598.警備員、無双。
『南ブロック』は、『兎亜人』のミルキーの活躍によって、魔物、『
俺は次に、『西ブロック』で稼働中のハチの『
この『西ブロック』は、『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラ、『アメイジングシルキー』のサーヤ、『家精霊』こと『付喪神 スピリット・ハウス』のナーナ、『スピリット・ブロンド・ホース』のフォウが、主力となって戦っている。
人々の避難誘導はここも終わっていて、魔物たちもあらかた片付いているようだ。
だがまだ油断ができない。
ここもそうだが、東西南北の各ブロックでは未だ魔物たちの出現手段であると思われる『箱庭ファーム』の魔法道具が発見されていないのだ。
回収できたのは、『コロシアムブロック』で俺の見つけた一つのみである。
魔物は東西南北の各ブロックでほぼ同時に出現しているので、同じような機能の魔法道具が必ずあるはずなのだ。
そんな矢先だ……突然、魔物が出現した!
しかも……大量だ。
蜂の魔物が一気に百体くらい出現した!
以前、迷宮探索の時に倒した『イビル・キラービー』ではない。
それよりも、もっと強力な種族のようだ。
『鑑定』によれば……『イビル・ホーネット』となっている。
ホーネット……つまりはスズメバチだ。
見た目もかなり凶悪だ。
まず顔がめちゃくちゃ怖い。
そして大きさが人間と同等以上……二メートルくらいある。
それがざっと百体はいる。
レベルは35前後なので、俺の仲間たちにとっては大きな脅威ではない。
だが……一般人はもとより、衛兵や戦ってくれている有志の皆さんにとっては、かなり厳しいレベルだ。
そして何よりもこの数……
ちょっとやばいかもしれない……
この『西ブロック』にも人々を守るために『スライム軍団』『野鳥軍団』『野良軍団』『爬虫類軍団』『猿軍団』がいるが、人々の守護要員であって戦闘要員ではないので、倒すのは難しいだろう。
まともに戦えるのは『スライム軍団』くらいではないだろうか。
スズメバチ魔物を倒せるのは、実質俺の仲間たちだけだ。
でも数が多すぎる。
時間をかけるれば倒せるだろうが、その間に被害が出ないとも限らない。
おそらく『光柱の巫女』テレサさんがかけてくれた『精霊のささやき』による防御結界が効いているとは思うが、過信は禁物だ。
ん……サーヤが何かをやろうとしている……
「
サーヤが、『アメイジングシルキー』の『種族固有スキル』を発動したようだ。
サーヤの手前に召喚陣のようなものが現れている。
紫色に光る円形の召喚陣だ。
そしてそこから……警備員!?
警備員のような制服を着た人たちが十人現れた!
全身黒ずくめで、盾と警棒のようなものを装備している。
そして、防弾ベストのようなものを着用し、頭にはヘルメットを被っている。
サーヤの『種族固有スキル』の『
本当に警備員が現れるとは……。
てか、誰なのよ!? そして、ほんとにどこから来てるのよ!?
前からすごく気になってたんだよね……。
俺は、警備員の一人に焦点を当てて『鑑定』をしてみた……
『種族』に『特殊スキルによる擬似召喚精霊』とある。
……擬似召喚精霊?
よくわからない……。
ダメ元で詳細表示と念じてみる……
おお、表示された!
『シルキー族の英霊の残留思念が一時的に実体を持った状態』となっている。
シルキー族の過去の英雄ってこと?
その残留思念をスキルの力で実体化してるのか?
レベルは、サーヤと同じ55だ。
召喚した者と同じレベルになるということなのか……?
「緊急通報! 敵を迎撃せよ!」
サーヤが指示を出した!
それに伴い警備員たちは、すぐに行動に移る。
各自散開して、武器を手にした。
標準装備の盾と警棒ではなく、それぞれの武器があるようだ。
しかも召喚するように、手元に突然現れている。
「
警備員の一人が、投擲槍を放った!
——ズボンッ、ボンッ
スズメバチ魔物を二体同時に刺し貫いた!
凄い威力だ。
そしてすぐに次の槍を召喚し、再度投擲した。
——ズボンッ、ボンッ、ズンッ
今度は、三体を刺し貫いた。
「
別の警備員は、矢を放った!
連射であっという間に五体を落とした。
「
今度は、魔法銃を使う警備員だ!
連射で七体を葬った。
「
別の警備員は、剣を召喚した。
そして……
「
なんとその警備員は、背中に翼を生やした!
天使の羽みたいなやつだ!
そして飛び立つと……スズメバチ魔物を斬りつけ、一方的に屠っている!
……なにそれ!?
空も飛べちゃうわけ!?
めっちゃ強いじゃん!
サーヤのスキル……思ったより全然凄いんだけど……。
何このとんでもスキル……サーヤ、戦闘でも無双じゃないか!
剣を使う警備員は、他にも二人いて同じように翼をはやして空中戦を展開している。
どんどんスズメバチ魔物が減っていく……。
たった十人の警備員だと思ったが……凄い精鋭部隊だ。
よく考えたら、サーヤと同じレベル55の味方が十人一気に増えるってことだから、それだけでも凄いよね。
更には、それが過去の英雄なんだから……。
サーヤ自身も愛用の『魔法のマスケット銃』で狙撃しまくっている。
ガンガン撃ち落としている。
『スピリット・ブロンド・ホース』のフォウは、魔法道具『
スズメバチ魔物を轢き倒しまくっているのだ。
『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラは、『固有スキル』の『
『家精霊』こと『付喪神 スピリット・ハウス』のナーナは、愛用の『魔法の銃剣』で狙撃している。
強力な『固有スキル』の『
敵が空中にいることと、レベル差を考えて、銃での狙撃の方が効率が良いと判断したのだろう。
一気に百体ものスズメバチ魔物が出現し、一時は心配したが、まったくの杞憂だった。
あっという間に殲滅してしまった。
これでこの『西ブロック』も、いったん落ち着けるだろう。
戦闘が終わると警備員たちは、光の粒となって消えていった。
ただ驚くことに……警備員たちが使っていた武器は、そのまま残っている。
試しに『鑑定』してみると……
『英霊剣 シルキーソード』
『英霊槍 シルキージャベリン』
『英霊銃弾 シルキーバレットガン』
『英霊弓矢 シルキーボウアロー』
という『名称』の『
驚くしかない……
『
普通は『
しかも、全て『
こんな置き土産付きのスキルなんて……めちゃくちゃ凄すぎて……もうわけわからん。
何の大盤振る舞いなわけ? ……まぁありがたいけどさ。
魔法剣が三本、魔法銃が二丁、魔法弓が二つ、魔法槍に至っては、投擲槍だけに十二体もある。
これだけのものを手に入れるのに、どれだけの金貨が必要なことか……。
いや金貨があっても、そもそも『
なんか……だんだん……すごい得した気分になってきた!
おお、あれ……どうも喜んでばかりもいられないようだ。
サーヤがぐったりしている……。
このスキルも……使用後にしばらく動けなくなるくらい消耗するようだ。
ナーナが見てくれているが……。
(サーヤ、見てたよ。すごかったね、しばらく休んでて)
(だ、旦那様……あ、ありがとうございます……)
俺は念話を入れて、サーヤにゆっくり休むように伝え、このエリアの戦闘の後処理と引き続きの警戒を、ナーナ、トーラ、フォウに指示した。
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