


 長い攻撃用の腕は、草を薙ぎ払うような動きで、地上の仲間たちに斬り付けている。


 だが、攻撃スピードは速いとは言えないので、俺の仲間たちなら余裕で避けられる。


 任せても大丈夫だと思うが、ここは直接対峙するとしよう!


 俺は、ハチの『使い魔人形ファミリアドール』の感覚共有を解いて、現場に急行することにした。


 ここ『コロシアムブロック』に残るユーフェミア公爵に、現在の状況を簡単に説明した。

 新たな敵が出たが『コロシアム村』の外であること、それがおそらく襲撃を指揮している幹部であること、すでにニアを始めとして俺の仲間たちが対処していることなどだ。

 そして俺が直接様子を見に行ってくるので、心配しないように伝えた。


「了解した。こっちは心配しなくていい。いざとなったら、私の『固有スキル』を出す。ここの人たちは必ず守るから、幹部の確保に集中しておくれ!」


 ユーフェミア公爵はそう言って、俺を見ながら任せろという感じで男前に頷いた。


 確かに彼女の持っている固有スキル『樹人鎧トレントアーマー』を発動すれば、敵を圧倒できるだろう。

 ただ、このスキルは一時的な強化スキルなので、使用後に反動が来る。

 しばらく動けなくなるくらいに消耗するのだ。

 だから使いどころが難しいスキルでもある。

 そういう意味でも、温存しているのだろう。

 本当にいざというときの切り札で使うつもりに違いない。


 リリイとチャッピーも一緒に行きたがったが、この『コロシアムブロック』の守りを頼むと話して、納得してもらった。


 俺は、ハイジャンプベルトを使って飛び立った!



 現場に来たが……間近で見ると、かなりでかい。


 釣鐘型で飛行していた時は、高さが四十メートルくらいな感じだったが、今は足と頭が出て、五十メートルくらいはあるだろうか……。

 やはりかなり足が短い。


 そして実際に見た迫力には驚いたが……今のところ動きの遅いロボットという感じだ。

 攻撃用の腕はそれなりの速さで攻撃してきているが、足の動きは遅い。


 よくわからないが、こいつはスピードではなく、硬さが売りなのかもしれない。

 防御力は、かなり高い感じだし。


 最小限の破壊で無力化するためには、やはりどこかにある入り口を探すしかない。


 俺は釣鐘ロボの周囲を旋回して、目を凝らす……


 …………あれは……腰というかお尻にあたる部分に、少し違和感があるところがある。

 オクティが墨をかけてくれたお陰で、わかりやすくなっている。


 なんとなく……ハッチっぽい。


 俺は急速に近づいて、切れ味抜群の『魔剣ネイリング』を突き刺した!


 よし、扉のようなものを貫通した!

 手ごたえからして、奥は空洞になっている。

 やはり入り口で間違いないようだ。


 俺はそのまま『魔剣ネイリング』を動かし、俺が通れるくらいのサイズに穴を開けた。


 (俺は中に突入したから、こいつが『コロシアム村』に近づかないように、牽制して!)


 俺は、ニアたちに念話で牽制の指示を出した。



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