575.記念メダル、製作。

 俺は『コロシアム村』の屋敷の執務室にいる。


 コロシアムの特別室でのセイリュウ騎士の皆さんも含めたティータイムが終わり、屋敷に戻ってきたのだ。


 皆さんを夕食に招待しているが、まだ時間があるので、いくつか仕事をこなすことにしたのである。


 執務室に来て、俺はすぐに『高貴なる騎士団ノブレスナイツ』の記念メダルの製作にとりかかったのだ。


 思ったよりも時間をかけずに、仕上げることができた。


 川サメの歯を丸く削り、そこに『高貴なる騎士団ノブレスナイツ』の紋章である花束を刻み込んだ。

 色はつけないので、白いメダルだが光沢があってなかなか綺麗だ。


 大きさは、オリンピックなどのメダルと同じようなサイズにした。

 そして、紐をつけて首からかけられるようにした。

 これを利用して、壁に飾ることもできる。

 本当は盾のように飾れるケースも作ろうと思ったのだが……時間がないので今回は諦めた。

 そのかわりに、紐を付けたのだ。

 部屋に飾ることもできるし、自分の首にかけることもできるというわけである。


 そしてキャッチコピー付きの商品名も考えた。

 『〜歴史の証言者〜 限定メダリオン『高貴なる紋章ノブレスエムブレム』』

 限定商品として大々的にアピールして、この『三領合同特別武官登用武術大会』を観戦した記念品として購入してもらおうと思っている。

 いわばメモリアルグッズだ。


 値段をいくらにしようか迷ったが……高すぎず安すぎずということで三千ゴルにした。

 日本円で言えば三千円くらいだ。

 記念の限定メダルということからすれば、高い値段設定にした方がいいのかもしれない。

 だが、俺的にはなるべく多くの人に記念品として持って帰ってもらいたかったのだ。

 そこで『アメイジングシルキー』のサーヤと相談の上、この値段になった。


 限定メダルとはいえ、希望者が全員買えるように大量に生産しようと思っている。


 今回は、俺の『波動』スキルの『波動複写』コマンドを使うので、あっという間に量産できてしまうのだ。


 コロシアムには、四つの入り口があるが、各入り口の近くに販売用の特設コーナーを作ることにした。


 明日からと言わず、今からすぐに販売するつもりだ。


 新しく販売用のスタッフを手配する必要があるが、この『コロシアム村』に移住してくれる予定のアンティック君を始めとした『シンニチン商会』の皆さんが手伝ってくれることになった。


 これで、記念グッズであり『高貴なる騎士団ノブレスナイツ』のファングッズでもあるメダルを販売することができる。


 欲張っても仕方がないが、本当は……もう少し魅力的なグッズが欲しいところだ。


 将来的には、絶対に写真代わりの精密絵を準備したいし、フィギュア好きの俺としてはフィギュアも作ってみたい。

高貴なる騎士団ノブレスナイツ』メンバーのフィギュアを全部並べたら、かなりいい感じかもしれない。

 ただ気をつけないと、変態扱いされる危険があるけどね……。

 今のうちから、仲間たちにはフィギュアの持つ素晴らしさ、造詣美などを教育しておかねば……俺を変態扱いしないように。


 まぁフィギュア作りは、すぐにはできそうにないけどね。

 俺には優れた造形美を作れるような才能もスキルも無いので、彫刻系のスキルを持った人材を探さないといけないのだ。


 難しいようなら、デフォルメしたぬいぐるみでもいいかもしれない。

 むむ……ぬいぐるみなら何とか作れそうな気がする。

 というか……この世界って……ぬいぐるみがないような気がするけど……。

 ぬいぐるみを作ったらいいんじゃないか!

 子供たちめっちゃ喜びそうだし……そうだ! ぬいぐるみを作ろう!

 養護院や孤児院の子供たちに、ぬいぐるみをあげたい!


