594.シークレットドラゴン、圧倒!
『
そして、どんどん巨大化していく……
……大きい……大きい……
そして巨大化が止まると……白い巨大雲が霧散していく……
そこに現れたのは……
おお! 巨大なドラゴンだ!
『ライジングカープ』のキンちゃんのように、ドラゴンの姿に変わってしまった。
キンちゃんは東洋の龍という姿だったが、オリョウは西洋のドラゴンだ!
強そうな……そして威厳のある黒いドラゴンだ。
黒光りしている。黒く光る鱗は、少しメタリックな感じですらある。
『鑑定』をかけてみると……
『
キンちゃんは『種族固有スキル』の『登竜門』を使うことによって、『
オリョウの『種族固有スキル』も、キンちゃん同様一時的にドラゴンの力を得る強化スキルだろう。
一般に存在するドラゴンの階級は、基本的に下から『亜竜』『下級竜』『中級竜』『上級竜』『
そうだとすれば、『亜竜』の『ヒュドラ』よりも、格は上ということになる。
オリョウの方がレベルが低いといっても、十分倒せるだろう。
キンちゃんの例から言っても、今のオリョウならやれるはずだ。
このまま信じて見守ろうと思うが……周辺被害が出ないか心配だ。
(オリョウ、大丈夫かい?)
(ご主人、アチシ、キンちゃんパイセンみたいにドラゴンになっちゃったし! あんなダメンズヒュドラは、瞬殺バイバイだし! アチシにお任せって感じ!)
(わかった。任せるよ。ただ周りに被害が出ないように気をつけてね)
(了解って感じ。アチシも周辺被害はマジ勘弁、今のアチシなら、うまくやれっしょ!)
オリョウはそう言うと、ヒュドラを睨んだ。
そしてオリョウの瞳が赤く光った!
「眠れる竜の念波! 上がれだし!」
オリョウは、『
おお、ヒュドラの巨体が宙に浮いている!
『眠れる竜の念波』は、対象を強制的に宙に浮かせるスキルのようだ。
サイコキネシスのようなものかもしれない。
「あんたは、さよならバイバイだし!
オリョウは、二つ目のスキルを使うようだ。
オリョウの口に、光のエネルギーが収束していく……
ブレスを出すのか?
ヒュドラは上空に浮いてるから、周辺被害は発生しないとは思うが……
ああ、でも普通のブレスとは違うようだ……。
収束していた光のエネルギーが、口の前で固体化していっている……
なんだ……黒い鋼鉄のような塊になったが……これは腕の形なのか?
口の前で二つの大きな鉄の塊ができている。
そして……打ち出された!
これは……まるでロケットパンチ!?
俺の大好きなロボットアニメの主人公メカの必殺技みたいだ!
——バンッ
——バンッ
二つの腕型のエネルギー収束体は、それぞれにヒュドラの頭を粉砕した!
ヒュドラの頭部が粉々だ。
ワンパンで……すごい威力だ……。
ただ……さっき聞いた『セイバーン公爵とセイリュウ七本槍』という英雄譚では、ヒュドラは再生する前に全ての首を落とさないと倒せないはずだった。
まだ三つ残っている。
早く残りを潰さないと……
いや、心配ないようだ。
なんと……ロケットパンチもといブレスパンチが反転して戻ってきた!
一発当てて終わりではないらしい。
継続攻撃できるようだ。
そしてオリョウの念によって、自由に誘導できるらしい。
残りの三つのうち二つの首を粉砕し、続けざまに残った首も粉々にした。
これでヒュドラは、絶命したようだ。
動きが止まったまま宙に浮いている。
オリョウは、それを静かに地面に落とした。
いやぁ、オリョウの見事な勝利だった。
周辺被害も全く出していない。
(オリョウ、見事だったよ。体は大丈夫か……ああ! こっちにもヒュドラが出現した! 俺は対処にあたるから、そっちは頼んだよ!)
なんと、オリョウに念話をしている途中で、俺がいる『コロシアムブロック』に突然ヒュドラが出現した。
俺は急いで『
三体!?
