593.オリョウ、覚醒!

 俺は、他のブロックの状況を確認することにした。


 まずは、『東ブロック』だ。

 東ブロックに飛ばしてある『使い魔人形ファミリアドール』に感覚を共有する……


 避難エリアである中央の公園に、ほとんどの人が集まっているようだ。


 魔物は、まだかなりいる。


死人魔物しびとまもの』と『魔物人まものびと』も結構いる。


 ただみんな俺の指示通り、人々を守ることを優先に戦っているので、大きな被害は出ていない感じだ。


 ——バゴーンッ、バン、バン


 なんだ!?

 空から何かが降って来た!


 公園の前の建物に落ちたようだ。


 土煙が舞い上がっている。

 周辺建物も同時に潰されたようだ。


 そして、土煙の中に大きな陰が映っている……


 でかい……なんだあれは?


 あの巨体は……まさか、ドラゴン?


 俺は急いで、『使い魔人形ファミリアドール』を通して『共有スキル』にセットされた『鑑定』を使用する……


 亜竜ヒュドラだと!


 なんと現れたのは、竜に類する巨大生物だった。

 しかもレベル65だ。

 そして首が五つある!


 周辺建物は、やはり完全に押し潰されている。

 もし公園に直撃で落ちてきていたら……避難している人達が危なかった。


 ——ギュッ


 え! 口から何か液体を飛ばした!


 ——べチュンッ


『エンペラースライム』のリンが、巨大化して受け止めた。


 そのお陰で後ろにいる避難民たちには、かからなかったようだ。


 あれは……毒のようだ。

 毒を吐くのか……。

 俺の仲間たちは『共有スキル』に『状態異常耐性』があるから大丈夫だろうが、避難民にかかるとまずいな……。


 ——ギュッ

 ——ギュッ

 ——ギュッ

 ——ギュッ

 ——ギュッ


 今度は、五つの首全てが毒を吐いた。


竜馬りゅうま』のオリョウ、『ミミックデラックス』のシチミ、『ワンダートレント』のレントンが、リンと共に体を張って防いだが、一部避難民にかかってしまった。


 だが……大丈夫だったようだ。

 毒が触れた瞬間、光の幕が輝いて防いでくれたのだ。


 これはおそらく『光柱の巫女』テレサさんが、『従者獣』アスターの『祈りのブレス』によって拡散させた『精霊のささやき』の効果だろう。

 防御結界を張るスキルということだったが、物理的なダメージだけでなく毒も防いでくれるようだ。


 テレサさんのおかげで、毒に触れても今のところ大丈夫そうだが、早くあいつを倒してしまわないと……


 仲間たちも同じことを考えたようで、まずオリョウとレントンが攻撃態勢に入ろうと前に飛び出た。


 だがその瞬間、三本の首が同時に襲いかかってきた。


 これを躱した二人だったが、残った首が死角から現れ、なぎ倒されてしまった。


 それでも、うまくガードしながら勢いを殺したようで、オリョウとレントンはすぐに立ち上がった。

 ダメージは、ほとんど受けてないようだ。


 と思ったが……オリョウの動きが止まっている……どうしたんだろう?


 (ご主人、アチシ、クラスチェンジできるって感じ! 天声が突然告ってきたし。やっちゃっていいかし?)


 オリョウから念話が入った。

 動きが止まっていたのは、天声を受けていたからだったようだ。


 クラスチェンジができるのか……

 今レベルが上がったのかなあ……それとも違う条件でクラスチェンジが発生したのか……

 そういえば……オリョウだけが俺の『行動仲間パーティー』メンバーの中で、通常生物だったんだよね。

 とにかく、このタイミングで天声が聞こえたという事には、意味があるはずだ。


 (いいよ! でも無理はしないで。今『使い魔人形ファミリアドール』で見てるから、危なくなったらすぐ行くよ)


 俺は、クラスチェンジの許可を出した。


 (オッケーだし! ご主人に見られてるなんて最高かよ! やってやっかんね!)


 オリョウは、やる気のようだ。


 期待して見守ろう。


「クラスチェンジ! 龍馬たつま!」


 オリョウが叫ぶと同時に、その体が光に包まれる————


 球体に広がったその光は、繭のようになった。


 そして弾けた!


 出てきたオリョウの姿は………


 おお、少しだけ変わっている。

 頭部に二本の短い角が生えている。

 少し飛び出しているだけなので、角っぽくはない。

 キリンの角と似た感じだ。

 『竜馬りゅうま』は、トカゲが二速歩行したような感じの生物で、恐竜のラプトルに似た感じなのだが、『龍馬たつま』になって角が生えただけで、だいぶ精悍な顔に見える。

 体色は青のままだが、少し濃くなっている気がする。

 そういえば、『竜馬りゅうま』の一般的な色はグレーらしいのだが、オリョウは青だったんだよね。


 それにしても……『竜馬』に上位種族があるという話は聞いたことがない。

 この『龍馬たつま』というのは、特殊なクラスチェンジなのかもしれない。


 俺は、『使い魔人形ファミリアドール』を通して『共有スキル』の『鑑定』を使う……


『種族』が『龍馬たつま』となっていて、レベルは以前と同じ60だ。


龍馬たつま』に焦点を当てて、詳細と念じると……表示された。


 それによると…… 『龍馬たつま』は、『竜馬』が昇華した特別な上位種族で、霊獣に近い性質を持っているらしい。

 そして『龍馬たつま』は、空を走れるようだ。

 スキルの力ではなく……通常備わっている能力として空が走れるらしい。


 飛竜たちと同じように、空が飛べるということだろうか……いや空が走れるということだから飛ぶのとは違う気がする。

 現に翼も生えてないしね。


『スピリット・ブロンド・ホース』のフォウが、魔法道具『天翔あまかけるひづめ』を四本の脚に装着することで空を走れるようになっているが、オリョウは同様の能力を身に付けたようだ。


 ちなみに、『天翔あまかけるひづめ』は、『イビラー迷宮』の宝物庫で手に入れた魔法道具で、『階級』が『究極級アルティメット』なのだ。


 空を走れるようになったし、霊獣ような種族になったし、凄いパワーアップだ!

 オリョウが、このタイミングで覚醒してくれたようだ。


 それから…… 『臥龍転生がりゅうてんせい』という『種族固有スキル』を持っている。


「うぅぅぅっ、漲るって感じ! 気分最高かよ! マジ手加減無しだかんね! 臥龍転生がりゅうてんせい!」


 おお、オリョウは早速、『種族固有スキル』を使うようだ!



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