 思わぬ感じで、閃いてしまった。


 クッションを兼ねたぬいぐるみとかも、いいかもしれない。

 まん丸のクッションを作って……顔を書けばスライムのぬいぐるみになるような気もするし……。



 精密絵やフィギュア、ぬいぐるみは今後の課題として、すぐに作れそうな物で他に何かないか考えてみた。


 そこで思いついたのは、ペンダントなどの装飾品だ。


 『高貴なる騎士団ノブレスナイツ』の各メンバーをイメージしたペンダントを作ってもいいかもしれない。


 彼女たちの特徴的な武器を、デザインしたらいいんじゃないだろうか。

 ペンダントトップを、武器の形のアクセサリーにするのだ。

 ユーフェミア公爵は二本の剣、長女のシャリアさんは剣、次女のユリアさんは大剣、三女のミリアさんは槍となる。

 第一王女のクリスティアさんは二本の剣、護衛官のエマさんは剣、エレナ伯爵は二本の棍、執政官のキャロラインさんは剣となる。

 アンナ辺境伯は、矢がいいだろう。

 当然、武器がかぶっている人がいるが、デザインを変えれば問題ないだろう。

 このペンダントトップも川サメの歯を使って加工するつもりだ。

 チェーンの部分は、バッファロー魔物の皮で革紐を作ってあるので、それを使えばいいだろう。


 これは、記念品というよりもファングッズとしての意味合いが強いので、高めの値段設定でもいいかもしれない。

 一つ一万ゴルで販売しよう。


 俺はすぐに製作に取り掛かり、完成品を『波動複写』で量産した。


 これも記念メダルと同じコーナーで販売すればいいだろう。



 一段落したところに、ニアとハナシルリちゃんがやってきた。

 ニアは、アナレオナ夫人にうまく言って、ハナシルリちゃんを連れだしたようだ。


 それはいいのだが……なぜかハナシルリちゃんが『ゴスロリ』ファッションになっている。

 しかもニアまで……なぜに……?


「いやぁ、一度『ゴスロリ』ファッション着てみたかったのよねー。さすがに三十五歳じゃ着にくかったし。今ならバリバリのロリータだから、このチャンスを逃す手はないからね」


 ハナシルリちゃんは、無邪気な笑顔でくるくる回っている。

 ただ言っていることは、三十五歳のおばさんだな。

 いや……三十五歳をおばさんと言っちゃ駄目だな……。

 女盛りと言っておいてあげよう……。

 見た目はかわいい盛り、中身は女盛り……むぅ微妙すぎる……まぁそんなことはどうでもいいが。


 ハナシルリちゃんとニアは、俺にわざわざ『ゴスロリ』ファッションを見せに来たらしい。


 確かに、ハナシルリちゃん似合ってるけどね。

『ゴスロリ』ファッションといっても、ハナシルリちゃんが着ると少し大人っぽいだけの普通のドレスにも見えるからね。


 それにしても、なぜニアまで『ゴスロリ』ファッションなのよ……。


 ニアは褒めて欲しそうな視線を向けてくるから……一応、似合ってると褒めたけど。

 いつものアイドル風衣装でいいと思うんですけど……。

 しかも、ニアの『ゴスロリ』ファッションは、動きやすさを考慮したのかミニスカート仕様になってるのだ。

 これもこれで、アイドル風衣装と言っていい感じなんだけどね。


『アラクネーロード』のケニーの『種族固有スキル』の『糸織り錬金』で作ってもらったようだ。

 確かに、今後のハナシルリちゃんの安全を考えて、ケニーに服を作ってくれるように頼んだけどさ……。

 なにも『ゴスロリ』ファッションにしなくても……まぁ今更しょうがないけど。


 ケニーの『糸織り錬金』で作ってもらうと、ただの服ではなく防御力の高い服になるのだ。

 ケニーの特殊な糸を織り込んで作るからね。

 強度は、ケニーが作りながら調節できるのだ。

 着やすさを重視して、それほど強度を上げない仕様にしても、普通の軽鎧と同等以上の防御性能はあるはずだ。

 したがって、ハナシルリちゃんが来ているのは、軽鎧と同等以上の防御性能を持つ『ゴスロリ』衣装ということになる。


 デザインは、もちろんハナシルリちゃんだ。

 黒いゴシック調のドレスがベースで、首回りや腰回り、スカートの下の部分に白いフリルがついている。

 この世界の人は、『ゴスロリ』ファッションというものを知らないから、普通に可愛いドレスだと思うだろう。



 ハナシルリちゃんとニアは、仲良しになっていて二人で勝手に盛り上がっている。

 わざわざ俺を訪ねてきて、用が済んだからといって、俺を置き去りにして勝手に盛り上がるのはやめてほしいんですけど……。


 二人は、『フェアリー商会』のファッションブランド『フェアクオ』で売り出そうという話までしている。

 メイド風喫茶『フェアリーキッス』で注目を集めているメイド服まで、販売するつもりのようだ。

 ハナシルリちゃんは、ビャクライン家のメイドたちを、すぐにでも可愛くしてあげたいと力が入っている。

 まぁその気持ちは分からなくはないけどね。

 ちなみに俺の屋敷のメイドたちというか『おもてなし特別チーム』のメイドたちと、『使用人育成学校』で勉強中の子たちには、当然メイド服を着せてあげている。

 みんな大喜びで、「可愛い服を着て仕事ができるだけで幸せ」と言っていた子もいた。


『ゴスロリドレス』も『メイド服』も可愛いから、売れるとは思う……。

 てか、大ヒットするかもしれないけど……くれぐれも『フェアクオ』がコスプレブランドにならないことを祈りたい……トホホ。




 

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