559.衝撃の、騎士団長。

 午後になって、いよいよ今大会の目玉企画である騎士団による模擬試合が始まろうとしている。


 セイバーン公爵軍が誇る精鋭部隊『セイリュウ騎士団』と、ユーフェミア公爵が非公式に組織した大会限定の特別騎士団『高貴なる騎士団ノブレスナイツ』の模擬戦である。


『セイリュウ騎士団』は、建国の頃から存在している伝統ある騎士団で、領民の心のよりどころともなっている存在のようだ。

 セイバーン公爵軍の中から選りすぐりの人材だけが、騎士として選ばれるらしい。


 会場アナウンスによって『セイリュウ騎士団』が改めて紹介されているが、割れんばかりの大歓声だ。


『セイリュウ騎士団』は、今日の午前中に『コロシアム村』に到着したようだ。

 直前まで任務に当たっていたらしい。


 そして、このアナウンスによって初めて知ったのだが……なんと『セイリュウ騎士団』の団長は女性だった。

 しかも……名前がマリナ=セイバーンという美熟女だった……。


 なんと、ユーフェミア公爵の義母だった……。


 ユーフェミア公爵たちは模擬戦に出場するのでここにはいないが、一緒に観戦しているビャクライン公爵夫人のアナレオナさんが教えてくれた。


 前セイバーン公爵であるユーフェミア公爵の亡くなったご主人の母親とのことである。

 それはすなわち……アンナ辺境伯の母親ということでもある。

 アンナ辺境伯は、ユーフェミア公爵の亡くなったご主人の妹で、セイバーン家の長女だったということだからね。

 マリナさんは、前々領主の夫人だった頃から、領民に慕われて大人気だったのだそうだ。


 息子である前セイバーン公爵が家督を継いだ後に、隠居して、一騎士として『セイリュウ騎士団』に入ったのだそうだ。

 マリナさんの武勇は良く知られていて、当然のことのように騎士団長に就任したらしい。

 騎士団は実力主義なので、実力さえあれば出自を問わずトップに立てることになっているようだが、逆にいうと前領主夫人でもトップに立てるということだったらしい……。

 マリナさんは槍術の名手で、年齢を重ねるごとに技の老練さが増し、勝てる騎士がいまだにいないとのことだ。

 話を聞いているだけで……滅茶苦茶強いじゃないか!

 まさか……ユーフェミア公爵より強くないよね?

 ユーフェミア公爵は、『固有スキル』を身につけたから、それを使えば負けることはないだろうけどね。

樹人鎧トレントアーマー』による強化は、凄かったからね。

 今でも、あの綺麗可愛い美熟女戦士の姿が、目に焼き付いている……。


 特殊なスキルなしの純粋な武術勝負なら、義母にかなわない可能性もあるのかもしれない。

 もうこれ以上女傑は出ないと思っていたのに……女傑のおかわり状態なんですけど……。

 この国は一体どうなっているんだろう……というか男の影が薄すぎる……トホホ。


 マリナさんは、領民からの人気が本当に凄い。

 紹介のアナウンスで、大歓声が湧き上がっている。


 それにしても……アンナ辺境伯に似た感じの……かなりの美魔女だ。

 年齢はアナウンスされていないが、いくつなんだろう……。


 アンナ辺境伯が三十五歳で、ユーフェミア公爵は四十四歳だったはずだ。

 アンナ辺境伯のお兄さんで亡くなったユーフェミア公爵のご主人が、公爵と同じ位の年齢だとすると……計算上は、やっぱり六十歳を超えてると思うんだが……。

  四十代後半位にしか見えない。

 ユーフェミア公爵も、四十四歳にはとても見えない美貌だし……。

 もしかしたら、アンナ辺境伯、ユーフェミア公爵、マリナ騎士団長、三人並ぶと……姉妹で通用するんじゃないだろうか……。

 そのぐらい若く、綺麗なのだ。

 なんか……武勇といい美貌といい……いろんな意味で恐ろしい。

 そして性格を知るのが……何となく怖い。


 女性の年齢を尋ねるのは失礼と思いつつ、どうしても気になったので、アナレオナ夫人にマリナさんの年齢を尋ねてみた。


 それによると……年齢は、六十三歳ということだった。

 やはり還暦を過ぎていたか……。

 恐るべし美熟女……上には上がいた。

 いや、忘れていたが、もっと上がいた!

『光柱の巫女』のサーシャさんがいた!

 八十六歳の高齢の巫女なのに、六十歳くらいにしか見えない。

 その上、美魔女といっていい美貌。

 それでいて優しいおばあちゃんのような雰囲気があるという規格外の美熟女がいたのだった。

 いったい……この世界って……どうなってるんだろう……美熟女天国なのか……?

 まぁそんなことはどうでもいいが……。


 マリナ騎士団長は、銀色をベースに所々に金色をあしらった豪奢な全身鎧を身にまとい、青色のロングヘアを風になびかせている。

 観衆に手を振っているが……実に絵になるし、いい女オーラ全開だ。

 アンナ辺境伯は薄い青色の髪だが、母親のマリナさんは濃い青色の髪をしている。



 続いて『セイリュウ騎士団』の騎士たちが紹介されている。


 『セイリュウ騎士団』を含め通常、騎士団員には序列というか格付けあって、第一位が一番強いということになっているようだ。

 ちなみに第一王女のクリスティアさんの護衛官のエマさんは、王族を守る近衛騎士団で第三位の格付けを持っているとのことだった。

 つまり近衛騎士団で、三番目に強いということになるのだ。

 格付け第一位の者が騎士団長になる場合もあれば、別の者が騎士団長になる場合もあるらしい。

『セイリュウ騎士団』は、現在は格付け第一位と騎士団長は別らしい。

 さっきの話からすると、マリナ騎士団長は、格付け第一位の騎士よりも強いということなのだろう。

 なんとなく……第一位の騎士が不憫だが……。


 『セイリュウ騎士団』第一位から第七位までの騎士が紹介された。


 第一位の騎士は、槍を使う槍士。

 第二位の騎士は、剣を使う剣士。

 第三位の騎士は、長手斧を使う斧士。

 第四位の騎士は、戦斧を使う斧士。

 第五位の騎士は、槍士。

 第六位の騎士は、剣士。

 第七位の騎士は、弓を使う弓士。


 という構成になっていた。


 模擬戦に出るのは、この七人の騎士に騎士団長を加えた八人らしい。


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