595.またもや、サプライズ召喚!

 突如現れたヒュドラは、なんとか被害を出さないで倒すことができた。


 ヒュドラの姿を見た時は、おそらく皆絶望しかけたに違いない。

 三体も現れたからね。

 しかも首が七つもある奴が……。


 俺は、改めて周りの人々の様子を窺う。

 あれ……ユーフェミア公爵を始めとした『高貴なる騎士団ノブレスナイツ』の面々も、マリナ騎士団長率いる『セイリュウ騎士団』の面々も、ビャクライン公爵一家も、他の人たちも……みんな口をポカンと開けて、固まっている……。


 かなり衝撃だったようだ。


 突然のヒュドラの襲来もそうだが、現れたドラゴンにも驚愕したのだろう……。


「皆さん、大丈夫です! ヒュドラは倒しましたから安心してください! 今現れたドラゴンは、我々の仲間です。心配しなくて大丈夫です!」


 俺は拡声の魔法道具を使って、そう話した。

 だが、まだみんなポカンとしている。

 まぁパニックになるよりは良いのだが……。

 ユーフェミア公爵たちは、『ライジングカープ』のキンちゃんが、黄金の龍になる姿も見てるから、それほど驚くことではないと思うのだが……。


「な、なんと……あのちっちゃな女の子たちが、ヒュドラの首を落としたのか……。妖精女神様もそうだし、あのグリム殿もあっという間に二本の首を切り落とした……。何なのだ……。私ですら、足がすくんだというのに……。彼らはいったい……」


「そうです……しかも、ドラゴンを従えている。あのドラゴンはまるで、初代様とセイリュウ七本槍を助けたドラゴンではないですか……。もしや、セイリュウ様の御使いでは……?」


 ちょうど俺のそばにいた『セイリュウ騎士団』格付け第二位の剣士ソードンさんと第七位の弓士ユミルさんが、そんな言葉を呟いた。


 あれ……ヒュドラやドラゴンに驚いているだけじゃなく、リリイやチャッピー、俺たちが倒したことについても驚かれているのか……。


 冷静に考えると、そうかもしれない……。

 英雄譚では、初代セイバーン公爵とセイリュウ七本槍が、死闘の末になんとか倒した敵だからね。

 それを四人で、ほぼ瞬殺で倒してしまったからなあ……

 しかもそのうち二人は、八歳児だし……。


 でも力を出し惜しみしてる場合じゃないから、しょうがない。

 今は、深く考えるのはやめておこう。


 早く他のエリアの状況も確認しないと。


 俺は、『南ブロック』のハチの『使い魔人形ファミリアドール』に『感覚共有』して、様子を確認する……


 ここも中央にある公園に、人々の避難がほぼ完了しているようだ。

 魔物、『死人魔物しびとまもの』、『魔物人まものびと』がまだかなり残っている。


 ここは、『スピリット・オウル』のフウ、『兎亜人』の姉弟ミルキー、アッキー、ユッキー、ワッキーたちが、戦力の中心になっているが、苦戦しているようだ。


 だがその理由が、すぐにわかった。

 ここに出現している『魔物人』のレベルが高い。

 今残っているのは五体だが、皆レベル50を超えている。

『魔物人』の正体はまだわからないが、今わかっているのは、人が意識を保ったまま魔物化したか融合したということだ。

『種族』としてはもう人ではないが、まともな自意識のない『死人魔物』と違って、『魔物人』は連携して戦っている。

 もしかしたら、レベルの高い兵士とか『正義の爪痕』幹部構成員とかが基になっているのかもしれない。


 フウとミルキーたちは、『魔物人』と『死人魔物』を中心に対処しているようだ。

 他の魔物は、このエリアに配されている衛兵や戦える有志の人たち、そしてこのエリア担当の俺の他の仲間たちが応戦している。

『スライム軍団』『野鳥軍団』『野良軍団』『爬虫類軍団』『猿軍団』の仲間たちだ。


 この『南ブロック』の『魔物人』は、ゴリラの『魔物人』のようだ。

 額にゴリラの顔が浮き出て、両肩にもゴリラの顔が付いている。

 そして腕が、ゴリラのような腕になっているのだ。

 筋肉質で大きな腕になっている。


(ご主人しゅじん、大変だ! オレっち、また出ちゃう! サプライズ召喚きたぁぁぁ!)


 そんな中、『東ブロック』にいる『ミミックデラックス』のシチミから念話が入った。


 どうも『種族固有スキル』の『サプライズ召喚』が発生しているようだ。

 これは、いつ発生するかわからない、ほんとにサプライズな召喚だからな……。


 (シミチ、大丈夫かい?)


 (うん、うーん……)


 おお、通信が途絶えたが……


 (ご主人しゅじん、なんか出てきた。多分……すごいやつ。うぅんと……『階級』が『伝説の秘宝級レジェンズ』になってる! 『名称』が……『バニーガールアーマー』だって。可愛いウサギ顔のペンダントなんだけど……これどうしよう? あれ……待って……詳細表示を確認すると……『このアイテムに選ばれし者のみが、装着することができる』って書いてある。どうすれば……あ! なんか勝手に飛んでちゃった! 多分『コロシアムブロック』か、『南ブロック』の方に飛んでった。すごい速さだ……)


 シミチが少し混乱しているが……どうもアイテムが持ち主を求めて、自分で飛んでいったようだ。

 それにしても…… 『伝説の秘宝級レジェンズ』のアイテムとは……。

 そして……『バニーガールアーマー』という名前が、めちゃめちゃ気になる。

 まさか『魚使い』ジョージの『貝殻ビキニアーマー』に続く、イロモノもといセクシー装備なのだろうか……。


 と思っていた矢先に……キラリと空が輝いた。

 空から輝くものが……すごい勢いで近づいてくる!


 そして……上空を旋回している。


 今度は、降りて来た!

 なんだ……ミルキー……アッキー……ユッキー……ワッキーの上を順番に動いている。


 おおっと、ミルキーの前に止まって、チェーンが展開して首に巻き付いた!

 ミルキーが選ばれたようだ!


 当のミルキーは、突然のことに驚いている。


 (ミルキー、それはシチミの『サプライズ召喚』で出た特別なアイテムのようだ。使用者をアイテムが選ぶらしい。ミルキーが選ばれたみたいだから、使ってみたらどうだい?)


 俺は、念話でミルキーに説明した。


 (え、そんな……。わ、わかりました。感謝です! やってみます! あ、でもどうやって……あれ……なんか使い方がわかる……頭の中に流れ込んでくる……やれる! やります!)


 ミルキーは戸惑いながらも、この『伝説の秘宝級レジェンズ』のアイテムを使うようだ!



 

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