ヒュドラが三体も現れている!
コロシアムの観客席部分が、ヒュドラに押し潰されて大きく破壊されている。
破壊の風圧で飛ばされた破片が、中央の闘技場部分に集まっている人たちに当たってしまったが、『光柱の巫女』テレサさんの『精霊のささやき』による防御結界で、怪我人は出ていないようだ。
三体のヒュドラは、首が七本もある!
英雄譚で語られている情報が確かならば、ヒュドラは、首が多いほど強いらしい。
『東ブロック』に出現したものよりも、強い奴が三体も現れたということか……。
三体ともレベルは67だ。
早く倒してしまわないと……
俺が動き出したと同時に、なんとリリイとチャッピーも動き出していた!
「みんなを傷つけるのは許さないのだ!」
「お仕置きしちゃうなの!」
リリイが『魔鋼のハンマー』を投げつけた!
そして、チャッピーも『魔法のブーメラン』を放った!
二人は、当然『足枷のアンクレット』をオフにしているので、全力の投擲だ。
今のリリイたちは、『ミノタウロスの小迷宮』での合宿の時から、5つ上がったレベル55だ。
——グシャッ
——ザンッ
——グシャッ
——ザンッ
『魔鋼のハンマー』と『魔法のブーメラン』は、それぞれに、往復攻撃で二本の首を粉砕、切断した。
一瞬で四つの首が無くなってしまった。
レベル的には格上と言える相手だが、全く問題ないようだ。
今度はニアが、『如意輪棒』を構えている!
ニアも一緒に動き出していたようだ。
「伸びろ! 如意輪棒! ピクシィィィィホームラァァァァンッ」
叫びながらのフルスイングは、一つの頭を粉砕した!
残りの二本の首は、ニアの攻撃とほぼ同時に、俺が切れ味抜群の『魔剣ネイリング』で瞬殺で切り落とした。
これでヒュドラは絶命した。
残るは、二体、すぐに倒そうと思ったのだが……
「ご主人、亜竜のヒュドラはアチシにお任せ!」
そう言ってオリョウが現れた。
『東ブロック』から飛んできてくれたようだ。
黒く輝くドラゴンの出現に、避難している人々が騒然となっているが……
微妙にオリョウの口調がのんきだからか、パニックにはなっていない。
そんな中、オリョウは宙に浮いたまま、二体のヒュドラを同時に浮上させた。
二体は、さっきのヒュドラと同じで、身動きが取れないようだ。
ヒュドラ自体は羽を持っていて空を飛べるが、オリョウのこのスキルに捕われていると逃げることができないらしい。
そして先程と同じように『
……屠ってしまった……。
一方的な暴虐である!
オリョウの圧倒的な攻撃に絶命した二体のヒュドラは、その巨体をゆっくりと元いた場所に沈めた。
これでもうヒュドラは大丈夫だと思うが……
オリョウもゆっくりと降りてくる。
「ご主人、アチシ……よくわかんないけど、力使いすぎたみたいだし……。一旦休憩するしかないって感じ…… マジ無念……」
おおっと、オリョウが活動時間の限界を迎えたようだ。
キンちゃんのスキルと同じ系統だとすれば、限られた時間の強化スキルだからね。
「オリョウ、いいんだ。そのスキルは、一時的な強化スキルだから、反動で体に負担が来るはずだ。しばらく休んでて」
俺がそう言うと同時に、オリョウは『
「オリョウちゃん、最高にかっこよかったわ!」
「ニアパイセン、ありがとうだし。アチシも、キンちゃんパイセンみたいなドラゴンになっちゃったし。アチシもドラゴン王になるかもだし! これからもっとがんばるし! マジ最高かよ!」
オリョウは、嬉しそうにそう言うと、目を閉じた。
ぐったりとして動かない。
ニアとリリイとチャッピーが駆け寄って、回復薬を与えてくれている。
やはり、相当な反動が来るようだ。
でも、しばらく休んでいれば、大丈夫だろう。
素晴らしい働きだった、グッジョブ、オリョウ!
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