560.観客の心を、鷲掴み。
次に、ユーフェミア公爵が非公式に組織した大会限定の特別騎士団『
騎士団長は、もちろんユーフェミア公爵である。
観客席から割れんばかりの大歓声が巻き起こる。
やはりユーフェミア公爵の人気もすごい!
領主だからというのもあるだろうが、皆心からの歓声というか……大好きオーラが出ている感じがする。
領民からすごく愛されてるようで、俺も嬉しい。
次に騎士団のメンバーが紹介される。
最初は、セイバーン家三姉妹、シャリアさん、ユリアさん、ミリアさんだ。
紹介と同時に、また大歓声が沸き上がる。
特に若い観客が熱狂している。
まるでアイドルグループのファンのようだ。
シャリアさんが二十一歳、ユリアさんが十八歳、ミリアさんが十五歳だから、十分アイドル三姉妹としてもいける!
ここで、一緒に観戦していたビャクライン公爵夫人のアナレオナさんが教えてくれた。
ユーフェミア公爵とともに、令嬢三姉妹は絶大なる人気を誇っていて、彼女たちの肖像画まで販売されているらしい。
特に『精密画』と呼ばれるリアルな描写の絵は、人気があるのだそうだ。
手の平くらいの大きさの絵でも、五千ゴルから一万ゴルするらしい。
アイドルのブロマイド写真とかトレーディングカードみたいな感じなんだろうか……。
それにしても……一枚五千ゴルから一万ゴルということは、五千円から一万円ということだから、かなり高いと思うが……。
もっとも、大量に印刷できる写真じゃなくて、一つ一つ手書きの絵だからな……。
そういう意味では、逆に安いのかもしれないけど。
そんなに売れるのなら……『フェアリー商会』で売り出そうかな……。
『
そして何パターンか作って……レアなやつも作って……やばい俺がコンプリートしたい!
久々にコレクター魂に火がついてしまった……まだ作ってもいないのに……。
てか……今市場に出回っている『精密画』……集めたいなぁ……。
大人買いしたい!
でも冷静に考えると……
いや、コレクター魂の“大人買い”は、“大人気無い”に優先するのだ!
“大人買い”は“大人気無い”よりも強い存在なのだ! ……我ながら、なんのこっちゃ……トホホ。
それにしても、絵画系のスキルがあればなぁ……自分で作るのに……。
俺の数多くの仲間たちは、ほとんどのものが人型でないから、こういう系統のスキルは持ってないんだよね。
『フェアリー商会』の数多いスタッフの中に、絵画系のスキルを持った人がいないかなぁ……。
もしいたら、その人に作ってもらうんだけど。
というか……そもそもこの世界には『写真』とか『動画』というようなスキルは無いんだろうか……ハナシルリちゃんじゃないけど、ほんとにスマホが欲しいんですけど。
スマホとかプリンターみたいな魔法道具ないかなぁ……。
あぁダメだ……久々のコレクター魂がどんどん暴走している。
自分の欲望を叶えるためだけに、『フェアリー商会』で『精密画』製造部門を作ろうと、一瞬考えてしまった。
作っちゃ駄目だよね……そうだよね……今度こそ作らないぞ!
そう自分に言い聞かせだが……でも冷静に考えると……ありかもしれないと思えてきた。
今後歌劇団を立ち上げるし、ファンになったら……ファン心理としてグッズとか欲しいだろうし……。
そういうファングッズの一つとして、『精密画』があった方がいいよね。
今後、この『コロシアム村』で立ち上げる格闘技興行でも、ファンができて……『プ女子』みたいな熱狂的なファンができたら……選手の『精密画』が欲しいよね、きっと!
ちなみに『プ女子』は、プロレス大好き女子のことだ。
いや、むしろファンを作るために必要かもしれない。
格闘技大好き女子……『か女子』を育成するためにも、お気に入りの選手の『精密画』が買えるようにした方がいいな。
もちろん、女子だけでなく男性のファンも取り込めるはずだ。
華麗な技を決めている『精密画』があったら、男性ファンも欲しくなると思う。
それに格闘技興行は、女子の選手も登場するはずだから、アイドルレスラーみたいな存在ができるかもしれない。
うーん、やっぱり……『精密画』製造部門というかファングッズ製造部門が必要だな!
論理的に考えて……冷静な経営判断として必要なはずだ……決して俺の暴走ではないのだ……暴走してないったらないのだ!
ということで、熱狂的な選手紹介の中、新たな商売のアイデアを思いついてしまったわけだが……。
よく考えたら……勝手に絵を書いて売っちゃって大丈夫なんだろうか?
この世界には、肖像権というような発想はないようだが……。
それにしても、貴族の肖像画を勝手に描いて販売するなんて、逮捕される気がするけど。
アナレオナ夫人に訊いてみたところ、普通の肖像画なら問題にはしていないそうだ。
それにより、領民の支持が高まるなら良いという判断もあってのことらしい。
ただ絵の内容が不敬にあたるような場合は、当然取り締まられ罰せられるとのことだ。
馬鹿にしたようなものとか、いやらしいようなものはダメということだろう。
後で、『精密画』の製造について、みんなと相談してみよう。
そして、絵画系のスキルを持った人がいないか、探してもらおう!
次に紹介されたのは、第一王女のクリスティアさんと護衛官のエマさんだ。
紹介されると、会場に歓声というよりは、どよめきが走る。
初めて見る第一王女の姿に、衝撃を受けているようだ。
第一王女を直接目にする機会なんてないだろうし、なんといってもあの美貌だからね。
プラチナブロンドをなびかせ、手を振る姿は神々しくもある。
エマさんもセミロングの髪が、風に揺れながら輝いている。
黒と紫の中間の珍しい色の髪が、陽光を浴びて煌めいているのだ。
王国の近衛騎士団で『第三位』の格付けを持っていると紹介されると、大きな歓声が上がった。
クリスティアさんが二十三歳で、エマさんが二十二歳だが、こういう場に立つと、もっと年上にも見えるし、もっと年下にも見える……年齢不詳の神々しさがあるのだ。
本当に絵になる二人だ。
そしてやっぱり『精密画』が欲しいかも……。
次に、ヘルシング伯爵領のエレナ伯爵と執政官のキャロラインさんが紹介された。
二人とも二十八歳だが、かなり若く見える。
『ヴァンパイアハンター』とも紹介されたので、これまた、どよめきが起きた。
この二人も絵になる二人で……男性観戦者の熱狂がすごい!
最後に、アンナ辺境伯が紹介された。
再び大歓声が沸き上がる。
アンナ辺境伯は、元々セイバーン公爵家の令嬢なので、領民も覚えているし、アナウンスでも当然そういう紹介がされたのだ。
四方に向かって手を振って応えているが、いつまでも歓声が止まない。
「やっぱりアンナはすごいわね。他領に嫁いでだいぶ経つのに、まだこんなに人気があるなんて……」
アナレオナ夫人が隣で呟いた。
本当に凄い人気だ。
全員の紹介が終わっても、会場からの歓声が止まない。
この女性だけの騎士団『
セイバーン公爵領を背負って立つ『セイリュウ騎士団』を上回る大歓声だ。
もう戦う前から、観客の心を鷲掴みにしたようだ。
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